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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【6】高慢と偏見とおじさん※ その1
しおりを挟む「うわっ!」
王都郊外のジークとコウジの邸宅。寝台へと放り投げられて、コウジは声をあげた。
「なに、お前、怒ってんの?」
無言のまま、自分に馬乗りになるジークにコウジは訊いておきながら、返事を待たずに口を開く。
「だいたいな、王様にバラしてどうする? あんなみんなが見てる前で。今頃、王宮は騒然となっているぞ!」
どころの話ではない。いままでは曖昧にごまかしてきた自分達の関係が公然となってしまったのだ。
「それがどうした? 男女の関係よりは遥かに数が少ないとはいえ、同性同士の恋情は禁忌などではない。結婚も許されている」
そうなのだ。なんとこの世界、そういうことには寛容というか、女神アルタナは自らがつくりしすべてに慈愛を注いでいるとやらの教えのおかげで、差別が割合にない。
割合といったのは、それでも男女よりは少数派であるし、跡継ぎが必要な上位の階級となれば問題になる。
とくに貴族、さらにいうなら王族ともなればだ。
「たしかに宗教的にも法律的にも許されているんだろうな。だが、お前は序列2位の王子だぞ。その相手がこのおじさんなんてどう考えたって、王様も元老院の石頭の爺さん達も許さないだろう?」
「私達の事柄に誰の許しがいる? あなたは『あえて世間に話すことではない』といつも言い続けていた。それが今のあなたの気持ちならばと、私も黙っていた」
「それが今の正解だと俺は思っていたんだよ。
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だから、ジークの結婚が“餌”になるならば……と。
「そう、あなたの考えも初めからわかっていて、私はそれを承知した。
だが、あなたは本当にいいのか? もし、私が……そんなことは、この心に誓ってあり得ないが、それでも、他の女性を夫人として迎えていいと?」
「……それも仕方ねぇとは思っているよ」
ぽつりとコウジはつぶやいた。
「なあ、よく考えてみろよ。俺はこんなおじさんで、世間から見りゃどう考えたってお前と釣り合わない。 そもそも女でもないから子供産めないからな。いや、おじさんが孕むなんて気持ち悪いが」
苦笑しようとして、どうにもその笑みもゆがむ。
そういう不安が無かったわけではない。
ジークの心を疑ったことはない。ただ己をかばって死んだ。そんな男を想い続けた上に、おじさんの姿でやってきた自分の手を迷わずとったのだ。
だが、愛情だけではどうしようも出来ない問題がある。
自分の作り出した架空のキャラだとしても、神様のあたえたコウジの人生経験がそう語っていた。
お互いの立場や周りの意見や、地位が高くなればなるほど身動きは取れなくなる。
「ジーク、俺はな。お前が王様や周りからのすすめで、どっかの貴族のお姫様と結婚したとしても、仕方ないと思っている。
そのときには俺達は本当に“盟友”となって、こんな関係はきっぱり断とうとな。そうしないと、お前の奥さんも子供も不幸になる」
好きだったのに別れましたなんて、陳腐な流行歌か恋愛映画かな? と思っていると「言いたいことはそれだけか?」と低い声が、自分を組み敷く男の唇から漏れた。
こちらを見る剃刀色の瞳には暗い炎が見えた。
「そんな馬鹿馬鹿しいたわごとを、あなたの口から聞きたくもなかった。
盟友? あなたが私から離れる? そんなことはさせない。それぐらいなら、あなたを鎖につないで、この寝室に閉じこめようか?
私から一生逃れられないように」
その言葉と同時に、のど元に噛みつくように口づけられた。食い込む牙の痛みに、食われる……と思った。
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