黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

さんが

文字の大きさ
29 / 53

第29話 カーリーの幸せのクッキー

しおりを挟む
 第13ダンジョンが出来て3ヶ月。ヒケンの森には小さな村が出来上がっている。

 吸血虫がレアドロップする古代の鉄貨や、壊れてしまっているものが多いとはいえ精巧な彫刻は、アーティファクトを彷彿させた。それに加えて、新しく見つかった6階層のガルグイユの彫刻が竜鱗をドロップすると噂が広まれば、第13ダンジョンには冒険者が殺到している。
 もちろん、ダーマが裏で手を回しているのもあるが、地上にいる黒子天使が見えないところで開拓を手伝っていることで劇的に発展してゆく。冒険者だけでなく、大工や労働者に憑依することで身体能力を向上させ、魔法によって強制的に疲労を消し去る。

 何もなかった森の中には、幾つもの宿屋や食堂に、武器防具を扱う店に道具屋と一通りのものが揃ってしまった。

「それにしても、相変わらずの行列だな」

 モニターに映るのは、小さな洋菓子店。

「そうっすよ、今じゃ首都のキョードーからも買い付けにくるらしいっすね」

 ダンジョン目当てで人が集まっているはずなのに、1つだけ想定外がある。この村の一番人気は、元聖女の営む洋菓子店ブ・ランシュ。
 そこで働いているのは、第6ダンジョンで勇者チクリーンのパーティーにいた聖女カーリー。地竜ミショウにブラックアウトしたダンジョンから救われて、今はこの村で暮らしている。
 第6ダンジョンの勇者の取り巻きの一人で、楽して稼ごうとしていた時からは一転して、今は常に休みなく動きまわっている。

「あれって、チクリーンの聖女だろ。随分と変わったな」

「あれは、ローゼさんとブランシュさんのせいっすね」

 第6ダンジョンからの脱出後、カーリーはローゼから徹底した教育を受けた。ミショウが一度助けた聖女を、ローゼは殺そうとはしなかった。
 ただ、ローゼにとってのあるべきの聖女の姿とはかけ離れていることが気に食わないらしく、徹底的に立居振舞から言葉遣いまでを教育し直した。

「それが、何であの服装になるんだ。お前も一枚噛んでるだろ」

 今のカーリーの格好は修道服姿の面影はなく、天使のコスプレとしか言いようがない。背中には天使の羽がありゴスロリっぽい服は堕天使を思わせる。

「違いますって、あれは俺の趣味じゃないっすよ」

「じゃあ、ローゼ……の趣味なのか」

「ローゼさんが教育したのは、あくまでも立居振舞と言葉遣いだけで、趣味嗜好までは元のカーリーと変わらないっすよ。言っときますけど、自分は関わってないっすからね」

「まあ、魔物からも慕われる熾天使を見たら、おかしくなっても仕方ないか」

 ダンジョンの中では、天使と一部の魔物はズブズブに繋がっているが、そんなことは知る由もない。基本的に、魔物の管理は黒子天使の仕事であり、カーリーからは黒子天使の姿は見えない。
 だからカーリーから見えるのは、ダンジョンの中で暮らしている熾天使ブランシュと魔物達。ブランシュの凛とした佇まいと優しい笑みは、全ての者を惹き付ける。地竜や亡者ですらブランシュを敬い、ブランシュも分け隔てなく接する。その光景に衝撃を受けたカーリーは、ブランシュに心酔してしまった。

 ブランシュの前では、熾天使フジーコも穢らわしく見える。フジーコの声が聞こえなくても、加護がなくても構わない。これこそが、至高の熾天使の姿だと。

「一応聞いておくけど、このことはブランシュは知っているんだよな」

 首都からも買い付けに来るならば、カーリー見たさに客が来ているのではなく、味も評価されている。

「ええっ、知ってますよ。作り方を教えたのはブランシュさんっすからね」

「じゃあ、この状況を許容したんだな」

「一応止めてましたよ。最初は、壺を売ろうとしていたらしいっすすからね。ブランシュさんの素晴らしさを世に広める為だとかいって、“ブランシュの幸せの壺”を売りさばいて、布教活動しようとしていたらしいっすよ」

「聖女じゃなく、教祖になろうとしたのか?」

「一応、教祖じゃなくて店長で納得してます」

 こうして幸せをもたらすクッキーが誕生した。食べてからダンジョンに入れば、アイテムドロップ率が上がるという熾天使のクッキー。だが、本当かどうかは定かではない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

処理中です...