134 / 329
迷いの森の精霊
134.負けないための戦い
しおりを挟む
目の前にいるレーシーは、蜘蛛のような格好をしている。下半身がなく背中の10体20本の腕で身体のバランスが取り難くなったのか、背中を下にして腕を蜘蛛の脚のようにしている。
下半身は少しずつではあるが枝のようなものが伸びて身体を再構築している。驚異的な回復能力ではあるのだろうが、瞬間的に再生するのではなく時間がかかりそうではある。
そして俺達に簡単に接近させないようにと、大樹の中のトレントが消えてポッカリと空いた空洞に蔦を張り巡らせて、まるで蜘蛛の巣のような状態を作っている。この空洞は地下の深くまで続いているので、翼がなければ簡単には近付けない。
回復するまでは、巣穴に引きこもって様子を窺うつもりだろう。
魔物化した段階で、俺達とヘカトンケイルを相手にするだけの力をもっているのだから、精霊を吸収し完全に回復したレーシーは、かなり上位の魔物になるだろう。
「怒ってるよな」
『ええ、かなりご機嫌斜めよ!あなたに獲物を掠め取られたんだからね』
「言い出しっぺはムーアだろ。俺は指示に従っただけだし」
『そんな臭そうな言い方辞めてくれる。焚き付けたのは、イッショでしょ!』
「ちょっと待て、俺様は首謀者じゃない」
場の空気にそぐわない会話に、ナルキが入ってくる。
「ちょっと待ってよ。契約して君の異常性は良く分かったけど、今の君達の会話も狂ってるよ」
「お主も関係してしまったんだから諦めろ。ナレッジも喜んでるぞ♪」
『一番喜んでるのは、イッショでしよ!怒りの精霊のくせに、顔がにやけてるわよ。そんなで力が発揮できるの?』
「だってムーア!50人分だぞ、50人!」
「ボクの話なんだろうけど、その前にレーシーは大丈夫かな?これを見て、さらに怒ってるよ」
『後はカショウに任せとけばイイのよ。それが仕事なんだから!』
相手は1人で、こっちは複数人で誰かが見てくれている。多少の脱線話や軽口が出ているのは、まだまだ余裕があるバロメーターのような感じになっている。
「ナルキ、探知スキルは使えるか?」
「残念だけど、使えないね。必要なスキルだったのかい?」
「確認しただけだ。思うところはあるかもしれないけど、今は勝つつもりはないからな」
「やっぱり、逃げるのかい?」
「シナジー、頼む」
そう告げると、レーシーの巣を霧が包み込み隠してしまう。
巣に籠った状態でも俺達の攻撃なら耐えれると思っているみたいだが、それは巣から動かない事を教えてくれてもいる。
「嫌がらせの一斉攻撃だ!ハンソ、いつまでも死んだフリしてるなら、レーシーの巣に投げ込むからな」
「エトッ、エトッ、エトッ」
最初にダークの攻撃を防げなかった事で、レーシーは探知スキルを持っていないのは分かっている。そしてナルキが探知スキルを使えないなら、レーシーが新しくスキルを吸収する事もない。
もちろんシナジーの霧に包まれているので、俺達はレーシーの居場所は手に取るように分かる。
俺以外は皆場所を変えながら攻撃を行い、居場所を特定させない。さらに、霧の中ではシナジーが作った影が、レーシーを惑わせ始める。
そして、レーシーが俺達の居場所を知るためには霧の外へと出るしかない。
まだレーシーは回復している最中であり、吸収したのは弱りきった精霊でしかない。完全な力を取り戻すには、まだまだ時間がかかる。それは、精霊と契約している俺だから分かる事でもある。
そして、ここで今までに無かった変化を与える。
「ファイヤーボール」
レーシーではなく、足場としている蔦を狙って攻撃を加える。蜘蛛の巣のように宙に浮いているので、大樹に与える影響も少ない。
レーシーも足場を確保する為に新たに蔦を張り巡らせようとするが、ダークも蔦を狙って攻撃を始めると、明らかに足場になる蔦が減り始める。
徐々に状況が悪くなっている事を理解したのか、レーシーは仕切り直すために巣を捨て、下へと逃げる。
「ウォーター」
その瞬間に、大量の水をレーシーの居る空洞に流し込む。トレントの居なくなった空洞は地下にまで続いており、特に黒い靄を吸い上げて魔物化したトレントの根は深い。
宙に浮いた状態のレーシーは、水の流れに身を任せるしかなく、地下の深くの空洞にまで流されてしまう。
「探知出来る範囲には居ないな」
『そうね、綺麗に流れていったわね』
「あとは、この穴を塞ぐだけだな。しばらくは出てこれないだろう」
下半身は少しずつではあるが枝のようなものが伸びて身体を再構築している。驚異的な回復能力ではあるのだろうが、瞬間的に再生するのではなく時間がかかりそうではある。
そして俺達に簡単に接近させないようにと、大樹の中のトレントが消えてポッカリと空いた空洞に蔦を張り巡らせて、まるで蜘蛛の巣のような状態を作っている。この空洞は地下の深くまで続いているので、翼がなければ簡単には近付けない。
回復するまでは、巣穴に引きこもって様子を窺うつもりだろう。
魔物化した段階で、俺達とヘカトンケイルを相手にするだけの力をもっているのだから、精霊を吸収し完全に回復したレーシーは、かなり上位の魔物になるだろう。
「怒ってるよな」
『ええ、かなりご機嫌斜めよ!あなたに獲物を掠め取られたんだからね』
「言い出しっぺはムーアだろ。俺は指示に従っただけだし」
『そんな臭そうな言い方辞めてくれる。焚き付けたのは、イッショでしょ!』
「ちょっと待て、俺様は首謀者じゃない」
