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オヤの街のハーフリングとオーク
224.カンテのサムズアップ②
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カンテがサムズアップすると、ウィプス達の動きが変化する。
ルークの動きが少し遅くなり、オークの吸収スキルの範囲をギリギリで躱し始める。時折、吸い寄せられるようにふらつく姿は、余裕のある姿には見えない。
そして、カンテのサンダービームは最初こそオークの顔から離れた足首や手首を狙っていたが、ルークがふらつき始めると次第に狙いが変わる。足首や手首から、肘や膝を狙い始める。
近接戦闘を仕掛けたが、致命傷を与える事が出来ずに疲弊したルーク。それを援護して助けようとしているカンテ。カンテのサムズアップを見ていなかったら、今の状態はそうにしか見えない。
ここまで動きが変わっても、ウィプス達の狙いは分からない。最初こそ、持久戦に持ち込んでオークが疲弊するのか、ルークの動きに釣られたオークが隙を見せるのを待っているのかと思ったが、先にルークの運動量を落としてしまう。
「ムーア、狙いは分かるか?」
俺の言葉に、ムーアは首を横に振って返してくる。
「優秀な俺様が教えてやろう。ルークの魔力は変わっておらん。だから心配せんでも大丈夫!」
「知ってるぞ。カンテがサムズアップしてきたんだから、それくらい分かるだろ」
ブレスレットの中からでは全てが分かるわけでない。俺が見ているものは認識しているみたいだが、特にイッショの場合は視覚よりも魔力を感じ取って把握している。
それにウィプス達が成長したといっても、まだ大きさはラグビーボール程でしかなく、その小さな手がサムズアップするのは把握出来なかったのかもしれない。
「こうやってただろ!」
俺が親指を立てて、ポーズをつくって見せる。
「えっ、それって何だ。それが何かなんて、聞いた事もないぞ」
『イッショは昔の姿も犬だったのよね?』
「犬と呼ぶな。俺様の姿は今とは比べ物にならないくらいの、神々しい姿をしておっのだ」
『それじゃあ、サムズアップなんてできないでしょ。知らなくて当然よ、ヒト型じゃないと出来ないんだから』
「うむっ···。そうだな···」
いつも自信家で横柄な態度のイッショが、一瞬で黙ってしまう。イッショの求める姿はヒト型ではない。しかし、ハンドサインはヒト型だから出来る事でもあり、イッショにはどうする事も出来ない。その為にイッショの矜持を曲げることは出来ない。
「皆が同じだと、俺達の強みがないぞ。クオンの聴覚と同じで、魔力探知もイッショに任せてある唯一無二のスキルなんだから!視覚に頼るハンドサインなんて不要だろ」
いつもマウントを取りたがるがイッショだが、1度マウントを取られると打たれ弱さを見せてしまう。力のある精霊だが、それが魔石だけとなってしまった理由なのかもしれない。それを察してか、ナルキもフォローしてくる。
「そうだよ、探知スキルはボク達の生命線なんだから、その1つのイッショはもっと魔力スキルに特化しないとダメだよ」
「そうか、やっぱり俺様がいないとダメなんだな。不得意分野なんだけど、それでも1番使いこなせるんだから仕方ないな。まあ、俺様に任せておけ」
「やっぱり、精神の四大精霊は違うね!」
そう言いながらも、ナルキの作る蔦の手は器用に変化して、サムズアップポーズをつくっている事にイッショは気付いていない。
『そろそろ、狙いが分かってきそうよ』
そんな俺達の不毛なやり取りは、ムーアの言葉で終わりとなる。
さらにルークの動きが遅くなる。吸収スキルからは辛うじて逃れているが、オークが手を伸ばせば簡単に捕まってしまうように見える。それが出来ていないのは、オークが伸ばそうする手をタイミング良くカンテのサンダービームが邪魔しているからでしかない。そしてルークは一手毎に、明らかに追い詰められている。
「ルークを捕まえさせようとしてるな。それが狙いなのか?」
『掴まえさせたいのよ!』
遂にカンテの放つサンダービームでは、ルークを援護しきれなくなる。オークの顔の近くを狙えば、それだけ魔力を吸収されるリスクが高くなる。あえて、顔から遠い場所を狙ってはいたが、ルークを援護する為にやむを得ず放ったサンダルビームがオークに吸収されてしまう。
サンダービームを吸収したオークの傷は一気に回復し、遂にオークの手がルークを捕まえる事に成功する。放電しているルークを素手で掴んだのだから、オークの手も無事では済むことはない。それでも、逃がすまいと両手でしっかりと捕まえて離さない。
