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第20話 タームの通り名
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「ターム、どうした?お前さんが、こんなボロボロになるなんて。いったい何があったんだ」
ターム達の装備は、地竜ミショウの腐食のブレスで襤褸切れのようになり、傍から見れば勇者パーティーには見えない。
ただ、タームの持つ熾天使フジーコから与えられた聖剣ペルセウスの輝きだけは変わらず、勇者であることを証明している。
「おやっさん、これ見てくれよ」
聖剣ペルセウスを杖代わりにしながら、タームが取り出したのは地竜の鱗。
「おおっ、これは竜鱗ってやつかい?」
「凄いだろ。これで僕もドラゴンスレイヤーの仲間入りだ」
ここは第6ダンジョンの勇者タームが、常宿としている木漏れ日亭。食堂兼宿屋でもあり、1階には食堂と20部屋の客室があり、2回にも20部屋の客室がある。規模としては小さくはないが、決して大きくもない。
「明日、これをギルドに持ってけば、僕は晴れてドラゴンスレイヤーの仲間入りだ」
「流石は期待の勇者様だ。マグチはドラゴンスレイヤーになるのに20年にかかったのに、お前さんはたったの5年かよ。お前さんには期待してるぜ。ナカッシュ、早く支度をして差し上げろ」
「はい、ただ今」
奥から駆けてきたのは、この宿屋の看板娘ナカッシュ。
「ターム様、お怪我は?」
「心配ない。安心してくれ、服はボロボロだけど、体はピンピンしている」
タームがここを常宿としているのは、看板娘のタームを狙っているからでもある。宿屋の主人も看板娘のナカッシュを、タームにけしかけ互いに思惑は一致している。
ハーレムパーティーであって、そんな事が許されるのも、ひとえに勇者であるからこそ。勇者から受ける恩恵は大きく、誰かもが勇者に近づこうと必死になっている。
しかし、翌朝になると状況が一変する。
「ターム、起きろ。非常事態だ!」
宿屋の主人が、タームの部屋の扉を何度も激しく叩く。そして、中から出てきたのは、看板娘のナカッシュ。
「旦那様、何か御用ですか。ターム様はお休みなのですが?」
少しだけ見える奥のベッドにはターム以外にも、何人かの気配がするが、それには触れない。
「いいから早く起こしてくれ。第6ダンジョンと、第7ダンジョンがブラックアウトを起こしたんだ!」
勇者タームの加護は、熾天使フジーコから授かったもので、第6ダンジョンで能力を発揮する。もし、第6ダンジョンが崩壊したとなれば、勇者としての能力は大きく落ちてしまう。
「おやっさん、朝から騒がしいな。心配するなって、僕はただの勇者じゃない。ドラゴンスレイヤーなんだ」
勇者以外の称号を手にしたタームは、意気揚々と他のダンジョン攻略へと乗り出す。
間に合せの安物装備を買い揃え、小手調べに挑んだ第8ダンジョンは、10階層にも届かずに仲間割れを起こす。さらにダンジョンを変えても、結果は変わらない。
同じことを繰り返す度にパーティーメンバーが抜け、最後には聖女にも見限られると、1人ぼっちになってしまう。
「おやっさん、今日は先に飯にするよ」
「悪いが先にツケを払って貰わんと、食わせるもんも泊める部屋もない。これまで世話になったが、もうこれが限界だ」
「ちょっと、待って。もう少しで軌道に乗るんだ」
「悪いが、お前さんじゃ無理だ。諦めて、第13ダンジョンにでも行ってくるんだな」
「先輩、タームが毎日ダンジョンに現れてるみたいっすよけど、どうします?」
モニターには、第13ダンジョンの最弱の魔物である吸血虫と戦うタームの姿が映し出されている。正確には、聖剣ペルセウスの光に群がる蚊のような魔物。それを追い払おうとして、聖剣ペルセウスを振り回すタームの姿。
吸血虫は、蚊よりも少しだけ血を吸う量が多い程度の最弱の魔物。しっかりとした虫除けさえすれば、何の問題もない。
ダンジョンなだけに、魔物を置かなければならないが、魔力を大量に喰らう魔物も置けない。苦肉の策で用意したのが吸血虫。
「何しに来てるんだ?」
「あれっ、先輩が金を落とせって言ったじゃないっすか」
「そう言えば、そうだったかもな」
モニターに映るタームは、ドロップした鉄貨に飛び付いている。しかし1日ダンジョンにいて、辛うじて食事を取れる程度の稼ぎにしかならない。
「そういえぱ、タームの改造はどこまで終わっているんだ?」
「確か35%っすよ」
「よし、改造を終わらせるか。毎日来てるなら、それなりにダンジョンに生命力を落としてくれるだろ」
