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オヤの街のハーフリングとオーク
239.再現②
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ロードは俺の持つ短剣を見て笑みを浮かべる。
口臭ブレスを抜けてきた、ボロボロになったローブを纏った男。凄い勢いで近付いてくるが、異臭ブレスを受けたなら武器や防具がまともな姿を保っているはずはない。
蟲人族の大鎌にオニ族の黒剣はどれもが厄介そうな武器に見える。しかし、ヒト族は両手で短剣を握っている。魔法は効かず、残されたのは光るだけの鉄製の短剣。武器というよりは、便利道具に近い得物など取るに足りない。
しかし、ヒト族はそれに縋るしかないのだろう。少し想定外ではあったが、特別心配する必要はない。
「見苦しいな」
ロードからは、憐れみ蔑むような感情が聞こえる。警戒はしていないが、だからといって遠慮して手を抜くことはなく、吸収しようとする力は強さを増してゆく。口臭ブレスから逃れる為の全力の加速に、さらにロードの吸引力が加わると、ロードの口へと導かれるように吸い寄せられる。
ロードに近付く程に、体が軽くなり地面を蹴る脚にも手応えがなくなってゆく。そして体が完全に宙に浮き上がってしまえば、もう回避することは出来ない。
その状況になれば、もう短剣を前に突き出しかないが、それをロードも避けようともしない。
周りの目も、俺の短剣とロードの吸収スキルの真向勝負に見えるだろう。そして短剣ならば丸呑みにしてしまうロードならば、明らかに俺の方が分が部が悪い。しかし、結果はそうならない。
口へと吸い込まれるよりも一瞬だけ早く、光る短剣と重ねるように持ったマジックナイフから斬撃が飛ぶ。
ゴブリンロードから吸収したスキルで、マジックナイフから放たれた無属性の斬撃は、ロードの口内でなく喉元にある魔石へと吸い込まれる。そして、光る短剣はその斬撃の軌跡をなぞるようにして喉元に突き刺さる。
魔石が砕かれた瞬間にロードの体はキラキラ消滅を始め、俺の体はロードの体を突き抜ける。
遠くから覗き見しているハーフリング族からでは、俺の光る短剣がロードを一瞬で消滅させたようにしか見えないだろう。
そして、今度はロードの体を突き抜けた俺とキングが対峙する。次の再現は、キングの中に蓄積された魔法を全て放出させて動きを止めること。
どれだけの魔法が蓄積されているかは分からないが、目の前のキングの体は北側のオークと比べると傷痕も少なくキレイな体をしていて、蓄積されている魔法は少ない。
それでも、何人もの冒険者によって蓄積された魔法を、一人で受けるには荷が重い。黒翼を広げて、一歩後退りする。全ての魔法を無効化し耐える必要はない。魔法を放出させてやればイイ。
「最後の仕上げとするか」
ポツリと呟くが、それは独り言ではない。覚悟を決めた精霊達への意思表示になる。アシスに転移し魔法に触れ、初めて言葉の持つ力を知った。同じ術者が魔法を行使するのであれば、詠唱魔法と無詠唱魔法であれば詠唱魔法の方が効果は優れている。
無詠唱魔法の使い道は、能力やスキルレベルを秘匿したり、魔法を発動するタイミングや悟られなくしたりと、上位者に多い戦い方になるだけ。言葉として術者の意思をより強く込める詠唱魔法が、無詠唱魔法より効果が優れているのは当たり前の事かもしれない。
だからこそ独り言のような呟きでも、言葉を大切にしている。そしてそれは、明確な意思表示となって精霊に伝わる。
しかし、俺の言葉に真っ先に反応したのは、目の前に居るオークキング。
「そなたは何者だ?黒き翼を持つ者よ」
オークの古の滅びた記憶で言葉は分かるが、俺が魔物の言葉を話せるのかという検証したことはない。だが、目の前のキングは俺の言葉に驚き、そして次の俺の言葉を待っている。
「ただのヒト族だ。この翼はオマケみたいなものだから気にするな」
「ふざけるな。古の滅びた記憶を持つ者!」
キングはロードが倒された事より、倒した俺達の方に興味を示し、俺が古の滅びた記憶を持つことも理解している。
「ハーピーロードの翼か。あの頑固な男が、終わりを選んだとは驚きだな。でも、その可能性も否定する事は出来んな」
その言葉に黒翼が応えるように、大きく広がる。
「おいおい、俺に話しかけておいて勝手すぎないか?」
