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タイコの湖
274.名のある精霊
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「えっと、それは···」
饒舌だったナレッジが、急に言い淀んでしまう。
「言いたくなかったら、別に言わなくてもイイんだぞ」
長い時間を生きる精霊には様々な過去がある。ましてや、ずっとアンクレットの中にいたのならば、それなりの理由があるのは分かる。
それに契約の効果は大きく、俺に不利益になることは出来ない。だから、ムーアが何も言わなければ特に気にするとこもない。
「このブレスレットとアンクレットを造ったのは、サージ様なんだよ」
「えっ、これはナレッジが造ったんじゃんなかったのか?」
「違うよ、僕はブレスレットとアンクレットの中に空間を造って、それを維持管理しているだけなんだ。素材や召喚については、サージ様しか分からない」
『“様”って呼ぶのは、名のある精霊ってことなのかしら?』
「そうだよ。サージ様は、僕に名付けしてくれたんだ」
ナレッジの言葉は、ムーアの表情を厳しいものに変えてしまう。
『ナレッジ、今も契約は生きているの?』
「安心して。サージ様がいなくなって、契約は終わってしまったよ。だから、今は僕がどんな名だったかも思い出せない」
いきなりの情報と分からない言葉に、俺は2人の話を理解することが出来ない。ただ、ムーアの表情と口調が緊迫した雰囲気を伝え、ナレッジは悔しさを滲ませている。
「ムーア、名のある精霊って何なんだ?それにナレッジが名付けされていたって、どういう意味なんだ?」
『カショウ、精霊には名がないのは知っているでしょ』
「ああ、知っている。だから、契約する時に名付けするんだろ」
『でもね、アシスには最初から名を与えられている精霊がいるのよ。原初の精霊や、それに近い一部の最上位の精霊達は、最初から名を持っているの』
「誰かの契約精霊って可能性はないのか?」
『それはあり得ないわ。名のない精霊は、他の精霊に名付けは出来ないの。名付け出来るのは、名のある者だけの特権なの』
そこで初めてムーアの顔が厳しくなった理由が分かる。
「契約が重複した場合はどうなる?」
『重複した契約出来ないわ。だけど、原初の精霊や最上位の精霊ならば、どんな力を秘めているか分からない。魔樹の森のキマイラよりも上位の精霊なんだから!』
「なかなか信用してもらえないかもしれないけど、僕の契約は終わってしまっているのは本当だよ」
『だけどサージ様が現れたら、ナレッジはどうするつもりなの?』
「···」
ナレッジは黙ってしまい、ムーアも厳しい態度を崩さない。
「ムーア、今そこまでは聞かなくてもイイんじゃないか?」
「いや、イイんだ。黙っていた僕が悪いんだよ。でもこれは、仮定での話でしかないんだ」
ナレッジはサージに名付けされ、ブレスレットとアンクレットの中に空間をつくった。しかし契約は解消されたが、サージが残したブレスレットとアンクレットの力は変わらずに残されている。
サージの存在が消滅すれば、契約は解消されブレスレットやアンクレットも力を失うはずなのに、今もブレスレットやアンクレットの力は失っていない。
「サージ様の身に何かあったに違いない。だけど、ブレスレットとアンクレットに力が残されているなら、僕はこれを守るんだ。それに、再びサージ様が姿を現してくれた」
『ナレッジ、でもカショウにしか姿を見ていないのよ。それにブレスレットに残された、サージ様の魔力の残滓のようなものかもしれないわ』
「それでもサージ様は、古の滅びた記憶を集める者が現れる事が分かっていたんだよ。それならば僕の使命は、このブレスレットとアンクレットの役目を果たす事だよ」
『ナレッジのする事は変わらないというわけね』
「それに、僕にムーアの契約を破る力はないよ」
恐らく一番の当事者である俺を置いてけぼりにされている、そして勝手に話が進み、落としどころまで見付けてから、ムーアは俺の方を向く。
「今さら何を言えばイイんだ?こっちが聞きたい事は山ほどあるんだけどな!」
『問題なかったならイイわ。それで聞きたい事って何かしら?』
「俺の前に姿を現したのは、少なくとも最上位以上の精霊でイイんだよな。それで、俺に言った事は信用出来るのか?」
「僕が保証するよ。サージ様は騙すような事はしない」
「でもな、あのウインクは真面目には思えないんだよな」