吸血蚊の僅かなダメージでも、ダンジョンに取っては極上のエネルギー。第13ダンジョンの隠れた初代勇者、小銭のタームが誕生する。
ターム達の装備は、地竜ミショウの腐食のブレスで襤褸切れのようになり、傍から見れば勇者パーティーには見えない。
ただ、タームの持つ熾天使フジーコから与えられた聖剣ペルセウスの輝きだけは変わらず、勇者であることを証明している。
「おやっさん、これ見てくれよ」
聖剣ペルセウスを杖代わりにしながら、タームが取り出したのは地竜の鱗。
「おおっ、これは竜鱗ってやつかい?」
「凄いだろ。これで僕もドラゴンスレイヤーの仲間入りだ」
ここは第6ダンジョンの勇者タームが、常宿としている木漏れ日亭。食堂兼宿屋でもあり、1階には食堂と20部屋の客室があり、2回にも20部屋の客室がある。規模としては小さくはないが、決して大きくもない。
「明日、これをギルドに持ってけば、僕は晴れてドラゴンスレイヤーの仲間入りだ」
「流石は期待の勇者様だ。マグチはドラゴンスレイヤーになるのに20年にかかったのに、お前さんはたったの5年かよ。お前さんには期待してるぜ。ナカッシュ、早く支度をして差し上げろ」
「はい、ただ今」
奥から駆けてきたのは、この宿屋の看板娘ナカッシュ。
「ターム様、お怪我は?」
「心配ない。安心してくれ、服はボロボロだけど、体はピンピンしている」
タームがここを常宿としているのは、看板娘のタームを狙っているからでもある。宿屋の主人も看板娘のナカッシュを、タームにけしかけ互いに思惑は一致している。
ハーレムパーティーであって、そんな事が許されるのも、ひとえに勇者であるからこそ。勇者から受ける恩恵は大きく、誰かもが勇者に近づこうと必死になっている。
しかし、翌朝になると状況が一変する。
「ターム、起きろ。非常事態だ!」
宿屋の主人が、タームの部屋の扉を何度も激しく叩く。そして、中から出てきたのは、看板娘のナカッシュ。
「旦那様、何か御用ですか。ターム様はお休みなのですが?」
少しだけ見える奥のベッドにはターム以外にも、何人かの気配がするが、それには触れない。
「いいから早く起こしてくれ。第6ダンジョンと、第7ダンジョンがブラックアウトを起こしたんだ!」
勇者タームの加護は、熾天使フジーコから授かったもので、第6ダンジョンで能力を発揮する。もし、第6ダンジョンが崩壊したとなれば、勇者としての能力は大きく落ちてしまう。
「おやっさん、朝から騒がしいな。心配するなって、僕はただの勇者じゃない。ドラゴンスレイヤーなんだ」
勇者以外の称号を手にしたタームは、意気揚々と他のダンジョン攻略へと乗り出す。
間に合せの安物装備を買い揃え、小手調べに挑んだ第8ダンジョンは、10階層にも届かずに仲間割れを起こす。さらにダンジョンを変えても、結果は変わらない。
同じことを繰り返す度にパーティーメンバーが抜け、最後には聖女にも見限られると、1人ぼっちになってしまう。
「おやっさん、今日は先に飯にするよ」
「悪いが先にツケを払って貰わんと、食わせるもんも泊める部屋もない。これまで世話になったが、もうこれが限界だ」
「ちょっと、待って。もう少しで軌道に乗るんだ」
「悪いが、お前さんじゃ無理だ。諦めて、第13ダンジョンにでも行ってくるんだな」
「先輩、タームが毎日ダンジョンに現れてるみたいっすよけど、どうします?」
モニターには、第13ダンジョンの最弱の魔物である吸血虫と戦うタームの姿が映し出されている。正確には、聖剣ペルセウスの光に群がる蚊のような魔物。それを追い払おうとして、聖剣ペルセウスを振り回すタームの姿。
吸血虫は、蚊よりも少しだけ血を吸う量が多い程度の最弱の魔物。しっかりとした虫除けさえすれば、何の問題もない。
ダンジョンなだけに、魔物を置かなければならないが、魔力を大量に喰らう魔物も置けない。苦肉の策で用意したのが吸血虫。
「何しに来てるんだ?」
「あれっ、先輩が金を落とせって言ったじゃないっすか」
「そう言えば、そうだったかもな」
モニターに映るタームは、ドロップした鉄貨に飛び付いている。しかし1日ダンジョンにいて、辛うじて食事を取れる程度の稼ぎにしかならない。
「そういえぱ、タームの改造はどこまで終わっているんだ?」
「確か35%っすよ」
「よし、改造を終わらせるか。毎日来てるなら、それなりにダンジョンに生命力を落としてくれるだろ」
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