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タイコの湖
299.変質した魔力
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「魔樹の森よりも、魔力が濃いんじゃないか?」
魔樹の森のように黒くて邪気を含んだ魔力ではなく、無色透明で一見しただけでは分からない。しかし感じられる魔力は、それよりも濃いと感じられる。
「この水を飲むだけでも魔力が回復しそうだな」
ムーアも興味津々で、溜まった水を手に掬い眺めている。
『でも、魔力がこんな簡単に水に溶け込むなんて見たことがないわ。これがタイコの湖の水が、御神酒へと昇華出来る秘密なのかもしれないけど』
そして俺は、恐る恐る結界に手を触れてみる。湖の水を近付けないのであれば、何かしらの抵抗があるはずだが、結界に触れている手には一切の抵抗はなく、それどころか触れている感触さえない。
思いきって結界の中に手を入れてみるが、やはり抵抗を受けることなく、スッと手が入ってしまう。
しかし、嫌な感じがして慌てて手を引き抜く。
『どうしたの?』
「魔力を吸収しそうになった。この魔力は生きているのか?」
祠の結界の中に手を入れた瞬間、勝手に魔力が侵入してくるような感じがする。湖の水に魔力が溶け込んでいるのではなく、魔力自体が侵入出来るものを探し求めているような気さえする。
「コール、この湖には他の魔物は居たか?」
「ウチしかおらんよ」
「本当か?逃げだした魔物も居ないよな!」
「ウチの言うことを疑ってない?本当におらんかったよ!」
湖の一面を覆っていたスライムを通して、コールは俺たちの存在を把握してた。だから逃げ出す魔物がいれば、間違いなく発見している。
「何もしなくても魔力が強制的に入り込んでくるのに、魔物がポップアップしないなんておかしくないか?」
『カショウ、魔物はポップアップしていないと決めつけるのは間違いよ』
「じゃあ、ポップアップした魔物は何処に消えたんだ?」
そして、俺とムーアの視線は祠へと向かう。
『「祠の中」』
しかし結界の中に入れば、魔力が俺の中へと入り込んでくる。魔力を消費したい俺にとって、それは好ましくない環境でしかない。
『私達は問題ないわよ。カショウの魔力を糧とする契約だから、この魔力を吸収出来ないわ』
「ソースイ達も一緒か?」
『そうね、この魔力の影響は受けないわ』
ムーアが結界の中に手を入れてみるが、祠の中の魔力に動きはない。今度は、影の中からポーションを取り出して近付けてみると、祠の中の魔力はポーションへと吸い寄せられてゆく。
「この魔力は、興味深いワネ。契約で体に取り込めないのが残念だけど、何か秘密が隠されていそウヨ」
「僅かに違う、変質した魔力」
気付けば好奇心に耐えられなくなった、ブロッサとガーラは結界の中に入ってしまっている。そうなると、残るは俺だけの問題になる。
「もう一度、カショウの番ヨ」
『時間がないわよ。時間が経てば水位は戻るわ』
チュニックさえ無事であれば、魔力吸収を阻害してくれるかもしれない。だが、ボロボロになったチュニックは自身を回復させるために力を使い、今まで通りの効果は期待出来ない。
しかし、チュニックの回復を待てば、湖の水は再び嵩を増して祠の姿を隠してしまう。
ゆっくりと結界に手を近付けると、結界の中の魔力が俺の方へと集まり始める。ここまでハッキリとした違いが分かれば、これ以上の検証をする必要はない。しかし、祠の中に入るということは既定路線であるようで、ムーアもブロッサも黙って検証を見守っている。
「後は、イッショと俺の頑張り次第か」
「カショウ、俺様を勝手に巻き込むな!」
「頼りにしているから、イッショの名前を先に持ってきたけどダメだったか。それならシナジーに頼んでみるよ。魔力操作なら、シナジーの得意分野だしな!」
「待て、少しだけ俺様の実力を見せてやる。少しだけだからな!」
イッショが魔力操作を行うと、俺の周りに漂う残留魔力を編成し始める。そして残留魔力は、球状の結界をつくって俺を包み込む。
祠の中の魔力は俺へ寄ってくるが、イッショの張った結界に邪魔されて、それ以上は近付いて来れない。しかし結界の周りにはビッシリと魔力が集まり、いつその魔力が襲いかかってくるか分からない緊迫感が付きまとう。
「イッショ、本当にこれで大丈夫なのか?」
「チュニックが回復するまでは、これくらいでも十分だろう。それまでは、魔力探知の精度は落ちてしまうが、それは我慢するしかないがな」
