落ちこぼれが王子様の運命のガイドになりました~おとぎの国のセンチネルバース~

志麻友紀

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【13】プリンセス失格 その1

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 フェリックスが目を覚ましたとき、プリンセスの塔の寝室に移されていた。傍らにはホフマンがいて、話をきいたら自分は一日眠っていたという。目の下にうっすらクマがあって、寝ずに看病してくれたことがわかった。
 その後、呼ばれた医師により身体にも精神にも、なんの異常もないと診断された。一緒にやってきたメディには「無茶をして」と怒られたけれど。

「暴走してるセンチネルの精神に魂ごとダイブするなんて!」
「ウォーダンは無事だとききましたけど……」

 目を覚ましてホフマンに一番最初に確認したのがそれだった。医師は「ああ」と。

「君のおかげで暴走は収まってね。だけど、心身の疲労がひどくて、まだ目を覚ましていない」
「……そうですか」

 フェリックスは傍らのチィオを見た。そのチィオの左腕には金色の輪が無かった。
 ボンドとしての絆は失ったまま……。
 大事をとって一日休んで、翌日にフェリックスは学園へと登校した。
 ウォーダンはまだ眠ったままだ。目覚める気配はない。

 上の空で午前の講義を受けて、お昼はカフェテリアに向かった。お腹はあまり空いてなかったけれど「お昼を抜くなんて考えずに、少しでもいれてくださいませ」とホフマンにいわれている。たしかに休んだ昨日も、今朝もあまり食べられなくて美味しい料理を残してしまったから。
 スープにプリン一個って怒られるかな? と思いつつ、それだけトレイに乗せて空いてる席についた。個室には行かない。ウォーダンがいないというより、彼がいないのに自分が使う必要はないから。

「あんな大事件起こしておいて、よくも平気でのこのこ学園に顔を出して、ご飯を食べられるね」

 スープを飲んで、プリンにさじをいれたところで、数人に囲まれた。ネラとその取り巻きだ。
 スープとプリンがご飯かな? とは返す気分でもなく、もくもくとプリンを食べる。

「プリンスとあなたが起こした“大事故”のせいで、他のセンチネルもガイドも危うく巻き込まれるところだったんだよ」

 「あ、僕と組んでたスコルは競技会で当然一位になったよ。“幸運”にもプリンスの暴走に巻き込まれないでゴール出来たからね」と自慢げにネラが続けた。

「他の参加者もプリンスの“暴走”前の得点が採用されたけど、プリンスはあなたのガイドが未熟なせいで暴走して、得点はすべてなしの最下位だ」

 ネラは他人の不幸はおいしいとばかり、いやらしく赤い口許をゆがませる。

「プリンスが最下位なんて前代未聞ってきいたよ」
「どっかの誰かと組んだせいで」
「やっぱり、灰色の雛の落ちこぼれプリンセスなんだよ」
「落ちこぼれプリンセスっておかしい!」

 なんてネロ後ろの取り巻きたちも、口々にいいあいケラケラと軽薄な笑い声をあげる。

「お前ら! 黙って聞いてれば、ずいぶんといいたいことをいってるな!」

 声をあげたのは意外な人物。ピンクのオウムを肩にのせた、ピンク頭のマルディーヌだ。彼はネラ達をにらみつける。

「プリンスの事故の原因はまだわからないっていうのに、いい加減なことをいうな!」
「みんな噂してますよ。プリンスの暴走の原因はそちらの“偽”プリンセスのせいだって」
「“偽”だって!? だいたい、これまでの発言といい、プリンスとプリンセスに対する不敬だぞ!」

 “不敬”とのマルディーヌの言葉に、ネラの取り巻き達はマズイという表情で顔を見合わせる。中間試験の件で以前、講師のメディから彼らはプリンセスとなったフェリックスへの不用意な発言で、調査書の査定に響くぞと注意されたのだった。
 それはネラもだが、彼は変わらず不敵な微笑みを浮かべたまま。

「僕はプリンスに対して不敬な発言なんてしてませんよ。そちらのプリンセス……ああ、彼はもうプリンセスなんかじゃありませんね。彼のアニマルからはプリンスのボンドである証が消えているんですから」

 たしかにフェリックスの足下にいるチィオの左のフリッパーからは金色の輪が消えている。
 「プリンスのボンドじゃないのに、プリンセスなんておかしいですよね?」とネラにいわれて、マルディーヌが言葉に詰まる。
 フェリックスは無言で椅子から立ち上がりカフェテリアをあとにした。「逃げるの?」とネラの声が背にかかるが、彼はそれ以上追いかけてくることはなかった。
 別に逃げたわけではなく、プリンを食べ終わったからだ……とフェリックスは答える気分ではやっぱりなかったけど。

「おい、待てよ!」

 ネラの代わりではないだろうが、マルディーヌがあとを追いかけてきた。




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