黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

さんが

文字の大きさ
22 / 53

第22話 吸血虫のドロップアイテム

しおりを挟む
 イスイの森にやってきたターム達冒険者は、第13ダンジョンへと直行する。イスイの森に漂う異常な魔力には気付いておらず、純粋にダンジョンに潜りに来ている。

「流石に、自意識過剰だったみたいだな。所詮は、準ダンジョン扱いのちっぽけな存在か?」

 急に現れた冒険者達御一行に、影で暗躍するラーミウや曲者揃いの熾天使達の姿が、脳裏をよぎったが思い込み過ぎなのかもしれない。

「油断してくれてるならイイと思うわ。でも、何しに来たのかしら」

 ブランシュも同じことを考えてはいるが、手に持っているのは幾つかの企画書で、恐らくブランシュ的に良かった一次選考通過の企画書なのだろう。今はそれには触れずに、モニターに映し出されている冒険者達を眺める。

「いやいや、一寸の虫にも五分の魂っすよ」

「一寸もないだろが」

「でも、狙いは吸血虫っすよ」

 冒険者達は厳つい装備とは不釣り合いで、戦っているのは蚊ほどの大きさの吸血虫。流石に剣や槍を振り回して倒すことはっしていない。
 所々で炎の明かりが灯ると、ゴウッという音と共に一斉に炎が放たれ、少し遅れてチャリーンッとドロップアイテムの鉄貨の落ちる音がする。

「ドロップアイテムを狙ってるのか?」

「そうみたいすっね。でも、今のところ鉄貨しか落とさないんすけど」

 モニターに映る冒険者達は、ドロップアイテムである鉄貨を探し、拾い上げるとしげしげと眺めている。

「あれっ、捨ててしまうの?」

「タームだけは拾ってるけどな」

 捨てられた鉄貨にタームだけが飛び付き、他の冒険者達は次の吸血虫を探してダンジョンの奥へと進んでゆく。
 他の冒険者達の装備を見れば、安物の武器や防具を身に付けている者はいない。恐らくは第6ダンジョンよりも上位のダンジョンに潜る実力のある冒険者達で間違いない。
 そんな冒険者にとって鉄貨は、数百枚あってやっと1日分の、それも質素な食事代になる程度の価値しかない。大量に集めても、邪魔な荷物にしかならない。

「でも、少し気分が悪いっすね。せっかくドロップさせたのに、何だか俺達のダンジョンが馬鹿にされてるみたいで。タームのやつも、もう少し第6ダンジョンの勇者らしくしろってんですよ」

「まあ、そう言うなって。ダンジョンに来ただけ儲け物なんだから」

 必死に鉄貨を集めるタームの惨めな姿が、第13ダンジョンの存在とダブって見えてしまう。

 しばらくは、同じ光景が繰り返される。脅威はないが、気味が悪い吸血虫。虫除け対策をすれば、余計に吸血虫は近寄ってこず、倒す手段はより魔法に限定される。
 ただ、魔法で倒し続けるにはコストパフォーマンスは悪く、魔力の消費量だけが増える。半日経っても探し求めているものが見つからない状態に、諦めムードが漂い始めている。

 一方のタームはフジーコから与えられた加護はなく、簡単な魔法すら使えない。地道にフジーコから授かった聖剣ペルセウスを振り回し、吸血虫も聖剣ペルセウスの光に集まってくる。そして、虫除け対策をしていないタームの顔は、吸血虫に刺されて原形をとどめていない。
 聖剣ペルセウスを振り回すよりも、顔に止まった吸血虫を叩き落としている方が、倒している数は遥かに多い。

「フジーコの奴は生きてるんっすよね」

「ええ、死んだとは聞いていないわよ」

「タームのしぶとさは、フジーコの加護かもしれんな」

 フジーコに想いを馳せていると、タームが奇声を上げる。一枚の鉄貨を掲げるタームに、他の冒険者達も集まってくる。
 タームの持つ鉄貨を取り上げようとしたが、タームの動きは素早く、取り上げようとした冒険者が驚いている。フジーコの加護ではなく、俺達の地道な肉体改造の効果が出始めている。

「もしかして、古銭じゃないかしら?」

「古銭か?ラーミウの嫌いそうなやつだけど、古代のダンジョンらしくもあるな」

「古代の遺産。第13ダンジョンの売りとしてはイイんじゃないかしら。他にも、眠ってるものがあるかもしれないわよ」

「そうだな、シーマに調べさせてみるか」

「古代の遺産って?先輩もブランシュさんも、何言ってるんすか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...