黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

さんが

文字の大きさ
20 / 53

第20話 タームの通り名

しおりを挟む
「ターム、どうした?お前さんが、こんなボロボロになるなんて。いったい何があったんだ」

 ターム達の装備は、地竜ミショウの腐食のブレスで襤褸切れのようになり、傍から見れば勇者パーティーには見えない。
 ただ、タームの持つ熾天使フジーコから与えられた聖剣ペルセウスの輝きだけは変わらず、勇者であることを証明している。

「おやっさん、これ見てくれよ」

 聖剣ペルセウスを杖代わりにしながら、タームが取り出したのは地竜の鱗。

「おおっ、これは竜鱗ってやつかい?」

「凄いだろ。これで僕もドラゴンスレイヤーの仲間入りだ」


 ここは第6ダンジョンの勇者タームが、常宿としている木漏れ日亭。食堂兼宿屋でもあり、1階には食堂と20部屋の客室があり、2回にも20部屋の客室がある。規模としては小さくはないが、決して大きくもない。

「明日、これをギルドに持ってけば、僕は晴れてドラゴンスレイヤーの仲間入りだ」

「流石は期待の勇者様だ。マグチはドラゴンスレイヤーになるのに20年にかかったのに、お前さんはたったの5年かよ。お前さんには期待してるぜ。ナカッシュ、早く支度をして差し上げろ」

「はい、ただ今」

 奥から駆けてきたのは、この宿屋の看板娘ナカッシュ。

「ターム様、お怪我は?」

「心配ない。安心してくれ、服はボロボロだけど、体はピンピンしている」

 タームがここを常宿としているのは、看板娘のタームを狙っているからでもある。宿屋の主人も看板娘のナカッシュを、タームにけしかけ互いに思惑は一致している。
 ハーレムパーティーであって、そんな事が許されるのも、ひとえに勇者であるからこそ。勇者から受ける恩恵は大きく、誰かもが勇者に近づこうと必死になっている。


 しかし、翌朝になると状況が一変する。

「ターム、起きろ。非常事態だ!」

 宿屋の主人が、タームの部屋の扉を何度も激しく叩く。そして、中から出てきたのは、看板娘のナカッシュ。

「旦那様、何か御用ですか。ターム様はお休みなのですが?」

 少しだけ見える奥のベッドにはターム以外にも、何人かの気配がするが、それには触れない。

「いいから早く起こしてくれ。第6ダンジョンと、第7ダンジョンがブラックアウトを起こしたんだ!」

 勇者タームの加護は、熾天使フジーコから授かったもので、第6ダンジョンで能力を発揮する。もし、第6ダンジョンが崩壊したとなれば、勇者としての能力は大きく落ちてしまう。

「おやっさん、朝から騒がしいな。心配するなって、僕はただの勇者じゃない。ドラゴンスレイヤーなんだ」


 勇者以外の称号を手にしたタームは、意気揚々と他のダンジョン攻略へと乗り出す。
 間に合せの安物装備を買い揃え、小手調べに挑んだ第8ダンジョンは、10階層にも届かずに仲間割れを起こす。さらにダンジョンを変えても、結果は変わらない。
 同じことを繰り返す度にパーティーメンバーが抜け、最後には聖女にも見限られると、1人ぼっちになってしまう。

「おやっさん、今日は先に飯にするよ」

「悪いが先にツケを払って貰わんと、食わせるもんも泊める部屋もない。これまで世話になったが、もうこれが限界だ」

「ちょっと、待って。もう少しで軌道に乗るんだ」

「悪いが、お前さんじゃ無理だ。諦めて、第13ダンジョンにでも行ってくるんだな」



「先輩、タームが毎日ダンジョンに現れてるみたいっすよけど、どうします?」

 モニターには、第13ダンジョンの最弱の魔物である吸血虫と戦うタームの姿が映し出されている。正確には、聖剣ペルセウスの光に群がる蚊のような魔物。それを追い払おうとして、聖剣ペルセウスを振り回すタームの姿。

 吸血虫は、蚊よりも少しだけ血を吸う量が多い程度の最弱の魔物。しっかりとした虫除けさえすれば、何の問題もない。
 ダンジョンなだけに、魔物を置かなければならないが、魔力を大量に喰らう魔物も置けない。苦肉の策で用意したのが吸血虫。

「何しに来てるんだ?」

「あれっ、先輩が金を落とせって言ったじゃないっすか」

「そう言えば、そうだったかもな」

 モニターに映るタームは、ドロップした鉄貨に飛び付いている。しかし1日ダンジョンにいて、辛うじて食事を取れる程度の稼ぎにしかならない。

「そういえぱ、タームの改造はどこまで終わっているんだ?」

「確か35%っすよ」

「よし、改造を終わらせるか。毎日来てるなら、それなりにダンジョンに生命力を落としてくれるだろ」

 吸血蚊の僅かなダメージでも、ダンジョンに取っては極上のエネルギー。第13ダンジョンの隠れた初代勇者、小銭のタームが誕生する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

処理中です...