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五章「絵空の花でも闇を染める」
02
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「……ディラン先生、私ね」
秒針の音をたっぷり二周ぶんは聞いた頃。ようやくジェッタが口を開いた。
「ヒト似獣人なんて種族だけど、ヒトってどういう生き物なのかよく知らなかったんだ。むかし賢くて偉かった生き物なんだってって、パパとママに教わったくらい。ホームスクールのテキストとかにも別に出てこないし」
「そうだろうね」
ぽつぽつと溢されるジェッタの言葉にディランは頷き、短く相槌を入れるだけに留める。
現代に生きる獣人の多くが似たようなものだろう。ヒトとはかつての頂点生物で、今は知恵も力も社会権も失った絶滅危惧種の希少生物。たまにニュースでその不正売買などが取り上げられるくらいで、「よく知らないが名前だけは知っている珍しい生き物」の枠を出ない。
ヒトに限りなく近い容姿のヒト似獣人であってもそれは例外ではない。本物のヒトと関わる機会などたいてい一生ないのだから、せいぜいが図鑑やテレビで見て本当に自分たちと似ているなと思う程度で終わる。
だが、実際に関わった者は話が別だ。
「……でも、アダムと会ってずっと一緒にいても……分かんないね」
一口ココアを啜って、ジェッタは眉を下げて笑う。
「紙なんかで切り傷できちゃうくらい弱っちいし、牙もないし爪もペラペラだし力も弱いけどそれだけじゃん。笑うし優しいし、一緒にいたら楽しいし嬉しいし。私たちと何も違わないよ。何が違うのか分かんないよ」
「……うん」
彼女の言うことが、ディランにはよく分かる。
獣人全員が必ずそう思うわけではない。【楽園】のスタッフたちはみな「違う」と割り切っていたのだから。だが自分たちのような気質の獣人は、関われば関わるほどヒトと獣人の境目が分からなくなるのだ。
姿が違う。体質が、力が、立場が違う。違うところを挙げていけばキリがないはずなのに。共に泣き笑い、気持ちを共有し、交流することができる——それだけでもう、違うなどとは思えなくなる。
それがどれだけお花畑で甘ちゃんな思考と嘲笑されても、思ってしまったことは変えられない。だが。
「でも、アダムは……違うから一緒にいられないって思ってるんだよね」
唇を噛むジェッタも、そしてディラン自身も、そんな自分たちの傲慢さに気付いていないわけではない。
違わないなど、自分たちが「持っている」側だからこそ言えるのだ。持たざる者であるヒトからすれば偉そうに何をと唾を吐きたくなるに違いない。
秘匿されている医薬品の開発元がヒトである以上、永遠に搾取する側とされる側だ。第一ヒトに対し「研究目的以外で言葉を教えること、飼育すること」、それだけで獣人は罪に問われる。そうされたヒトは殺処分対象となる。一緒にいてもいいことなんて何一つない——アダムがジェッタを託して離れていこうとしているのは、そういう理由だ。
今後の話を切り出された時から、ジェッタはアダムが自分から離れようとしていると気付いていたのだろう。
それが自分を気遣ってのことだと理解もしている。しかしアダムを唯一として懐いているまだ十歳の彼女に、納得しろというのはあまりに酷だ。
「やだ。やだよ。私、アダムとずっと一緒にいたいよ。アダムが何に苦しんでるのか、話してくれないし分からないけど、離れちゃったらもう……二度と会えない気がするもん」
マグカップを握りしめる両手が小刻みに震えている。俯いてしまったジェッタの顔は見えないが、ココアの表面に雫が落ちて波紋が広がった。
余計な言葉を挟む必要はない。ディランはただ頷いて、ジェッタが気持ちを吐き出すのを促した。