場の空気にそぐわない会話に、ナルキが入ってくる。
「ちょっと待ってよ。契約して君の異常性は良く分かったけど、今の君達の会話も狂ってるよ」
「お主も関係してしまったんだから諦めろ。ナレッジも喜んでるぞ♪」
『一番喜んでるのは、イッショでしよ!怒りの精霊のくせに、顔がにやけてるわよ。そんなで力が発揮できるの?』
「だってムーア!50人分だぞ、50人!」
「ボクの話なんだろうけど、その前にレーシーは大丈夫かな?これを見て、さらに怒ってるよ」
『後はカショウに任せとけばイイのよ。それが仕事なんだから!』
相手は1人で、こっちは複数人で誰かが見てくれている。多少の脱線話や軽口が出ているのは、まだまだ余裕があるバロメーターのような感じになっている。
「ナルキ、探知スキルは使えるか?」
「残念だけど、使えないね。必要なスキルだったのかい?」
「確認しただけだ。思うところはあるかもしれないけど、今は勝つつもりはないからな」
「やっぱり、逃げるのかい?」
「シナジー、頼む」
そう告げると、レーシーの巣を霧が包み込み隠してしまう。
巣に籠った状態でも俺達の攻撃なら耐えれると思っているみたいだが、それは巣から動かない事を教えてくれてもいる。
「嫌がらせの一斉攻撃だ!ハンソ、いつまでも死んだフリしてるなら、レーシーの巣に投げ込むからな」
「エトッ、エトッ、エトッ」
最初にダークの攻撃を防げなかった事で、レーシーは探知スキルを持っていないのは分かっている。そしてナルキが探知スキルを使えないなら、レーシーが新しくスキルを吸収する事もない。
もちろんシナジーの霧に包まれているので、俺達はレーシーの居場所は手に取るように分かる。
俺以外は皆場所を変えながら攻撃を行い、居場所を特定させない。さらに、霧の中ではシナジーが作った影が、レーシーを惑わせ始める。
そして、レーシーが俺達の居場所を知るためには霧の外へと出るしかない。
まだレーシーは回復している最中であり、吸収したのは弱りきった精霊でしかない。完全な力を取り戻すには、まだまだ時間がかかる。それは、精霊と契約している俺だから分かる事でもある。
そして、ここで今までに無かった変化を与える。
「ファイヤーボール」
レーシーではなく、足場としている蔦を狙って攻撃を加える。蜘蛛の巣のように宙に浮いているので、大樹に与える影響も少ない。
レーシーも足場を確保する為に新たに蔦を張り巡らせようとするが、ダークも蔦を狙って攻撃を始めると、明らかに足場になる蔦が減り始める。
徐々に状況が悪くなっている事を理解したのか、レーシーは仕切り直すために巣を捨て、下へと逃げる。
「ウォーター」
その瞬間に、大量の水をレーシーの居る空洞に流し込む。トレントの居なくなった空洞は地下にまで続いており、特に黒い靄を吸い上げて魔物化したトレントの根は深い。
宙に浮いた状態のレーシーは、水の流れに身を任せるしかなく、地下の深くの空洞にまで流されてしまう。
「探知出来る範囲には居ないな」
『そうね、綺麗に流れていったわね』
「あとは、この穴を塞ぐだけだな。しばらくは出てこれないだろう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
悪魔になったらするべきこと?
ファウスト
ファンタジー
剣と魔法の世界。そこで魔法を教える学校に通う主人公ルナ・フラウステッドは魔法使いに憧れてる女の子。次の進級で実技に行く段階になった彼女だったがどうしてか魔法を上手く使えない落第生となってしまった。そんな時、偶然にも雇われた家庭教師の先生が言う方法に運命を任せたところ・・・。
「悪魔になっちゃった!?」
悪魔に変化!だけでも中身はそのままの彼女の運命やいかに!
彼女を狙う影、彼女の体の行く末、それを見守る保護者たち。
彼女はいったいどうなってしまうのだろうか。
これは悪党から両親と自分の将来を守るために悪魔になった少女がその身の上と体の特殊さから
様々な騒動に巻き込まれるお話である。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
ガチャから始まる錬金ライフ
あに
ファンタジー
河地夜人は日雇い労働者だったが、スキルボールを手に入れた翌日にクビになってしまう。
手に入れたスキルボールは『ガチャ』そこから『鑑定』『錬金術』と手に入れて、今までダンジョンの宝箱しか出なかったポーションなどを冒険者御用達の『プライド』に売り、億万長者になっていく。
他にもS級冒険者と出会い、自らもS級に上り詰める。
どんどん仲間も増え、自らはダンジョンには行かず錬金術で飯を食う。
自身の本当のジョブが召喚士だったので、召喚した相棒のテンとまったり、時には冒険し成長していく。
異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)
愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。
ってことは……大型トラックだよね。
21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。
勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。
追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる