精霊のジレンマ

さんが

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オオザの崖のゴブリン

50.解放

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ゴブリンキングの王冠や杖、ロードの盾を回収し、階段を登る。

「エトッ、エトッ、エトッ」

ハンソに岩を出させて階段を岩で埋めていく。中から何かが出てくるだけでなく、誰かが中に入るのも防ぎたい。
避けては通れない気がするが、今は少しでも先延ばししたい。


そして崖からの帰り道は楽になった。

「ウィング!」

呪文のように唱える必要はないが、口に出して言ってみると背中から純白の翼が現れる。
回復中のリズとリタの魔力なので、長時間出しっぱなしには出来ないが、ゴブリンキング戦では翼に助けられた。

残念なのは、今ソースイの脇の下に腕を入れて抱えて飛んでいる事。
照れているソースイが少し気持ち悪い。
あまりにも照れているので、行きと同様にマジックシールドで足場を作ってやったが、それは嫌だったらしい。
そして、やっぱりベルがソースイの頭に止まる。私の存在を忘れないでと自己主張するかのように!


崖の下に居たゴブリン達の姿は見えない。クオンの探知にもかからないので、この近くには居ない。異変を感じて逃げたか、ジェネラルが居なくなった事で自由を手に入れたのかもしれない。
統制の取れた行動や動きは見せないだろうが、それでもゴブリンキャプテンの群れは残っている。逆に抑えるものがなく攻撃的になってしまうかもしれない。

今回も予定外で、探索だけのつもりが大きく予定が変わってしまった。
結局、ソーギョクとヤッシの期待通りの動きをしているような気がするが、一応は報告しに戻る。
勿論報酬もあるし今後の事を考えても、お金は必要になるのは間違いない。改めて、ソースイの装備を揃える必要性も考えさせられた。


そして村へ戻る途中で、火オニ族の族長であるソーセキの部隊と、ゴブリンキャプテンの戦いに遭遇する。
ソーセキの横にはソーサが居るので、ソーキのように暴走したわけではない。そして、何故かブクマ達が一緒に居る。

獣達も本能的にゴブリン達の異変を感じたのかもしれない。オニ族をむやみやたらに襲うなとは言ったが、まさか協力してくれるとは思わなかった。

ソーセキとブクマは、ゴブリン達の攻撃を物ともせず、ゴブリンキャプテンに向かって突き進む。
多少の犠牲は出ているが、待つだけでなく前に進むという選択をしたようだ。

まだゴブリンキャプテンは残っているから、それなりの抵抗はあると思うが、そこはオニ族に任せようと思う。


『眉間にシワが寄ってるわよ!』

ムーアが俺の真似をしてくる。

「ゴブリンだけで終わると思うか?」

『それなら尚更、1人だけでは何も出来ないわよ』

「そうだな、ゴブリンでこれだもんな。分からない事も増えたしな!」

ゴブリンの持っている武器の謎。ゴブリンロードも剣と盾を持ってポップアップした。あの凶悪な武器はどうやって出来てくるんだ?

そして魔物も精霊に似ている事が分かった。核が魔力を吸収し身体をつくる。魔石を残して消滅はするが死ぬことはなく核に戻るだけ。
ゴブリンキングから得た嗅覚なら、見えないほどの小さな核を感じ取る事が出来る。

古の滅びた記憶とは何かが分かれば解明できるのかもしれない。

「分からない事も増えたけど、仲間も増えたもんな!」

『そうね、ぼっちの集まりとは思えないくらいね』

クオン、ルーク、メーン、カンテ、ムーア、ブロッサの6人だった精霊が、ベル、リズ、リタ、ハンソ、ダーク、フォリー、マトリが加わって13人。

「大分、魔力消費も増えたかな?」

『あら、残念ね』

そして愕然とした。大分消費量が増えたと感じてたが、ダムの水を耳掻きで掬ってる程度。俺の身体はどうなってんるだ・・・。

焦る、気が急く、それは仕方がない。

だけど、それだけじゃない気がするが。言い表すことの出来ない、これまで俺が生きてきた勘と経験のような感覚が、俺に先に進めと言う。ただ進む為の度胸がないだけ。
勘・経験・度胸なんて言ったら、最悪だよな。だけど、覚悟を決めて口にする。

「とにかく先に進もうと思う。理由はないが、進まなきゃ駄目な気がするんだ!」

『最初から分かってるって言ってるでしょ。あなたが走りすぎたら、私かクオンが止めてあげるわよ!』

「そうだな、じゃあ、次は何処を目指そうか?南の迷いの森か、それとも東のドワーフの国を目指すか?」

影からクオンとブロッサが現れる。

“精霊の核、忘れてる”

「私ノ棲ミカナラ、ヴァンパイアデモ大丈夫ヨ」

「そうだったな、大切な事を忘れてたな。それじゃあ、少し戻るけどブロッサの棲みかに向かうか!」
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