『さあ、解決したなら先に進みましょうか!』
魔樹の森のように黒くて邪気を含んだ魔力ではなく、無色透明で一見しただけでは分からない。しかし感じられる魔力は、それよりも濃いと感じられる。
「この水を飲むだけでも魔力が回復しそうだな」
ムーアも興味津々で、溜まった水を手に掬い眺めている。
『でも、魔力がこんな簡単に水に溶け込むなんて見たことがないわ。これがタイコの湖の水が、御神酒へと昇華出来る秘密なのかもしれないけど』
そして俺は、恐る恐る結界に手を触れてみる。湖の水を近付けないのであれば、何かしらの抵抗があるはずだが、結界に触れている手には一切の抵抗はなく、それどころか触れている感触さえない。
思いきって結界の中に手を入れてみるが、やはり抵抗を受けることなく、スッと手が入ってしまう。
しかし、嫌な感じがして慌てて手を引き抜く。
『どうしたの?』
「魔力を吸収しそうになった。この魔力は生きているのか?」
祠の結界の中に手を入れた瞬間、勝手に魔力が侵入してくるような感じがする。湖の水に魔力が溶け込んでいるのではなく、魔力自体が侵入出来るものを探し求めているような気さえする。
「コール、この湖には他の魔物は居たか?」
「ウチしかおらんよ」
「本当か?逃げだした魔物も居ないよな!」
「ウチの言うことを疑ってない?本当におらんかったよ!」
湖の一面を覆っていたスライムを通して、コールは俺たちの存在を把握してた。だから逃げ出す魔物がいれば、間違いなく発見している。
「何もしなくても魔力が強制的に入り込んでくるのに、魔物がポップアップしないなんておかしくないか?」
『カショウ、魔物はポップアップしていないと決めつけるのは間違いよ』
「じゃあ、ポップアップした魔物は何処に消えたんだ?」
そして、俺とムーアの視線は祠へと向かう。
『「祠の中」』
しかし結界の中に入れば、魔力が俺の中へと入り込んでくる。魔力を消費したい俺にとって、それは好ましくない環境でしかない。
『私達は問題ないわよ。カショウの魔力を糧とする契約だから、この魔力を吸収出来ないわ』
「ソースイ達も一緒か?」
『そうね、この魔力の影響は受けないわ』
ムーアが結界の中に手を入れてみるが、祠の中の魔力に動きはない。今度は、影の中からポーションを取り出して近付けてみると、祠の中の魔力はポーションへと吸い寄せられてゆく。
「この魔力は、興味深いワネ。契約で体に取り込めないのが残念だけど、何か秘密が隠されていそウヨ」
「僅かに違う、変質した魔力」
気付けば好奇心に耐えられなくなった、ブロッサとガーラは結界の中に入ってしまっている。そうなると、残るは俺だけの問題になる。
「もう一度、カショウの番ヨ」
『時間がないわよ。時間が経てば水位は戻るわ』
チュニックさえ無事であれば、魔力吸収を阻害してくれるかもしれない。だが、ボロボロになったチュニックは自身を回復させるために力を使い、今まで通りの効果は期待出来ない。
しかし、チュニックの回復を待てば、湖の水は再び嵩を増して祠の姿を隠してしまう。
ゆっくりと結界に手を近付けると、結界の中の魔力が俺の方へと集まり始める。ここまでハッキリとした違いが分かれば、これ以上の検証をする必要はない。しかし、祠の中に入るということは既定路線であるようで、ムーアもブロッサも黙って検証を見守っている。
「後は、イッショと俺の頑張り次第か」
「カショウ、俺様を勝手に巻き込むな!」
「頼りにしているから、イッショの名前を先に持ってきたけどダメだったか。それならシナジーに頼んでみるよ。魔力操作なら、シナジーの得意分野だしな!」
「待て、少しだけ俺様の実力を見せてやる。少しだけだからな!」
イッショが魔力操作を行うと、俺の周りに漂う残留魔力を編成し始める。そして残留魔力は、球状の結界をつくって俺を包み込む。
祠の中の魔力は俺へ寄ってくるが、イッショの張った結界に邪魔されて、それ以上は近付いて来れない。しかし結界の周りにはビッシリと魔力が集まり、いつその魔力が襲いかかってくるか分からない緊迫感が付きまとう。
「イッショ、本当にこれで大丈夫なのか?」
「チュニックが回復するまでは、これくらいでも十分だろう。それまでは、魔力探知の精度は落ちてしまうが、それは我慢するしかないがな」
『さあ、解決したなら先に進みましょうか!』
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