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迷いの森の精霊
124.魔樹の森と守護者
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「ああ、バイコーンには元のユニコーンの欠片さえも残されていなかったよ」
それでも、感じ取れない程の欠片が残されていて、いつかまたユニコーンが誕生すると信じたい。
「精霊化は少しずつ進行し、最後には精霊へと至る。魔物化も同じで、少しずつ魔物に侵食されてゆく。どちらも互いに共存する過程があり、存在そのものが混ざり変化する。しかし精霊と魔物は混ざる事がなく、どちらか一方しか存在すると事が出来ん」
「つまり、精霊化している俺が魔物の翼を持つことは、あり得ないって事になるのか?」
「魔樹の森の守護者である儂が見たことがなければ、誰も見たことはなかろう」
「魔樹の森でも、精霊の魔物化が起こっているのか?」
「慌てるでない。お主がみたいな異分子が暴走しても困るから、この森について教えてやろう」
キマイラが、魔樹の森の役割を語り出す。
大地の地中深くから、魔力が溢れ出し魔力溜まりとなり、これが魔物がポップアップする原因となる。それは迷いの森や周辺の森でも同じで、幾つかの魔力だまりがある。ただ他の場所比べると、邪気が濃く強い。
迷いの森の周辺では、濃い魔力溜まりが在る場所には魔樹の森が在る。木々は魔力溜まりの魔力を吸収し成長する為、樹皮や葉は全てが黒く変色してしまう。しかし、全てを直ぐに吸収するのではなく、時間をかけてゆっくりと吸収する。だから、邪気のある魔力が漂って、無くなる事はない。
「お主は、地中から湧きだす黒い靄を見ただろう。あれが邪気を帯びた魔力じゃよ」
確かにユニコーンのいる場所からは黒い靄が湧き出し、身体へと吸収されていた。
「だけど、見たのはユニコーンの縄張りの中だったぞ」
「大きな魔力溜まりには魔樹の森があるが、最近では散発的にあちこちで魔力が溢れておる。そして弱った精霊がその魔力を取り込んでしまうと、精霊の魔物化が始まる」
「そうだとしたら、まだまだ多くの精霊が魔物化してしまうのか?」
「精霊が強ければ問題ないが、危ないのは弱き者じゃ」
「もしかしてユニコーンの角を落としたのは、良くなかったのか?」
「それくらいは、問題にならんよ。精霊として弱体化したのは、その後に起こった事が原因じゃろ」
確かに、角無しのユニコーンの身体は傷つきボロボロになっていたが、それは俺達との戦いの結果ではない。とはいっても角を失った事が関係しているのは、間違いないだろう。
「今までも傷つき弱った精霊が、この魔樹の森に逃げ込み魔物化してしまった。そして、全ての精霊は、魔物となり精霊としての存在は消えてしまった」
それが本当であれば、 精霊化した俺が魔物の翼を持っている事はあり得ない。
「魔樹の森の守護者の役目は、弱った精霊が森に侵入しない様にする事なのか?」
「それは違う。儂は魔樹の森が破壊されないようにする為に、原初の精霊様によって創られた精霊。だから、魔樹の森にしか居ることが出来ない存在じゃ」
「他の精霊とは違うって事?」
「今はそれぐらいの認識でよい。詳しく知りたければ、もっとアシス知ってからじゃ」
確かに生半可な知識で話を聞いても理解出来ないだろうし、それどころか間違った解釈をすれば逆に危ない。
そして今は、キマイラが特殊な精霊だと聞いて安心している。これくらいの強さの精霊がゴロゴロいるとするならば、俺はアシスを生き抜く事は出来ない。
「それでだけど、俺達はここを通ってもイイのかな?」
「その前に、もう一度さっきの光を見せてくれんか」
「この精霊の事か?」
リッター達を召喚すと、キマイラの顔は険しくなり、目を細め顔を背けている。
「分かった、もう大丈夫だ。その精霊は、しまってくれ。永く光の閉ざされた森で、儂には眩しすぎた」
慌ててリッターをブレスレットに戻すと、キマイラの表情が和らぐ。ウィプス達の明かりなら大丈夫だが、光の精霊であるリッターの明かりは強すぎるみたいだ。
リッター達がブレスレットの中に戻ると、キマイラはマジマジと俺を見つめてくる。
「通っても構わんが、頼みがある」
「それは、俺達に出来る内容なのか?」