「アダムと会えなくなるくらいなら、安心できるおうちなんていらなかった。一緒ならどこでもよかったの。でも、でも、私のことより……アダムがひとりぼっちで寂しくなくて、苦しくないのが一番いい」
「うん」
「私たち獣人と一緒だとアダムは苦しいの? ……けど、それならなんでアダムは私を助けてくれたの。私のことはアダムが守ってくれたのに、アダムは誰に助けてもらって、守ってもらったらいいの?」
涙に濡れた大きな瞳が、まっすぐディランを射抜く。
どれだけ痛みを感じてもこの目から逃げてはいけない。いくら情けない我が身でも、そんなことが分からないほど馬鹿ではない。
「私にはまだできない。だから、ねえ、ディラン先生」
マグカップをローテーブルに置き、立ち上がって歩み寄ってくるジェッタ。そのままゆっくりディランの前までやってくる。その立ち姿は座ったままのディランよりも小さく、涙で赤くなった目尻や鼻先は痛々しい。
けれど弱くは見えなかった。自分などよりこの子はずっと強い。
「アダムと昔、何があったかは知らないよ」
指先を握りしめてくる小さな手とその顔を交互に見ると、ジェッタは「何か、はあったでしょ?」と悪戯っ子の顔で笑った。
「たぶんまだ、私には分かんない。だから訊かない。……ディラン先生、ねえ。私、いい子?」
「え?」
唐突な質問の直前、ジェッタはチラリと壁掛けカレンダーのほうへ目を向けていた。
ワンテンポ遅れて——ああ、と心の中で飲み込む。
今日の日付は十二月二十三日。間もなく日付が変わり、二十四日となる。
「いい子だよ」
理解したからこそ、しっかりと目を見て頷いた。そうでなくともジェッタはいい子に違いないが、いま彼女が求めているのは「そういうこと」だ。
涙のあとをゴシゴシと擦り、ジェッタは満足そうに唇を吊り上げる。
「じゃあ、クリスマスにはプレゼントもらえるよね!」
「きっとね」
「私が欲しいもの、サンタさんには分かるかな」
「……きっと」
胸も言葉も詰まりそうだ。けれど、それでもディランは声に出して頷いた。
彼女が何を一番としているのか、何をいま願っているのか、聞いたばかりだ。分からないなど惚けたことが言えようものか。大きく息を吸って、目を閉じた。
——守らせて欲しいなんて、そんな権利などない。安易に口にすることさえ許されない。
今だって変わらずそう思っている。仮にアダムに伝えたところで怒らせ、更に失望されるだけではないかと怯えてもいる。
けれど、いつまでも逃げ続けてはいられない。
まだ自分の半分も生きていない幼い少女が先に覚悟を決め、退路を絶ってくれたのだ。変われない、どこにも行けないなど嘆くばかりでいていいものか。
「ジェッタ」
ゆっくりと目を開き、呼びかける。未だディランの指を掴んだまま、ジェッタはキョトンと瞬きを繰り返した。
「なに?」
「この前、アダムには一度話したんだけどね。……養子縁組って分かる?」
ジェッタの小さな手に、もう片方の自分の手を重ねた。
ようし、と微かに口の中で繰り返すジェッタ。
「知っ……てる。本当のパパやママじゃない誰かと家族になるってこと……だよね。あってる?」
「だいたいね」
「……それが、なに?」
訊ね返してはきたものの、ジェッタ自身は何となくディランの言わんとしている意味を察しているように見えた。
肉親を失い天涯孤独の身になっている彼女に、養子の話題を出した時点で気付かれようというもの。それでもこれはジェッタの今後に大きく関わることだ。きちんと説明しておかなくてはならないだろう。
「アダムは君が元通り、普通の獣人としての暮らしを送ることを望んでいる。それは僕も同じだよ。だから……君を社会に戻すための手段として、養子縁組を結べればいいと思っている。たくさん嘘を吐かないといけなくなるけど」
「……私、ディラン先生んちの子になるってこと?」
「形だけね。義理だとしても君の親を名乗ろうだなんて、そんな本当のご両親に失礼なことはもちろん——」
