精霊のジレンマ

さんが

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ヒケンの森のオニ族

22.ネコ型とヒト型

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私の名前はクオン。
ご主人様が付けてくれ名前を私はとても気に入っている。

ご主人様は変わった人。
面倒臭い事は嫌いだと言いながら、常に何か面倒臭い事を考えて悩んでる。そして、ちょっと理屈っぽい所がある。
トラブルは嫌だと言いながら、自らが飛び込んでしまう変な体質。
ちょっと心配しちゃうの。

だから今日はヒト型になってる。もちろん自慢のネコ耳は残ったままよ。
なぜヒト型になっているかというと、ヒト型の方が話しやすいからよ。ネコ型は、話しにくいの。

最近、私以外にも精霊のお友達が増えたの。
ルークにメーンにカンテ、ムーア、ブロッサ。こんなに沢山のお友達が出来たのは初めて。
ちょっと嬉しいけど、私はカショウの一番目の精霊。お姉さんとて、しっかりしないといけないのよ!

ご主人様には眠ってもらったの。幾ら精霊化しても、人の体に疲れが溜まると思考能力が落ちるって話したら、珍しく言うことを聞いてくれた。

だから、今日は皆でお話するチャンスなの。皆を私のお家に呼ぶの!


カショウが眠りにつくと、クオンは皆を影に引き込む。

『ここはどこ、その声はクオン?』

ムーアが初めて見るクオンの姿に驚く。

精霊は、姿形を変える事が出来る。
動物型はの場合は、身体能力が優れている。クオンの探知は影属性のスキルではなく、ネコ型の影響。
人型になった場合は、手足が自由に使えたり、思考能力が高くなる。その反面、身体能力は低くなる。

「そうよ、ここはご主人様の影の中で、私のお家よ」

ニ十畳くらいの広さで、テーブルとソファー、デスクにクローゼットが備え付けられている。

「みんな好きな所に座って」

『影の中は、こんな快適な空間になってるのね、驚いたわ』

「こんな空間は私も初めて。影の中なのに、ポカポカして暖かいの。いつもは暗くて寒いの」

『ここの部屋に私の物って置けるの?』

「大きくなければ何でも置けるし、私がいれば自由に出し入れできるわ」

『それって、アイテムボックスって事よ!凄い事よ』

「カショウが強くなれば、もっとお部屋広くなる」

『私も何か置かせてもらってもイイ?』

「お友達だもの、イイよ」

話をしていると、部屋の奥から音がする。ガシャンと音がして、何かが崩れる音がする。

『あれは何?』

そこにはクオンには似合わない、大きな槍とプレートアーマー。
2メートルくらいの大男やオニ族でなければ、身に付ける事が出来なさそうな大きさ。

「さっきのゴブリンの群れの中に居たの。カショウに、大きな槍を投げようとしていたから、やっつけたの」

『クオンがやっつけたの?』

「うん、私がやっつけたの」

『どうやって・・・やっつけたの?』

ムーア達の前から、クオンが消える。
いつの間にか、ムーアの後ろに立っているクオン。

ムーアの首筋に、クオンが手を当てる。

「こうやって」

ムーアは固まって動けない。目だけがクオンを捉えようと動く。

「すぐ首ちょんぱするから、手加減が難しいの」

『クオン、首ちょんぱって、何かしら?』

「首が、ぽーんって飛んでくの」

『クオン、真似でもあんまりやっちゃダメよ』

「うん、私はヒト型は嫌い。それに探知専門だから、やらないの。ちゃんとカショウの命令を守るの!」

後ろにいたクオンが消えたかと思ったら、元の場所に戻っている。

精霊には出ないはずの、冷や汗が流れる。
ネコ型のクオンが人型になると、身体能力が上がり、思考能力が落ちてしまうみたい。完全の逆パターンで、今までに見たことがない。
もしかして、ぼっちだった理由は・・・。

不安を振り払って、ムーアが話す。

『ゴブリンジェネラルを倒したのは、凄いわよ。クオンのお手柄ね!だけど、もっと早く教えてくれないとダメよ』

「大したことはしてない」

『だけどゴブリンが追撃出来なかったのも、クオンがジェネラルを倒したからよ。今なら安全にオニ族の村に戻れるわ!』

「わかった、次からは教える」

影からすぐに出て、ムーアが眠っていたカショウを起こす。
ゴブリンジェネラルの話をすると、すぐにオニ族の村への出発準備が始まる。


皆とお話したかったのに残念。せっかく眠れたのに起こしてしまったから、カショウは怒るかな。だけどカショウは優しいから、褒めてくれるかもしれない。
私はカショウの一番精霊。もっと頑張るの!
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