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【5】ひと夜、あけて その1
しおりを挟むぽかぽかお日様みたいに温かい。
屋根裏部屋の窓から差し込む日差しかな? と思う。朝なら起きなきゃ……と。
「う…ん……」と声をあげたら「そろそろ起きるかい?」と言われた。孤児院のファーザー・ルークかな? と思う。朝にちょっと弱いフェリックスを子供の頃は「お寝坊さんだね」と優しく起こしてくれた。
「今、何時?」
「ああ、もうじき正午だが、朝食ではなく昼食を用意してもらわないとな」
「ええっ! もうお昼!」
フェリックスはベッドから飛び起きて、そこがパン屋の屋根裏の下宿でも、記憶の中にある孤児院の大部屋でもないことに一瞬混乱した。
天蓋付きのベッドなんて寝たこともないし、開いたカーテンの向こうに見える部屋の景色だって、お城の中のようだ。
それよりなにより、目の前で同じベッドの上半身を起こしたウォーダンが裸であることに「え? え?」と慌てて、かあああぁああっと赤くなった。
一瞬にして蘇る昨日の記憶。自分は目の前の美形とあんなことやこんなことを……。
思わず再びシーツの頭から被って潜り込む。そのシーツをぺろりとめくられて「思い出した?」と朝じゃない、昼の光のなか微笑むウォーダンにこくこくとうなずく。
そして、寝室の外がギャアギャアとなにやら騒がしいのに気付いた。あの鳴き声は。
「チィオ?」
「ああ、君のことをずいぶん心配していたようだからね。ロンユンがおさえていたみたいだが」
「いいよ、入っておいで」とウォーダンがいうと、隣の部屋から短い足をパタパタと足音をさせて飛びこんできたのは、灰色のペンギンの雛だ。その後ろから蒼いサラマンダーがついてくる。
ベッドによじ登ろうとぴょんぴょんしてるチィオを抱きあげてやる。ロンユンはひと跳びで軽くベッドの上にのぼってきた。チィオにむかい顔を近づける。
「ピィ!」
チィオは鳴いて、ぺしぺしとその短い手で鼻先を叩いている。が、初対面のときと同様、サラマンダーの頑丈な体には痛くもかゆくないらしい。ティオの渾身の攻撃? にもめげずに、顔をさらに寄せて。
ぺろん。
とその顔を舐めた。
「ピィィイイイイ!」
「チィオ、落ち着いて」
さらに怒り短い手足をばたつかせるチィオをなだめるようにフェリックスはその背を撫でる。
「仲がいいな」
「これがですか?」
くすくすと笑うウォーダンにフェリックスは首を傾げる。チィオの態度はどう見たって威嚇しているようにしか見えない。そしてロンユンは平然としている。主人に似て器の大きいアニマルだなと思う。
「ボンド契約の印が出てるだろう?」
「あ……ホントだ。これが?」
ウォーダンがロンユンの左の角をつついて示す。そこには金色の輪があった。
そして、ぺしぺしとロンユンの鼻面を叩いているチィオの左のフリッパーの根元にも、金色の輪がきっちりとはまっている。
運命といわれるセンチネルとガイドが、ボンド……専属契約を結ぶと、アニマル達に印があらわれる。それはおそろいの首輪だったりリボンだったり、そして自分達の場合は金色の輪のようだ。
「……僕みたいな落ちこぼれが、本当にあなたのボンドでいいんでしょうか?」
フェリックスは恐る恐る訊ねた。逆に印を見て不安になったのだ。それにウォーダンが軽く目を見開く。
「落ちこぼれ?」
「……僕は覚醒するのがすごく遅かったんです」
十五歳の誕生日の朝、いきなりチィオが枕元にいた。慌てて抱きかかえてファーザー達に見せにいった。それが当初、アニマルだとわからなかったぐらいで。
ファーザー・ナイトが一目でアニマルだと気付いて「おめでとう」と笑顔でぽんと肩を叩いてくれた。そしてファーザー・ルークもまた微笑んで、「おめでとう」といってくれた。
「フェリックス、それは祝福された力だ」
本来ならば十五で出るはずの孤児院に十八までファーザー達はおいてくれて、ガイドとしての必要な基礎知識や教養を代わる代わるおしえてくれた。それで奨学金を受ける試験に合格して、学園に入ることが出来た。
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