黒子の天使の異世界創造~幼馴染み熾天使はダンジョンマスター~

さんが

文字の大きさ
36 / 53

第36話 宝箱の中身

しおりを挟む
 ザキーサが、アイテムボックスから取り出したのは2つの焼きごて。デフォルメされて熾天使の姿で、宝箱に第13ダンジョンの印として使うのだろう。

「ノーマルと、レア用じゃ」

 ランクによって種類の変わる宝箱。でも、同じ木の宝箱でもレア宝箱というものがあり、僅かな違いだが冒険者の心を擽り、コレクター魂を掻き立てる。
 焼きごてを良く見てみれば、少しだけ形が違っている。杖を持ち微笑んでいる熾天使には変わりないが、片方はウインクしている。

「こっちが、レア用なのか?」

 もちろん、ウインクしている熾天使がレア用。

「当たり前じゃろ。それがレアでなくて何になる。昔に作った物で良ければ、好きに使え」

「だとさ、マリク。仕事が少し減ったぞ、良かったな」

「でも、1個しかないんっすよね?」

「喜べ、俺たちのダンジョンを象徴する宝箱の焼き印を押せる栄誉だ。それを、誰にでも任せるわけにはいかない」

 どんなに栄誉と言われても、作る数が半端じゃなく、単純作業の繰り返し。しかも、ただ押せばイイ訳じゃなく、加減が必要になる。

「心配するな。余の造った焼きごては、熱する必要も無ければ、押しミスすることもない。良品率100%の焼きごてじゃ」

 アイテムボックスから、ザキーサが木の箱を出してくる。見た感じは、何の変哲もない普通の木の箱。

「ザキさん、これって何すかっ?マジックアイテムっすか?」

「ただの木箱じゃ。最低ランクの木の宝箱に相応しい素材のな」

 ザキーサがアイテムボックスに収納していたのは、マジックアイテムでも価値のあるものではなく、ただの木箱。そんなものを収納しているとこを見ると、ザキーサのアイテムボックスは想像以上に大きい。もしかすると、過去のダンジョンの遺物などが丸々眠っているような気がする。
 しかし俺と当事者のマリクでは、全く反応が違う。ザキーサのアイテムボックスから出てくるものだけに、更なる便利アイテムであると期待していた。しかし、それが何の変哲もない木箱と聞いて落胆の色を隠せない。

「先輩っ、マジっすか。絶対に無理な自信がありますよ」

「ふんっ、良く見ておれ。この焼きごての凄さが分かるわい」

 ザキーサの魔法で焼きごてが宙に浮かぶと。そのままに木箱に向かい焼印が押される。熱せられてはいない焼きごてだが木箱からは煙が上がり、その後には綺麗な熾天使が姿が現れる。
 そして、今度は軽やかに焼きごてを当てたかと思えば、最初の倍以上の時間を押し当てたりと、やり方を変えてくる。

「どうじゃ、凄いだろ」

「ああっ、どれも全く同じだな。確かに良品率100%ってのは分かる」

 どんな押し方をしても、全く焼き目は同じ。僅かな色ムラや線の太さの違いもない。

「それだけじゃない。どんな木材を使っても結果は同じじゃ。瞬時に材質を判断し、同じ焼き印になる優れものじゃて」

「でも、どれだけ時間がかかるんすか! 1日不眠不休でも24時間しかないんすよ。それに1個すよ、1個しかないんすよ。マジックアイテムに労力と技術をつぎ込むなら、普通のやつが沢山あった方が、絶対早く出来るっすよ」

「何を心配しておる。そんなことは別次元……」

「ザキさん、それはダメだ。ブランシュのダンジョンが、ブラックなダンジョンになってしまう」

 ザキーサが全てを言い終わらない内に、俺が制止する。ザキーサが何を言いかけたかを察したマリクも固まっている。多少の無茶振りでも軽口を叩くのに、今はザキーサの力を一端を知ってか、怯えた目をしている。

「分かったよ、そんな目をするな。レア宝箱を作れる権利をやる。中身は、ブランシュのクッキーでどうだ」

 全てのブランシュのクッキーが良品となるわけではなく、微妙な形や焼き色で弾かれるものがある。そして、弾かれたクッキーの行方はレア宝箱を作った者の自由。

「シーマ、ズルは良くないぞ!お前は関係ないだろ」

「焼きごてがマジックアイテムなら、ボクの管轄でもある。ザキさんに頼ってばかりでは、堕落してしまうよ」

「ダメっすよ、これはオレの管轄っすからね。はい、そこ!勝手に焼きごてに触らない」

 しかし、安易につくったレア宝箱が大きな騒動を起こすことは、まだ誰も予想していない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。

もる
ファンタジー
 剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...