短編 思いつきの書き散らし

小目出鯛太郎

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出会いはいつも突然に

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これがバイトテロか!?

 俺は何も見なかったことにしようと業務用冷凍庫の扉を閉めようとした。
 その時冷凍庫から這い出ようする男と目が合ってしまった。

 澄んだブルーの瞳は困りきっていた。

 そしてその男はだっさいチェーン店の制服でもエプロン姿でもなく映画から抜け出したような鎧にマント姿だった。


 boy meets girlに憧れはするが、それは可愛い少女が空から降ってくるアレであって、黒髪を振り乱して井戸やテレビから這いずってくるやつじゃない。
 ましてや、冷凍庫から這い出ようとするおっさんに俺は会いたかったわけではない。

 やめろ!

 そんな虹彩に星がきらめくようなキトンブルーの瞳で俺を見るな!! 


 しかしこれが逆の立場だったら、見知らぬ異国の地で寒さに震えて助けを求めた相手に冷たく無視されたら俺なら泣いてしまうだろう。
 仕方ない。

「Good evening, are you okay?」
「すまない、何か食わせてくれ」

 ぐっじょぶ日本語。ナイスマジカル。
 せっかく英語で話しかけたのに日本語で返してきやがった。


 奴の名はスペンサー。
 聞けばもう3日も雪の森の中を彷徨って何も食べていないらしい。

 俺は寛大に、ほっかほかの豚丼メガ盛りを喰わせてやった。温かい茶も淹れてやる。
 
 もちろんそれは俺のバイト代金から引かれるのだが、一日一善、いつか良い行いは俺に返って来るはずだ。


 横開きのガラス扉がスライドしてチャイムが鳴った。フルフェイスのヘルメットの男が立っている。

「か、金を出せ!!」

 えー。
 なんで宣言解除後すぐに強盗とかしちゃうわけ?それもこんな裏寂れた場所のお金の無さそうなチェーンの食堂に。



 冗談ではない様子でヘルメット男は手に包丁を持っていた。やばい。刺されたら店は傷病手当と休業補償出してくれるかな、俺の差し迫った懐具合も頭もやばい。


「この狼藉者め!!」
 
 スペンサーが重い鎧など全く感じさせない動きでひらりとカウンターを飛び越えヘルメット男の手から包丁を蹴り落とし、目にも留まらぬ速さで片腕で男の首を締め上げた。


 そして二人の身体は眩く輝いた。



「おーい兄ちゃん、まだやってるかい?」
 何もなかったように常連の酔ったおじさんが入ってくる。
「牛丼並盛ひとつねー」
「はーい」


 さっきのあれは全て疲れが見せる白昼夢だったのかもしれない。


「兄ちゃん、だめだよー。こんな所に包丁転がってるよぉ~」


 おじさんはへらへら笑いながら、カウンターに包丁を置いた。



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