精霊のジレンマ

さんが

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ヒケンの森のオニ族

21.契約と名付け

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21.契約と名付け

盾オニがソーイに連れられて、俺とソーギョクの前にやってくる。

「カショウ殿が、お前に名付けをしたいと仰ってくださってな、どうする?」

「私は何もしていませんが、何かの間違いではないでしょうか?」

「ゴブリンの矢から俺を守っただろう。矢は俺の盾に当たる所まで届いてたからな。お前にも報酬が必要だと思うが、どうだ?」

「私は報酬を貰う立場にありません。それに、私は闇属性。名付けをすると、カショウ様に悪影響をあたえてしまいます」

「俺は無属性だけど、影響あるかの?素の魔力そのままの無属性だぞ。それに、お前のスキルは、重力操作だろ。ゴブリンの矢を、ことごとく落としてたからな」

「はい、そうですが」

「重力操作スキルの、何が悪いんだ?」

俺の問いに、少し間が空く。

「忌み嫌われる、闇属性になります」

「闇属性の重力操作スキルのどこが、忌み嫌われるんだ?ソーギョク、どうなんだ?」

「特に、問題はないな」

「それに俺は純粋な無属性だぞ。他に見たことがないだろ。レア属性の中のレアだぞ。今のところ盾と剣を作るだけの魔法より、お前のスキルの方が役立つと思うぞ」

「そんな訳はありません」

「まだ村に戻れた訳じゃない。これからもゴブリン達の襲撃が続く。その時に、お前の事を何て呼んだらイイんだ?オイッとか、大きい盾を持ったヤツじゃ、連携が取れないだろ」

「・・・」

黙ってしまう盾オニ

「まあ急な話だったから、ゆっくり考えてみてくれ」

俺はそう告げて席を外す。


『ちょっと来なさい!』

ムーアが慌てて出てきて、俺を誰も居ない森の奥まで連れていく。

『名付けを分かってないでしょ!』

「分かってるよ。名付けした相手と繋がりが強くなるんだろ」

『やっぱり、分かってないわね。名付けはね、契約した事に対して、了承しますって事なのよ』

「契約しなきゃダメなのか?」

『当たり前でしょ。私達はあなたと契約してるのよ。分かってる?精霊の源のなる魔力をあなたが提供し、私達はあなたの為に働く』

いまいちピンとこない。そんなに大変なことなのか?そんな俺の顔を見て、ムーアが続ける。

『魔力は精霊の命の源。それを授ける代わりに、命をかけて働けって事なの!』

「そんな意味があったのか・・・」

『そうよ、報酬とそれに釣り合う対価ね。あなたはオニに何を求めるの?そして何を与えるの?』

「まずかったかな?」

『そう思うのなら、早い方がイイわよ』

急ぎたいけど、急いで戻ったと思われるのも格好悪い。何て言おうか悩む。

何も決まらないまま、ソーギョクの所に戻る。

「カショウ殿、オニ族族長として名付けをお願いしたい」

「おっ、おうっ」

「この身を全てを捧げてお仕えいたします」

『どうするの、ご主人様?この身の全てと対当なものよ♪』

「ムーア、茶化すなよ。分かって出てきてるんだろ!」

『おっ、おうって返事したから、酒と契約の精霊である私が出てきたんでしょ!ここは私が取り仕切ってあげるわ』

「酒の契約って、極道だな?」

ポロっと言葉が出てしまった。不味いと思ったが、ムーアが反応する。

『そうよ、ただの契約ではない!酒と契約の精霊自らが立会人となって行う、極上の契約!』

んっ、極上?聞き間違えてくれたかな?
極道という言葉を話せるという事は、アシスにも似た存在は居るはず。
だが、あまり表に出て来なかったムーアは、裏の世界の事は知らない。

その雰囲気が十分にあるだけに、ムーアの事に面と向かって極道みたいだとは言えない。

俺に極上と言われたと思ってるムーアは、さらに機嫌が良くなっていく。

『その身の全てを捧げるのであれば、カショウのスキルから対等のものを与える』

さっきはそんな話はしてなかったはず。慌てて止めにきたのに、何故?

「何を与えるんだ」

『命を捧げるの代わりに、精霊化のスキルを与える。魔力を糧とする体になる為に、食事は不要となる』

「そんな事が出来るのか?」

『私だから出来る、可能な高度な契約魔法よ。決して破ろうとはしない事ね。ただではすまないわよ!』

やっぱり極道の世界かも・・・。

『カショウ、名付けを行いなさい』

「今日から、お前の名は“ソースイ”だ!」

また、ぼっち仲間が増える。アシスではそんな運命にあるのかもしれない。
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