「そなたが、話そうとせんから直接聞いたまでだ。後はオリジナルに話をしろ。早く離れないと巻き込まれるぞ!」
そう言うと、キングの目鼻や口·傷痕から光が漏れて、様々な魔法が溢れ出してくる。
口臭ブレスを抜けてきた、ボロボロになったローブを纏った男。凄い勢いで近付いてくるが、異臭ブレスを受けたなら武器や防具がまともな姿を保っているはずはない。
蟲人族の大鎌にオニ族の黒剣はどれもが厄介そうな武器に見える。しかし、ヒト族は両手で短剣を握っている。魔法は効かず、残されたのは光るだけの鉄製の短剣。武器というよりは、便利道具に近い得物など取るに足りない。
しかし、ヒト族はそれに縋るしかないのだろう。少し想定外ではあったが、特別心配する必要はない。
「見苦しいな」
ロードからは、憐れみ蔑むような感情が聞こえる。警戒はしていないが、だからといって遠慮して手を抜くことはなく、吸収しようとする力は強さを増してゆく。口臭ブレスから逃れる為の全力の加速に、さらにロードの吸引力が加わると、ロードの口へと導かれるように吸い寄せられる。
ロードに近付く程に、体が軽くなり地面を蹴る脚にも手応えがなくなってゆく。そして体が完全に宙に浮き上がってしまえば、もう回避することは出来ない。
その状況になれば、もう短剣を前に突き出しかないが、それをロードも避けようともしない。
周りの目も、俺の短剣とロードの吸収スキルの真向勝負に見えるだろう。そして短剣ならば丸呑みにしてしまうロードならば、明らかに俺の方が分が部が悪い。しかし、結果はそうならない。
口へと吸い込まれるよりも一瞬だけ早く、光る短剣と重ねるように持ったマジックナイフから斬撃が飛ぶ。
ゴブリンロードから吸収したスキルで、マジックナイフから放たれた無属性の斬撃は、ロードの口内でなく喉元にある魔石へと吸い込まれる。そして、光る短剣はその斬撃の軌跡をなぞるようにして喉元に突き刺さる。
魔石が砕かれた瞬間にロードの体はキラキラ消滅を始め、俺の体はロードの体を突き抜ける。
遠くから覗き見しているハーフリング族からでは、俺の光る短剣がロードを一瞬で消滅させたようにしか見えないだろう。
そして、今度はロードの体を突き抜けた俺とキングが対峙する。次の再現は、キングの中に蓄積された魔法を全て放出させて動きを止めること。
どれだけの魔法が蓄積されているかは分からないが、目の前のキングの体は北側のオークと比べると傷痕も少なくキレイな体をしていて、蓄積されている魔法は少ない。
それでも、何人もの冒険者によって蓄積された魔法を、一人で受けるには荷が重い。黒翼を広げて、一歩後退りする。全ての魔法を無効化し耐える必要はない。魔法を放出させてやればイイ。
「最後の仕上げとするか」
ポツリと呟くが、それは独り言ではない。覚悟を決めた精霊達への意思表示になる。アシスに転移し魔法に触れ、初めて言葉の持つ力を知った。同じ術者が魔法を行使するのであれば、詠唱魔法と無詠唱魔法であれば詠唱魔法の方が効果は優れている。
無詠唱魔法の使い道は、能力やスキルレベルを秘匿したり、魔法を発動するタイミングや悟られなくしたりと、上位者に多い戦い方になるだけ。言葉として術者の意思をより強く込める詠唱魔法が、無詠唱魔法より効果が優れているのは当たり前の事かもしれない。
だからこそ独り言のような呟きでも、言葉を大切にしている。そしてそれは、明確な意思表示となって精霊に伝わる。
しかし、俺の言葉に真っ先に反応したのは、目の前に居るオークキング。
「そなたは何者だ?黒き翼を持つ者よ」
オークの古の滅びた記憶で言葉は分かるが、俺が魔物の言葉を話せるのかという検証したことはない。だが、目の前のキングは俺の言葉に驚き、そして次の俺の言葉を待っている。
「ただのヒト族だ。この翼はオマケみたいなものだから気にするな」
「ふざけるな。古の滅びた記憶を持つ者!」
キングはロードが倒された事より、倒した俺達の方に興味を示し、俺が古の滅びた記憶を持つことも理解している。
「ハーピーロードの翼か。あの頑固な男が、終わりを選んだとは驚きだな。でも、その可能性も否定する事は出来んな」
その言葉に黒翼が応えるように、大きく広がる。
「おいおい、俺に話しかけておいて勝手すぎないか?」
「そなたが、話そうとせんから直接聞いたまでだ。後はオリジナルに話をしろ。早く離れないと巻き込まれるぞ!」
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