ルークの動きが少し遅くなり、オークの吸収スキルの範囲をギリギリで躱し始める。時折、吸い寄せられるようにふらつく姿は、余裕のある姿には見えない。
そして、カンテのサンダービームは最初こそオークの顔から離れた足首や手首を狙っていたが、ルークがふらつき始めると次第に狙いが変わる。足首や手首から、肘や膝を狙い始める。
近接戦闘を仕掛けたが、致命傷を与える事が出来ずに疲弊したルーク。それを援護して助けようとしているカンテ。カンテのサムズアップを見ていなかったら、今の状態はそうにしか見えない。
ここまで動きが変わっても、ウィプス達の狙いは分からない。最初こそ、持久戦に持ち込んでオークが疲弊するのか、ルークの動きに釣られたオークが隙を見せるのを待っているのかと思ったが、先にルークの運動量を落としてしまう。
「ムーア、狙いは分かるか?」
俺の言葉に、ムーアは首を横に振って返してくる。
「優秀な俺様が教えてやろう。ルークの魔力は変わっておらん。だから心配せんでも大丈夫!」
「知ってるぞ。カンテがサムズアップしてきたんだから、それくらい分かるだろ」
ブレスレットの中からでは全てが分かるわけでない。俺が見ているものは認識しているみたいだが、特にイッショの場合は視覚よりも魔力を感じ取って把握している。
それにウィプス達が成長したといっても、まだ大きさはラグビーボール程でしかなく、その小さな手がサムズアップするのは把握出来なかったのかもしれない。
「こうやってただろ!」
俺が親指を立てて、ポーズをつくって見せる。
「えっ、それって何だ。それが何かなんて、聞いた事もないぞ」
『イッショは昔の姿も犬だったのよね?』
「犬と呼ぶな。俺様の姿は今とは比べ物にならないくらいの、神々しい姿をしておっのだ」
『それじゃあ、サムズアップなんてできないでしょ。知らなくて当然よ、ヒト型じゃないと出来ないんだから』
「うむっ···。そうだな···」
いつも自信家で横柄な態度のイッショが、一瞬で黙ってしまう。イッショの求める姿はヒト型ではない。しかし、ハンドサインはヒト型だから出来る事でもあり、イッショにはどうする事も出来ない。その為にイッショの矜持を曲げることは出来ない。
「皆が同じだと、俺達の強みがないぞ。クオンの聴覚と同じで、魔力探知もイッショに任せてある唯一無二のスキルなんだから!視覚に頼るハンドサインなんて不要だろ」
いつもマウントを取りたがるがイッショだが、1度マウントを取られると打たれ弱さを見せてしまう。力のある精霊だが、それが魔石だけとなってしまった理由なのかもしれない。それを察してか、ナルキもフォローしてくる。
「そうだよ、探知スキルはボク達の生命線なんだから、その1つのイッショはもっと魔力スキルに特化しないとダメだよ」
「そうか、やっぱり俺様がいないとダメなんだな。不得意分野なんだけど、それでも1番使いこなせるんだから仕方ないな。まあ、俺様に任せておけ」
「やっぱり、精神の四大精霊は違うね!」
そう言いながらも、ナルキの作る蔦の手は器用に変化して、サムズアップポーズをつくっている事にイッショは気付いていない。
『そろそろ、狙いが分かってきそうよ』
そんな俺達の不毛なやり取りは、ムーアの言葉で終わりとなる。
さらにルークの動きが遅くなる。吸収スキルからは辛うじて逃れているが、オークが手を伸ばせば簡単に捕まってしまうように見える。それが出来ていないのは、オークが伸ばそうする手をタイミング良くカンテのサンダービームが邪魔しているからでしかない。そしてルークは一手毎に、明らかに追い詰められている。
「ルークを捕まえさせようとしてるな。それが狙いなのか?」
『掴まえさせたいのよ!』
遂にカンテの放つサンダービームでは、ルークを援護しきれなくなる。オークの顔の近くを狙えば、それだけ魔力を吸収されるリスクが高くなる。あえて、顔から遠い場所を狙ってはいたが、ルークを援護する為にやむを得ず放ったサンダルビームがオークに吸収されてしまう。
サンダービームを吸収したオークの傷は一気に回復し、遂にオークの手がルークを捕まえる事に成功する。放電しているルークを素手で掴んだのだから、オークの手も無事では済むことはない。それでも、逃がすまいと両手でしっかりと捕まえて離さない。
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