「何、簡単な内容じゃ。魔樹の森を抜けると、1本の大きな木が見える。そこにヘカントケイルがいるから、その光の精霊を見せてやって欲しい」
「それだけでイイのか?魔物を倒せとかは本当にないんだな」
それでも、感じ取れない程の欠片が残されていて、いつかまたユニコーンが誕生すると信じたい。
「精霊化は少しずつ進行し、最後には精霊へと至る。魔物化も同じで、少しずつ魔物に侵食されてゆく。どちらも互いに共存する過程があり、存在そのものが混ざり変化する。しかし精霊と魔物は混ざる事がなく、どちらか一方しか存在すると事が出来ん」
「つまり、精霊化している俺が魔物の翼を持つことは、あり得ないって事になるのか?」
「魔樹の森の守護者である儂が見たことがなければ、誰も見たことはなかろう」
「魔樹の森でも、精霊の魔物化が起こっているのか?」
「慌てるでない。お主がみたいな異分子が暴走しても困るから、この森について教えてやろう」
キマイラが、魔樹の森の役割を語り出す。
大地の地中深くから、魔力が溢れ出し魔力溜まりとなり、これが魔物がポップアップする原因となる。それは迷いの森や周辺の森でも同じで、幾つかの魔力だまりがある。ただ他の場所比べると、邪気が濃く強い。
迷いの森の周辺では、濃い魔力溜まりが在る場所には魔樹の森が在る。木々は魔力溜まりの魔力を吸収し成長する為、樹皮や葉は全てが黒く変色してしまう。しかし、全てを直ぐに吸収するのではなく、時間をかけてゆっくりと吸収する。だから、邪気のある魔力が漂って、無くなる事はない。
「お主は、地中から湧きだす黒い靄を見ただろう。あれが邪気を帯びた魔力じゃよ」
確かにユニコーンのいる場所からは黒い靄が湧き出し、身体へと吸収されていた。
「だけど、見たのはユニコーンの縄張りの中だったぞ」
「大きな魔力溜まりには魔樹の森があるが、最近では散発的にあちこちで魔力が溢れておる。そして弱った精霊がその魔力を取り込んでしまうと、精霊の魔物化が始まる」
「そうだとしたら、まだまだ多くの精霊が魔物化してしまうのか?」
「精霊が強ければ問題ないが、危ないのは弱き者じゃ」
「もしかしてユニコーンの角を落としたのは、良くなかったのか?」
「それくらいは、問題にならんよ。精霊として弱体化したのは、その後に起こった事が原因じゃろ」
確かに、角無しのユニコーンの身体は傷つきボロボロになっていたが、それは俺達との戦いの結果ではない。とはいっても角を失った事が関係しているのは、間違いないだろう。
「今までも傷つき弱った精霊が、この魔樹の森に逃げ込み魔物化してしまった。そして、全ての精霊は、魔物となり精霊としての存在は消えてしまった」
それが本当であれば、 精霊化した俺が魔物の翼を持っている事はあり得ない。
「魔樹の森の守護者の役目は、弱った精霊が森に侵入しない様にする事なのか?」
「それは違う。儂は魔樹の森が破壊されないようにする為に、原初の精霊様によって創られた精霊。だから、魔樹の森にしか居ることが出来ない存在じゃ」
「他の精霊とは違うって事?」
「今はそれぐらいの認識でよい。詳しく知りたければ、もっとアシス知ってからじゃ」
確かに生半可な知識で話を聞いても理解出来ないだろうし、それどころか間違った解釈をすれば逆に危ない。
そして今は、キマイラが特殊な精霊だと聞いて安心している。これくらいの強さの精霊がゴロゴロいるとするならば、俺はアシスを生き抜く事は出来ない。
「それでだけど、俺達はここを通ってもイイのかな?」
「その前に、もう一度さっきの光を見せてくれんか」
「この精霊の事か?」
リッター達を召喚すと、キマイラの顔は険しくなり、目を細め顔を背けている。
「分かった、もう大丈夫だ。その精霊は、しまってくれ。永く光の閉ざされた森で、儂には眩しすぎた」
慌ててリッターをブレスレットに戻すと、キマイラの表情が和らぐ。ウィプス達の明かりなら大丈夫だが、光の精霊であるリッターの明かりは強すぎるみたいだ。
リッター達がブレスレットの中に戻ると、キマイラはマジマジと俺を見つめてくる。
「通っても構わんが、頼みがある」
「それは、俺達に出来る内容なのか?」
「何、簡単な内容じゃ。魔樹の森を抜けると、1本の大きな木が見える。そこにヘカントケイルがいるから、その光の精霊を見せてやって欲しい」
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