精霊のジレンマ

さんが

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オヤの街のハーフリングとオーク

260.ウィプスの救出

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 オークロードがラーキの根の壁に、開けた穴は最小限の穴でしかなく一人が通れる程の大きさでしかない。そして壁の厚みは百mくらいはありそうで、その穴を抜ける途中で攻撃されれば回避することは出来ない。

「ますは穴を広げるぞ」

 精霊樹の杖を構え魔力を流し、穴よりの少し大きい風の渦をつくる。するとそこに、フォリーがシェイドを流し始める。陽の光が届かない地下では陰属性のフォリーの力は一切の制限を受けることなく、実力を遺憾なく発揮出来る。

「お任せ下さいませ」

「行くぞ、ウィンドトルネードッ」

 フォリーに声を掛けるようにして、ウィンドトルネードを一気に解放する。ラーキの根のトンネルの内壁は、魔法が触れた瞬間に崩壊して抉り取られてゆく。
 しかし、想像以上にラーキの根の崩壊は早く、それはシェイドとウィンドトルネードの影響でない。消滅寸前だったラーキの根に、魔法の衝撃が加わったことで消滅が加速すしたにすぎない。

 穴を広げるつもりでしかなかったが、突如崩れ落ちてくるラーキの根を前に、今は消滅を待つことしか出来そうにない。しかし消滅を待つことの出来なかったルーク達は、天井付近まで舞い上がると雷を纏い、カンテが準備完了とばかりにサムズアップしてくる。

「分かったよ」

 カンテのサムズアップに応えると、一斉にラーキの根に体当たりをして穴を開け始める。そして出遅れたダークの紫紺の刀は、慌てたようにしてルーク達の後を追いかけ始める。

「フォリー、怒るなよ」

「いえ、ダーク兄様は明らかに油断していました。後でしっかりと、お話させてもらいます!」


 ルーク達の体当たりがラーキの壁に穴を開け、そこから光が漏れてくる。それルーク達の光でなく、中に居たウィプス達の光。そして、少し間を置いて溢れるようにしてウィプスが出てくる。

『間に合ったわね』

「残っているウィプスも多そうだな」

 そして、ムーアは逃げ出してくるウィプス達に容赦ない言葉を掛ける。

『あなた達、助けられた恩を忘れるんじゃないわよ。助かりたかったら、言うことを聞きなさい!』

 そしてブロッサとガーラが手際よくウィプス達を誘導しているが、今のところウィプス達との間に問題は起きていなさそうだ。

「ムーア、精霊との関係は相性が重要なんだろ」

『それは、召喚の話ね。今は違うでしょ』

「えっ、今やっている事は何なんだ?」

『あら、これは労働に対しての対価の話よ。ただで助けてもらいなんて、そんな都合のイイ話なんてないでしょ。命を助けられたのら、それなりの事をしてもらうわ』

 穴が広がり壁の崩壊が進むと、中で戦っている音が聞こえ、血の臭いが届き始める。
 まだ舞い上がったラーキの根や土埃が視界を邪魔して全貌が見えないが、徐々に中の様子が露になる。

 最初に見えてきたのは、血を流し倒れているの無数の人の姿。

「体が大きいな、ハーフリング族じゃないぞ!」

“聞こえる、鼓動の音は2つだけ”

 クオンが聞こえる鼓動を教えてくれる。それは倒れている者はすでに息絶えてまっている事を意味している。

『ハーフリング族は何をしているのかしら?』

 来る途中ではハーフリング族が殺されていたが、途中で逃げ道があったようには見えなかった。

 さらに視界が広がってゆくと、ルーク達の光に照らされて、オークロードと戦士が対峙している。戦士もロードに引けを取らない体格で、やはり戦っているのもハーフリング族ではない。

「感情の声もおかしいな」

『何がおかしいの?遂にロードは、狂ってしまったのかしら?』

「ロードは満足したような達成感で、悦に入っているよ。これが望んだ結果なんだろ。おかしいのは、戦士の方で、全く感情の声が聞こえない」


 徐々に土埃がおさまり始め、戦士の姿もハッキリと見えてくる。そしてムーアが戦士の頭に、種族の象徴とも言うべき角を見つける。

『見て、あの頭!』

「あの三本角はオニ族か?」

『ええっ、ソーギョクと同じ三本角。でもさらに大きさが違うわ』

 オニ族のことをムーアは良く知っている。三本角になれば族長クラスの力を持つが、目の前のオニの角はソーギョクよりも遥かに大きな角を持つ。
 しかし、感じられる雰囲気は全く違う。好戦的な種族なのに戦いの中にあっても、全く感情を感じさせない不気味さは、オニ族のものには見えない。

 そして俺たちの存在に気付いた、オニは俺たちの方を向く。

『あの目!オニ族だけど、もうオニ族ではないわ』
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