精霊のジレンマ

さんが

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再構築

194.使命

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ベッドで眠りに付いているコアピタンスは、リッチが俺とソースイにかけた呪いを解くために身代わりになった事になっている。
リッチが仕掛けた最後の抵抗は、俺達に呪いをかけて新しく依り代にする事。そして、その呪いにかかった事を見抜いたのは、エルフ族の中でもコアピタンスのみだった。

そういう事にすればプラハラードも、俺達に長々と居てもらっては都合が悪い。あれこれと詮索され、俺達がボロを出しても面白くないし、お互いの主張が食い違っては眼も当てられない。
それに1番の理由は俺達の監視をしていては、当初の目的通りにクオカの町を牛耳る為の行動が遅れる。

行き当たりばったりに近いプラハラードとの駆け引きの結果、急遽クオカの町を出ることにする。俺の精霊というかチュニックが作り出したコピーのコアピタンスは、すぐにバレるとは思わない。しかし、俺達も不安を抱えたまま行動したり、バレた時のリスクを回避する為にさっさと居なくなってしまった方がイイ。

『ねえ、どこに行くの?』

「消去法だよな···」

東はエルフ族の住居があり、北はヒケンの森、西はゴセキ山脈となるなら、南へ向かうはしかない。
消去法で行き先を決めるとなった時に、何となく嵌められているような感じがした。行き当たりばったりや偶然のように見えて、選択肢は限られている。誰かに敷かれたレールの上を走っているような気しかしない。

「いつから?誰が?」

『どうしたの?』

「どんな選択をしても、結局は南に行くように仕向けられているんじゃないか?今までも自ら選択しているように見えて、決められた選択肢から選ばされているような気がする」

『それなら無駄に考えなくてもイイから楽でしょ。どうせ生き残る為に足掻いてるんだから、選択肢なんて限られてるわ。誰かが導いてくれて強くもしてくれるなら歓迎でしょ!』

俺のそんな悩みは、ムーアに簡単に一蹴されてしまう。

「そんな考え方もあるんだろうけど···。誰かの思い通りに動かされているのは面白くないよな」

『今は、何でも思い通りにする力はないのよ。それなら、期待通りに思い通りに動いてあげたら。もっと力を付けるまでの我慢よ!』

「そうだな、もっと強くなれば俺の中の精霊を引っ張り出せるか」

俺の性格は、答えが出なくても延々と考えてしまい、思考の無限ループに陥ってしまう。その点ムーアは俺とは違い、考えてもダメなら必要以上には考えない。そんな割り切った性格に時々助けられる。

「ムーア、ありがとな」

『えっ、急に何に言い出すのよ。そんな事より、森を抜ける心配をしましょう』

若干照れたような素振りを見せたが、新しい問題提起をして誤魔化してくる。

「そうだな、今回は俺達だけで森を抜けなければならないのか」

『そうねダビデもディードもエルフ族の族長争い忙しくなるでしょう』

「もう用がないのなら、精霊樹は解放してくれるかな?」

クオカの町に来る時は、ダビデという先導がいた。しかしディードは、先導なしでも俺達は精霊樹に導かれてクオカの町に辿り着くと言っていたが、今度はその逆になる。

今度はコアがいるとはいえ表に出すわけにはいかない。めざとくコダマが見つけて、あっという間にクオカの町にまで噂が広がっては意味がない。

そして家の外に出ると、ダビデが待っている。

「そろそろ出発ですか?」

「何で、ここに居るんだ?大丈夫なのか?」

「当然じゃないですか、私に与えられた使命はカショウ殿の送り迎えですよ」

「だって、聞いてないのか?今はそんな事をしてる場合じゃないだろ?」

「何も聞いていませんよ。私が族長より与えられた使命を遂行するのみ。それが私の役割なのですから」

「でもコアピタンスは眠ったままの状態なんだぞ?妹なんだろ、何も思わないのか?」

そこに風が巻き起こり、ディードが現れる。

「何かダビデに問題でもあるのかしら?ダビデに違う仕事をさせたいなら、眠っていないで起きるべきで、ダビデに非はないはずよ!」

確かに言っている事に間違いはないが、それでは今ダビデに命令を下せる者は誰もいない。

「カショウ殿、時間がありません。それでは行きましょう!」

そう告げるとダビデが、来た時と同様に走り出すが、今回はわざと遠回りする事なく真っ直ぐに南へと向かう。そして、休みなく走り続け途中で休憩をとる事もなく、最短で迷いの樹へと辿り着く。

「ここまで来れば大丈夫でしょう。後の事は宜しくお願いしますね」
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