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どうも魔法少女(おじさん)です。【2】~聖女襲来!?~おじさんと王子様が結婚するって本当ですか!?
【25】残酷な女神へのアンチテーゼ その1
しおりを挟む「お前と背中合わせ、死ぬ気はしねぇ……なんて言うと死亡フラグになるがな」
「死亡フラグ?」
「こういうカッコいいセリフを言うと、次の瞬間、そいつは死んでるってことだ」
なかには助かるんじゃないか? と希望を見せておいて、不意の一瞬にそいつの首ちょんぱなんて、鬼畜な作者もいるが。
「私はあなたと死ぬ気はない。一緒に生きる」
「俺もだよ、相棒!」
文字通りの背中あわせ、ジークとコウジは視界を埋めつくす敵に囲まれていた。
再びの狂信者となった民は、その武器を持たぬ手を次々に伸ばしてこちらに掴み掛かってこようとするが、それはコウジの張った煙草の紫煙の結界に阻まれてはじかれる。
死なない程度に手加減はしているが、ぽーんと宙に放り出されたそばから、次の波が押し寄せてくる。まったくきりがない。
兵士達は雨のように弓を射かけてくる。それもジークが頭上に展開した雷光の結界に阻まれて、バチバチとはじけて焼かれて消滅する。こちらに突き出される無数の槍は、聖剣グラフマンデが姿を変えた、長い柄の戦斧の一閃によって、斬られ飛ばされる。
コウジもまた盾を武器に突進してくる兵士達の足下に銃弾を炸裂させて、彼らをふっとばす。
「まったく、手加減なんて得意じゃないんだよ!」
コウジは思わずぼやく。兵士も民衆も女神モルガナの蠱惑に操られているだけだ。そんな彼らを死なせるわけにはいかない。
まあ、手足の一本ぐらい折れても仕方ないかと、容赦なく吹っ飛ばしているが、それはあとで治癒魔法でなんとかなるだろう。
そんな民衆と兵士の波がひいて、彼らがぐるりと輪の壁を作ったと思ったら、その壁の中から十七人の王子達が現れた。ようやく、コウジ達の作った穴から抜け出したらしい。結構時間が掛かったな……とは思う。その色とりどりの軍服は、穴を這い出た土埃で汚れていた。
いずれの表情もやはりない。目にも光がない。こちらへの怒りや憎しみもない。民衆や兵士は口々にモルガナ女神の名を讃えているが、彼らはただジークとコウジを見るのみだ。
そして、炎に風や水、土の魔法を同時に叩きつけてくる。
ジークとコウジは言葉を交わすことも、背中合わせ視線もあわせずに、同時に結界を展開する。コウジが火を付けた途端、宙に投げた煙草からごうと炎と煙が広がる。それにジークが剣の形にもどしたグラフマンデを天にかかげて、放った雷光が絡みつく。
二人を包みこむようにドーム型の結界が展開し、そこに十七人の王子達の火球にかまいたち、水の濁流、周囲の地面が割れて飛ぶ鋭く尖った土塊が襲いかかる。
炎に風、水、土の魔法が暴風のように荒れ狂う。まともに食らえば、骨も残さず跡形もなく消えているような魔法の暴力だ。
しかし、その嵐が去ったあと、二人はそこに傷一つなく立っていた。コウジが「さすがにちょっと揺れたなぁ」などとぼやく。
十七人の王子達の魔法の一斉攻撃でも、その結界が揺らいだ程度だったというのだ。ここにシオンがいれば「馬鹿魔力」とまたつぶやいただろう。
しかし、王子達は自分達の魔法がはじかれたことに、まったくその表情をぴくりとも動かすことなく、今度は己の得物を手に襲い掛かってくる。
複数の剣に槍、そして矢が飛ぶ。
ジークのグラフマンデが剣や槍の束を雷をまとった一振りで払う。コウジは飛んでくる矢に向かった弾丸を一発。空中で爆発したそれが矢を粉々にする。
しかし、銃は接近戦に弱い。こちらを狙って襲い掛かってくる刃に、コウジは無言でジークの腰に差してあった短剣を後ろ手に引き抜いた。
そして、槍の穂先をはらって返した刃で、がっちり相手の剣を受けとめる。だけでなく、そいつの腹を蹴り飛ばす。
魔力をのせたそれだ。相手の身体は軽く数メートルは吹っ飛んで転がったが、すぐに起き上がってこちらにやってくる。魔法の結界を身体にまとっているか。頑丈だな、おい。
しかし、ここで新手が加わった。狂信者となった民衆の群が、この戦いに飛びこんできたのだ。
王子達は彼らが味方だというのに、邪魔だとばかりにためらいもなく、その得物をコウジの前へと出た一人の背中に振り下ろそうとした。
「このっ! 馬鹿っ!」
コウジは舌打ちして「モルガナ女神様!」などと恍惚とした表情で神の名を叫び、自分に掴みかかろうとする狂信者の男の腕をとって、魔力をのせてそのままブン! とぶん投げた。
遠くに男が飛んで行ったが、地面に身体が叩きつけられても死にはしないだろう。少なくとも剣で突き刺されて死ぬよりだ。
ジークもまた飛びこんできた三人に対して、グラフマンデの一閃がおこした風で跳ね飛ばしていた。が、その後ろから王子の一人が槍を突き出してくるのが見えた。この速さでは流石のジークも避けきれない、腹に受ける。
反射的にジークの腕を退いてコウジが位置を入れ替えるように前に出る。槍の穂先が腕をかすめてちりりとした痛みが走る。
しかし、コウジも飛ばした狂信者の男の背に斬りつけようとした王子の剣を受けるところだったのだ。ジークもまたコウジに腕を退かれるまま前へと出て、その王子の剣をグラフマンデではねのけたが、剣の先が精悍な頬をかすめる。
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