【完結】クロクマ少年~あいとゆうきの物語~中身は美少年!?

志麻友紀

文字の大きさ
50 / 65
クロクマ少年2~恋と陰謀の物語~中身は魔女?でも男の子!

第4話 噂の影 その2

   



 赤狼騎士団が夜警に加わっても、事件は起き続けた。
 貴族やブルジョアの女性達は夜の外出を控えるようになったが、そうは出来ない女達もいる。

 夜に働く女達だ。酒場の女給に歓楽街の花売り娘、流しの歌い手に、舞台あがりの帰宅途中の踊り子。そして、夜の薄暗い街路こそが商売の場所の街娼達。

「……今あげたのが、すべての被害者だ」

 宰相の執務室。マクシが娼婦イベルダと最後の名を読み上げて告げる。

「彼女は街の街路で冷たい骸になって横たわっているのが発見された」

 「最初の死亡者がとうとう出たか」とのグラムファフナーの言葉にマクシか「ああ」とさすがに深刻な顔でうなずく。
 他の被害者の女性達も眠ったまま目覚める気配もないという。

 「次の死人が出ないことを祈るばかりだ」というマクシの言葉にグラムファフナーはうなずく。
 しかし、楽観は出来ないことはわかっていた。今まで犯人は死人が出ないよう“手加減”していた。だが、一人殺してしまえば、あとは大差がないとばかり命を奪い続ける可能性がある。

 テティは今、この執務室にはいない。午後のこの時間はヘンリックの剣術の稽古の相手をしている。それをわかっていてマクシも報告に来たのだろう。

「死人が出たことで、街の噂が一気に広まった。酒場じゃ昼間っからこの話で持ちきりだそうだ」

 苦々しい顔でマクシが言う。

「それも月の魔女か?」
「ああ、その正体までまことしやかに語られているらしい」

 マクシにしては珍しく話をぼやかしたが、その中身など訊かなくても、グラムファフナーには察しがついた。
 月の魔女の正体は、宰相の婚約者である噂の月色の姫君だと。
 「噂の出所を探るか?」そう訊ねるマクシにグラムファフナーは静かに首を振った。

「風聞などとがめたところで抑えようもない。放置しておけば勝手に消える。
 酒場では王侯の面白おかしい醜聞のひとつやふたつや百は語られるものだ」

 「百は出過ぎだと思うがな」とマクシは苦笑するが「だがわかる」とうなずく。

「騎士団の屯所で若い者の部屋の前を通り過ぎて、自分の名前が聞こえても、聞こえないふりをするのが上官ってもんだろ」
「おや、赤狼騎士団の団員は一騎士まですべて、団長に心酔していると思っていたが」
「訓練がキツくて鬼だなんて聞いた日には、倍にしてやってるよ」

 「それは言われるはずだ」とグラムファフナーはマクシと顔を見合わせて笑いあう。

「しかし、今回の噂はただ消えるのを待つだけじゃすまされないだろう?」

 ひとしきり笑ったあと訊ねたマクシに、グラムファフナーはうなずく。たしかに今回の噂には明かなこちらへの悪意を感じると、先日言ったのはグラムファフナーだ。
 目的もはっきりしている。宰相であるグラムファフナーの評判を落とし、あわよくば失脚まで狙っているかわからないが。

 しかし。

「いまだ相手の姿がわからないのでは手のうちようもない」

 夜警の数を増やして、歓楽街を重点的に回っているというのに、相手の影も形も見えないのだ。
 魔女というのも噂に過ぎない。相手の性別さえわかっていない。

「だいたい、うち赤狼騎士団の団員の耳と鼻をもってしても気配さえ掴ませないってのがな」

 獣人達は当然耳も鼻もいい。そのうえに国一番の精鋭騎士団がいつも被害者が襲われたあとに駆けつけるというのは。

「魔道の匂いがするな」
「俺もそれは思った。俺も騎士団員も剣や腕っ節はともかく、そっちに関しては全くの門外漢だ」

 結界を張ってしまえば、獣人の鋭敏な耳や鼻をもってしてもそれを遮断出来る。

「それで考えていることがある」

 グラムファフナーは口を開いた。






あなたにおすすめの小説

小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)

九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。 半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。 そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。 これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。 注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。 *ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21) ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

悪の策士のうまくいかなかった計画

迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。 今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。 そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。 これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに?? 王子は跪き、俺に向かって言った。 「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。 そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。 「ずっと好きだった」と。 …………どうなってるんだ?