黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

さんが

文字の大きさ
2 / 53

第2話 黒子天使の仕事

しおりを挟む
 天使には2種類ある。

 頭に白く輝く輪っかのあるハロ持ちの天使と、黒い輪っかのある裏方の黒子天使。

 ハロ持ちの天使は、地上の人々に神の天啓を伝える。また、勇者となる者を見極め加護を与えると、ダンジョンの奥へと誘う。そして、ダンジョンの中で待ち受けるのが裏方となる黒子天使。



「マリク、あのチビッ子が勇者だ。まぐれ当たりでも死なせるなよ」

「あい、分かってやすよ。ミショウの旦那にも連絡済っすから安心して下さい」

「それが心配なんだよ。ミショウのため息程度のブレスだって全滅させる可能性があるんだからな。そうなれば、また一からやり直しだぞ」

 正面のモニターに映し出されている6人パーティーの冒険者。戦斧を担いだリザードマンの戦士に、二刀流のヴァンパイアの剣士、ケモミミのある狩人、エルフの魔法使い、桃色髪の聖女。そして、最後の1人がヒト族の勇者。
 熾天使であり第6ダンジョンのダンジョンマスターのフジーコに、勇者として認められて加護を与えられたヒト族の少年ターム。

 対峙しているのは、このダンジョンでも最強種の一角を担う地竜のミショウ。ダンジョンに潜り、初めて出会う竜種でもあり、最初に立ちはだかる大きな壁ともなる存在。

 勇者パーティーは壊滅状態に近く、完全に追い込まれている。全ての攻撃や魔法は、地竜の鱗に掠り傷を付けることも出来ずに弾き返され、逆に地竜の腐食のブレスで勇者達の装備はボロボロになっている。

「でも、まぐれ当たりなら許される気がするっすよ。リア充爆ぜろっすね」

 マリクがそう言う理由は、少年以外のパーティーメンバー全てが女のハーレムパーティーであること。これも熾天使フジーコによって仕組まれたものであるが、マリクにとってはリア充勇者にしか見えていない。
 地竜ミショウのブレスによって、仲間達の大きく露出してしまった肌と苦しみ悶える声。それが、少年勇者の心を奮い立たせている。

「そんな、羨ましくなる程でもないだろが」

「そりゃ、先輩が特殊っすよ。幼馴染みがブランシュさんなら、何を見ても魅力は感じないでしょうね」

『レヴィン副司令官。勇者タームが、ペルセウス流星剣の予備動作に入りました』

 ここで俺達の話を遮るように、現地の黒子天使から報告が入る。

「アホな話はお仕舞いだ。そろそろ詠唱が始まるぞ」

 唯一無事で残っている勇者タームの持つ白く光る剣。それは熾天使フジーコが与えた聖剣ペルセウス。そして予想通り、少年タームが聖剣を天に翳して詠唱を始める。
 必殺の一撃を放つには、予備動作と詠唱が必要となる。それは、黒子天使達への合図でもあり、スタンバイする為の時間稼ぎでもある。

「ここで死なせたら、今月の休みは無くなると思え」

「そりゃ、無いっすよ」

 少年勇者の持つ聖剣ペルセウスは、ただの光る剣でしかない。聖剣と言われる秘密は、それに合わせて黒子天使達がフル稼働で動くからである。

「タームの肉体改造率は、どれくらい進んでいる」

「現在35%すっね」

「タームの肉体が、カシューのペルセウス流星剣に耐え得る可能性は?」

「現状48%。最大限に回復魔法を行使すれば85%まで上昇するっす」

「よし、回復魔法を最大限に発動後に、カシューの憑依を許可する」

 勇者タームの詠唱が終わると、傷だらけでボロボロだった体が回復し、体全体が白い光で包まれる。

「黒子天使カシューの憑依完了」

「出力80%までだ。全力で撃つなよ」

 そして、勇者タームがペルセウス流星剣を放つ。熾天使フジーコが与えた剣聖の加護。それは、黒子天使が憑依し、勝手に体を操るだけに過ぎない。だから、どんなに技能がない者でも構わないが、光速で放たれる無数の斬撃に、タームに筋肉は断裂し骨が砕ける。
 強制的に動かされる体であっても、光速の動きや衝撃に耐えれる訳がない。だから、勇者の体は黒子天使によって秘密裏に改造される。
 それだけじゃなく、改造された体には脳内麻薬が多量に分泌し、痛覚は麻痺する。その感覚は中毒症状を引き起こし、再び逆境を追い求めて、ダンジョンの最奥を目指す。

 勇者のボロボロとなる体。しかし、傷付けば傷付く程に、ダンジョンは生命力を吸収し、より大きく成長する。

 勇者の適正とは、生命力の強さ。それだけが唯一求められる資質であり、それ以外は必要としない。全てが黒子天使達によって操られるのだから……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...