「···それは大丈夫だよ。あれがサージ様の大真面目なんだ」
饒舌だったナレッジが、急に言い淀んでしまう。
「言いたくなかったら、別に言わなくてもイイんだぞ」
長い時間を生きる精霊には様々な過去がある。ましてや、ずっとアンクレットの中にいたのならば、それなりの理由があるのは分かる。
それに契約の効果は大きく、俺に不利益になることは出来ない。だから、ムーアが何も言わなければ特に気にするとこもない。
「このブレスレットとアンクレットを造ったのは、サージ様なんだよ」
「えっ、これはナレッジが造ったんじゃんなかったのか?」
「違うよ、僕はブレスレットとアンクレットの中に空間を造って、それを維持管理しているだけなんだ。素材や召喚については、サージ様しか分からない」
『“様”って呼ぶのは、名のある精霊ってことなのかしら?』
「そうだよ。サージ様は、僕に名付けしてくれたんだ」
ナレッジの言葉は、ムーアの表情を厳しいものに変えてしまう。
『ナレッジ、今も契約は生きているの?』
「安心して。サージ様がいなくなって、契約は終わってしまったよ。だから、今は僕がどんな名だったかも思い出せない」
いきなりの情報と分からない言葉に、俺は2人の話を理解することが出来ない。ただ、ムーアの表情と口調が緊迫した雰囲気を伝え、ナレッジは悔しさを滲ませている。
「ムーア、名のある精霊って何なんだ?それにナレッジが名付けされていたって、どういう意味なんだ?」
『カショウ、精霊には名がないのは知っているでしょ』
「ああ、知っている。だから、契約する時に名付けするんだろ」
『でもね、アシスには最初から名を与えられている精霊がいるのよ。原初の精霊や、それに近い一部の最上位の精霊達は、最初から名を持っているの』
「誰かの契約精霊って可能性はないのか?」
『それはあり得ないわ。名のない精霊は、他の精霊に名付けは出来ないの。名付け出来るのは、名のある者だけの特権なの』
そこで初めてムーアの顔が厳しくなった理由が分かる。
「契約が重複した場合はどうなる?」
『重複した契約出来ないわ。だけど、原初の精霊や最上位の精霊ならば、どんな力を秘めているか分からない。魔樹の森のキマイラよりも上位の精霊なんだから!』
「なかなか信用してもらえないかもしれないけど、僕の契約は終わってしまっているのは本当だよ」
『だけどサージ様が現れたら、ナレッジはどうするつもりなの?』
「···」
ナレッジは黙ってしまい、ムーアも厳しい態度を崩さない。
「ムーア、今そこまでは聞かなくてもイイんじゃないか?」
「いや、イイんだ。黙っていた僕が悪いんだよ。でもこれは、仮定での話でしかないんだ」
ナレッジはサージに名付けされ、ブレスレットとアンクレットの中に空間をつくった。しかし契約は解消されたが、サージが残したブレスレットとアンクレットの力は変わらずに残されている。
サージの存在が消滅すれば、契約は解消されブレスレットやアンクレットも力を失うはずなのに、今もブレスレットやアンクレットの力は失っていない。
「サージ様の身に何かあったに違いない。だけど、ブレスレットとアンクレットに力が残されているなら、僕はこれを守るんだ。それに、再びサージ様が姿を現してくれた」
『ナレッジ、でもカショウにしか姿を見ていないのよ。それにブレスレットに残された、サージ様の魔力の残滓のようなものかもしれないわ』
「それでもサージ様は、古の滅びた記憶を集める者が現れる事が分かっていたんだよ。それならば僕の使命は、このブレスレットとアンクレットの役目を果たす事だよ」
『ナレッジのする事は変わらないというわけね』
「それに、僕にムーアの契約を破る力はないよ」
恐らく一番の当事者である俺を置いてけぼりにされている、そして勝手に話が進み、落としどころまで見付けてから、ムーアは俺の方を向く。
「今さら何を言えばイイんだ?こっちが聞きたい事は山ほどあるんだけどな!」
『問題なかったならイイわ。それで聞きたい事って何かしら?』
「俺の前に姿を現したのは、少なくとも最上位以上の精霊でイイんだよな。それで、俺に言った事は信用出来るのか?」
「僕が保証するよ。サージ様は騙すような事はしない」
「でもな、あのウインクは真面目には思えないんだよな」
「···それは大丈夫だよ。あれがサージ様の大真面目なんだ」
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