言わない、と続けようとした言葉はジェッタが首を振ってくれたことで発せられなかった。何も失礼なことなどないと、ジェッタは思ってくれている。
「……ありがとう」
「そうなってもさすがにパパなんて呼ばないけどな!」
「それはむしろ、なんか助かる……」
冗談めかしたジェッタの軽口に笑い返して、妙に救われた気分になった。
真面目な話をしている最中だがこうして空気を明るく軽くしてくれようとする、ジェッタはそんな気遣いができる優しい子だ。
その優しさは生来のものであり、アダムに救われて守られたものでもあるだろう。眩しさを覚えて目を細め、ディランは「でもね」と続けた。
「君を社会に戻すだけなら、わざわざ養子縁組なんてしなくても警察に行けば何とかなる。ただ、そうなると……」
「私、アダムと会えなくなるんでしょ」
なんとなく分かるよ、とジェッタは首を竦める。
「ディラン先生、私がアダムと離れなくていい方法を考えてくれたから養子って言い出したんだろ? じゃあ、そうじゃない方法なんてアダムと離れ離れになっちゃうに決まってるじゃん。そんなのやだよ」
「……それは……そう、なんだけど。でも、ジェッタ。君はいいのか?」
「私はアダムと一緒にいたい。アダムがひとりぼっちにならないならいいの。……それに、さ」
重ねていた手をギュッと握り返された。
思わずそちらへ視線を落とし、またジェッタの顔へと戻すと彼女はどこか揶揄うような笑みで。
「ディラン先生もアダムと一緒にいたいでしょ?」
「な——」
「アダムだって本当はそうだよ。きっと」
——何も、言えなくなった。
そんなはずはない。アダムはこちらを許せずにいるはずで、ここに来たのもジェッタを守る目的のためで、だから必要がなくなれば出ていくのであって。
もう逃げてはならないとさっき腹を決めたばかりなのに、やはり咄嗟にそう思ってしまった。情けなさは折り紙つきだ。歯噛みして、首を振る。ジェッタの言葉を否定するためではなく、自身の逃げ癖を諌めるために。
秒針の音をたっぷり二周ぶんは聞いた頃。ようやくジェッタが口を開いた。
「ヒト似獣人なんて種族だけど、ヒトってどういう生き物なのかよく知らなかったんだ。むかし賢くて偉かった生き物なんだってって、パパとママに教わったくらい。ホームスクールのテキストとかにも別に出てこないし」
「そうだろうね」
ぽつぽつと溢されるジェッタの言葉にディランは頷き、短く相槌を入れるだけに留める。
現代に生きる獣人の多くが似たようなものだろう。ヒトとはかつての頂点生物で、今は知恵も力も社会権も失った絶滅危惧種の希少生物。たまにニュースでその不正売買などが取り上げられるくらいで、「よく知らないが名前だけは知っている珍しい生き物」の枠を出ない。
ヒトに限りなく近い容姿のヒト似獣人であってもそれは例外ではない。本物のヒトと関わる機会などたいてい一生ないのだから、せいぜいが図鑑やテレビで見て本当に自分たちと似ているなと思う程度で終わる。
だが、実際に関わった者は話が別だ。
「……でも、アダムと会ってずっと一緒にいても……分かんないね」
一口ココアを啜って、ジェッタは眉を下げて笑う。
「紙なんかで切り傷できちゃうくらい弱っちいし、牙もないし爪もペラペラだし力も弱いけどそれだけじゃん。笑うし優しいし、一緒にいたら楽しいし嬉しいし。私たちと何も違わないよ。何が違うのか分かんないよ」
「……うん」
彼女の言うことが、ディランにはよく分かる。
獣人全員が必ずそう思うわけではない。【楽園】のスタッフたちはみな「違う」と割り切っていたのだから。だが自分たちのような気質の獣人は、関われば関わるほどヒトと獣人の境目が分からなくなるのだ。
姿が違う。体質が、力が、立場が違う。違うところを挙げていけばキリがないはずなのに。共に泣き笑い、気持ちを共有し、交流することができる——それだけでもう、違うなどとは思えなくなる。
