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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【5】父と息子と恋人のおじさん その2
しおりを挟む月一の王宮で開かれる夜会だが、今月は国の祝いの行事とやらが二つ重なったことで、半月とたたずにおじさんは“整えられる”こととなった。
大広間に招待客がなだれこむ前。今や王位継承第2位ということで個別に用意された控えの間にてジークに訊かれた。
「昨日、陛下があなたのところにいらしたようだな」
父と息子の距離をコウジが感じるのは、ジークのこんな言葉だ。
彼がフェルナンドを陛下と呼びかけ、父王ともコウジに話すことはあっても、けして父上とは彼は呼ばない。
「ああ、新しく俺が作ったとんちきな課がどんななのか、視察にいらしたのさ」
そこで職位を授けるだの、屋敷を与えるからジークの家を出ろだの、まして爵位つきの貴婦人との結婚を示唆されたなんてことは、言わない。
ジークは母エノワールが死んで以来、一度も屋敷をおとずれることのなかった父王に対して、コウジにさえ恨み言の一つもこぼすことはなかった。
むしろ、臣下の一人として王に対しての礼節を持った態度を崩すことはない。
まあ、だからこそコウジは、この親子がこじれることを危惧して、なにも言わないことに決めたのだ。
それにだ。ジークにしたってフィルナンドから、結婚話を持ちかけられたことを、コウジに話していない。
少しは面白くないという気持ちがないとは、いえなかった。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
その男爵令嬢はおじさんから見れば十分に若かったが、婚期を少し逃した行き遅れ……とは言わないまでも、すこしとうが立ったご年齢だったらしい。
それはともかくとして、気分が悪いと自分にいきなりもたれ掛かってきて、小部屋へと引っぱりこまれたあげくに、ドレスの胸元を自分で自ら引き裂いて、悲鳴を上げられたのにまいった。
当然、悲鳴を聞いた侍従や貴族達が駆けつけてくる。さらには娘の父親である男爵まで現れて、「娘と、そちらの盟友殿の名誉のために、みなさま、どうぞこの場の方のみで、ご内密に」と言うのが、実にわざとらしく聞こえた。
そこにフィルナンド王にジークも騒ぎの知らせに現れた。
「コウジ様が……盟友様が……」と引き裂かれたドレスの胸元を押さえながら、娘が涙ながらに訴える。おいおい本物の涙まで流して演技派だな。
「わたくし、たしかにコウジ様に憬れて、夜会で何度かお話させていただきましたわ。でも、いきなり部屋に連れ込まれてこんな、こんな……突然」
いいや、嬢ちゃんとは一度も話したことはないんだが……とはコウジは声に出さずにぼやく。「なんてことだ」と父親の男爵は大仰に言い。
「このような不名誉。本来ならば我が男爵家の敵と断罪するところですが、盟友殿はこの国を救ってくれたお方。
二人の将来のために、方々にはこのような醜聞はなかったことに。
そして娘の名誉のために、盟友殿は責任を取ってくださるのでしょうな?」
つまりは手を出してもいない娘の責任をとって、結婚しろと言いたいのだろう。小部屋の入り口いっぱいに集った貴族たちも、一同に「それならば……」なんて声をあげている。
おそらく悲鳴を聞いてかけつけた風を装っているこの野次馬達もグルだろう。
フィルナンド王はこの事態の急展開にあきらかに戸惑っていて、ジークは沈黙しているが相変わらずのなにを考えているかわからない鉄面皮だ。
だがコウジを見る剃刀色の瞳に宿っているのは明らかな怒気だ。こんな奴らに言いたいこと言わせてないで、さっさと出せと言っている。
散々、相手に手札出させて勝ったと有頂天にさせてから、引っ繰り返すのが面白いんだろうが。と、コウジは思ったが。
「盟友殿? なにを黙ってらっしゃるのですか? この責任をどう取られるおつもりか?」
父親の男爵がたたみ込むように責め立てるのにコウジはゆっくり口を開く。
「したこともないことに責任はとれねぇなあ」
「なにをおっしゃる! 娘の涙と破れたドレスがなによりの証拠!」
「自由自在に涙を流せるってのは、なによりの女の武器だけどな。こっちにはそれ以上の証拠がある」
コウジは自分の衿元の銀の飾り、そこにはまる青い小さな石を指さした。
「ここに映し鏡の魔石がはめ込んである。その嬢ちゃんに気分が悪いと寄りかかられて、この部屋に連れ込まれた瞬間に、俺の魔力で作動させた」
コウジの言葉と同時に男爵親子の顔色が蒼白となる。魔石は娘の行動と音声をしっかり記録しているはずだ。自らドレスを破り、同時に悲鳴をあげた。
「さて、この場にいる皆さんとこの石が記録した画像を映し鏡で見てもいいんだが、そうなると、そっちの嬢ちゃんはますます“不名誉”になるんじゃないか?」
あとできいた話では、行き遅れの娘のところにも一代子爵となった部屋住みの王子との結婚話が、ちらほらと来ていたという。
が、少し婚期を逃したとはいえ美貌に自信がある彼女としては、そんな王子達のどれかとの結婚は不満だった。
そこで目をつけたのが勇者の盟友。この際、おじさんでも構わないというより、政略結婚が普通の貴族なのだ。相手の爵位が高ければ年齢はこの際関係はない。
コウジは異世界人ではあるが、王がジークとコウジの噂を憂えて、彼にそれなりの爵位を授けるつもりだとの話は、どうも周囲に漏れていたらしい。
追い詰められた娘は「すべてはお父様に命じられたこと」と今度は本当に泣き崩れて、男爵はといえば「わ、私一人でこのような大それたこと、考えられません。これは……」と口にしかけてた。が、彼に駆け寄った一人の子爵が彼の耳元でなにごとか耳打ちした。
コウジは魔法の力でしっかり内容は聞き取ったが。
「方々のお名前を口にすれば、宮廷での席を失うだけではすみませんぞ」と。
男爵はとたん口をつぐみ、娘ともどもその場から侍従達に引き立てられていった。内々の騒動とのことで彼らの爵位はそのままだったが、宮廷からは去ることになった。華やかな王都を離れて、所領に蟄居ということだ。これは宮廷貴族としては凋落したことを示す。
男爵令嬢は結局、一代子爵の王子の一人と結婚したとあとで風の噂で聞いたが、それよりもだ。
令嬢の起こした事件よりも、このあとのことのほうがのちの宮廷の語りぐさ。そしておじさんの黒歴史の一つとなるのだが。
「ジーク?」
大股に自分に近寄ってきたジークに肩をつかまれて、コウジは声をあげかけたが、それと同時に唇を塞がれた。
「う、うんっ!」
王様とみんなが見ているまえでなにをする! と言いたいが、その前に舌をからめられてその根元がしびれるほど思いきり吸われた。貪るような口付けに頭が酸欠でぼうっとなったところで、ようやく解放された。
……と思ったら今度はおじさんの痩身を王子様は軽々肩に担いでいた。おい、この体勢、頭に血が昇るぞ。
「陛下、こういうことですので、今後、私達にはおかまいなく」
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