それがどれだけお花畑で甘ちゃんな思考と嘲笑されても、思ってしまったことは変えられない。だが。
「でも、アダムは……違うから一緒にいられないって思ってるんだよね」
唇を噛むジェッタも、そしてディラン自身も、そんな自分たちの傲慢さに気付いていないわけではない。
違わないなど、自分たちが「持っている」側だからこそ言えるのだ。持たざる者であるヒトからすれば偉そうに何をと唾を吐きたくなるに違いない。
秘匿されている医薬品の開発元がヒトである以上、永遠に搾取する側とされる側だ。第一ヒトに対し「研究目的以外で言葉を教えること、飼育すること」、それだけで獣人は罪に問われる。そうされたヒトは殺処分対象となる。一緒にいてもいいことなんて何一つない——アダムがジェッタを託して離れていこうとしているのは、そういう理由だ。
今後の話を切り出された時から、ジェッタはアダムが自分から離れようとしていると気付いていたのだろう。
それが自分を気遣ってのことだと理解もしている。しかしアダムを唯一として懐いているまだ十歳の彼女に、納得しろというのはあまりに酷だ。
「やだ。やだよ。私、アダムとずっと一緒にいたいよ。アダムが何に苦しんでるのか、話してくれないし分からないけど、離れちゃったらもう……二度と会えない気がするもん」
マグカップを握りしめる両手が小刻みに震えている。俯いてしまったジェッタの顔は見えないが、ココアの表面に雫が落ちて波紋が広がった。
余計な言葉を挟む必要はない。ディランはただ頷いて、ジェッタが気持ちを吐き出すのを促した。
「アダムと会えなくなるくらいなら、安心できるおうちなんていらなかった。一緒ならどこでもよかったの。でも、でも、私のことより……アダムがひとりぼっちで寂しくなくて、苦しくないのが一番いい」
「うん」
「私たち獣人と一緒だとアダムは苦しいの? ……けど、それならなんでアダムは私を助けてくれたの。私のことはアダムが守ってくれたのに、アダムは誰に助けてもらって、守ってもらったらいいの?」
涙に濡れた大きな瞳が、まっすぐディランを射抜く。
どれだけ痛みを感じてもこの目から逃げてはいけない。いくら情けない我が身でも、そんなことが分からないほど馬鹿ではない。
「私にはまだできない。だから、ねえ、ディラン先生」
マグカップをローテーブルに置き、立ち上がって歩み寄ってくるジェッタ。そのままゆっくりディランの前までやってくる。その立ち姿は座ったままのディランよりも小さく、涙で赤くなった目尻や鼻先は痛々しい。
けれど弱くは見えなかった。自分などよりこの子はずっと強い。
「アダムと昔、何があったかは知らないよ」
指先を握りしめてくる小さな手とその顔を交互に見ると、ジェッタは「何か、はあったでしょ?」と悪戯っ子の顔で笑った。
「たぶんまだ、私には分かんない。だから訊かない。……ディラン先生、ねえ。私、いい子?」
「え?」
唐突な質問の直前、ジェッタはチラリと壁掛けカレンダーのほうへ目を向けていた。
ワンテンポ遅れて——ああ、と心の中で飲み込む。
今日の日付は十二月二十三日。間もなく日付が変わり、二十四日となる。
「いい子だよ」
理解したからこそ、しっかりと目を見て頷いた。そうでなくともジェッタはいい子に違いないが、いま彼女が求めているのは「そういうこと」だ。
涙のあとをゴシゴシと擦り、ジェッタは満足そうに唇を吊り上げる。
「じゃあ、クリスマスにはプレゼントもらえるよね!」
「きっとね」
「私が欲しいもの、サンタさんには分かるかな」
「……きっと」
胸も言葉も詰まりそうだ。けれど、それでもディランは声に出して頷いた。
彼女が何を一番としているのか、何をいま願っているのか、聞いたばかりだ。分からないなど惚けたことが言えようものか。大きく息を吸って、目を閉じた。
——守らせて欲しいなんて、そんな権利などない。安易に口にすることさえ許されない。
今だって変わらずそう思っている。仮にアダムに伝えたところで怒らせ、更に失望されるだけではないかと怯えてもいる。
けれど、いつまでも逃げ続けてはいられない。
まだ自分の半分も生きていない幼い少女が先に覚悟を決め、退路を絶ってくれたのだ。変われない、どこにも行けないなど嘆くばかりでいていいものか。
「ジェッタ」
ゆっくりと目を開き、呼びかける。未だディランの指を掴んだまま、ジェッタはキョトンと瞬きを繰り返した。
「なに?」
「この前、アダムには一度話したんだけどね。……養子縁組って分かる?」
ジェッタの小さな手に、もう片方の自分の手を重ねた。
ようし、と微かに口の中で繰り返すジェッタ。
「知っ……てる。本当のパパやママじゃない誰かと家族になるってこと……だよね。あってる?」
「だいたいね」
「……それが、なに?」
訊ね返してはきたものの、ジェッタ自身は何となくディランの言わんとしている意味を察しているように見えた。
肉親を失い天涯孤独の身になっている彼女に、養子の話題を出した時点で気付かれようというもの。それでもこれはジェッタの今後に大きく関わることだ。きちんと説明しておかなくてはならないだろう。
「アダムは君が元通り、普通の獣人としての暮らしを送ることを望んでいる。それは僕も同じだよ。だから……君を社会に戻すための手段として、養子縁組を結べればいいと思っている。たくさん嘘を吐かないといけなくなるけど」
「……私、ディラン先生んちの子になるってこと?」
「形だけね。義理だとしても君の親を名乗ろうだなんて、そんな本当のご両親に失礼なことはもちろん——」
言わない、と続けようとした言葉はジェッタが首を振ってくれたことで発せられなかった。何も失礼なことなどないと、ジェッタは思ってくれている。
「……ありがとう」
「そうなってもさすがにパパなんて呼ばないけどな!」
「それはむしろ、なんか助かる……」
冗談めかしたジェッタの軽口に笑い返して、妙に救われた気分になった。
真面目な話をしている最中だがこうして空気を明るく軽くしてくれようとする、ジェッタはそんな気遣いができる優しい子だ。
その優しさは生来のものであり、アダムに救われて守られたものでもあるだろう。眩しさを覚えて目を細め、ディランは「でもね」と続けた。
「君を社会に戻すだけなら、わざわざ養子縁組なんてしなくても警察に行けば何とかなる。ただ、そうなると……」
「私、アダムと会えなくなるんでしょ」
なんとなく分かるよ、とジェッタは首を竦める。
「ディラン先生、私がアダムと離れなくていい方法を考えてくれたから養子って言い出したんだろ? じゃあ、そうじゃない方法なんてアダムと離れ離れになっちゃうに決まってるじゃん。そんなのやだよ」
「……それは……そう、なんだけど。でも、ジェッタ。君はいいのか?」
「私はアダムと一緒にいたい。アダムがひとりぼっちにならないならいいの。……それに、さ」
重ねていた手をギュッと握り返された。
思わずそちらへ視線を落とし、またジェッタの顔へと戻すと彼女はどこか揶揄うような笑みで。
「ディラン先生もアダムと一緒にいたいでしょ?」
「な——」
「アダムだって本当はそうだよ。きっと」
——何も、言えなくなった。
そんなはずはない。アダムはこちらを許せずにいるはずで、ここに来たのもジェッタを守る目的のためで、だから必要がなくなれば出ていくのであって。
もう逃げてはならないとさっき腹を決めたばかりなのに、やはり咄嗟にそう思ってしまった。情けなさは折り紙つきだ。歯噛みして、首を振る。ジェッタの言葉を否定するためではなく、自身の逃げ癖を諌めるために。
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