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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【7】お約束の破壊と定番の魔王 その2
しおりを挟む「これが最後の門番のようだな」とフィラースは、天井まである巨大な扉を開ける……のではなく、ちらりと横のジークを見て、二人で聖剣を振り下ろした。
扉は真っ二つになって吹っ飛んだ。いや、ホントこいつら似たもの同士だな。
天井の高い大きな広間に、一直線にしかれた緋色の絨緞。最奥にある階の上には、髑髏に骨を積み上げた不気味な玉座。紫の長衣をまとった長身のジークより、さらに大きな男の姿があった。
長い黒髪の頭には捻れた漆黒の角が無数に生えている。鱗がうっすらと浮かびあがる青い肌。こちらを見る瞳は白目ではなく漆黒の色だ。そして血のように赤い瞳がこちらを見ている。
顔立ちは整っている。しかし、なによりもその異形の姿が、こちらに威圧感を与えるのはさすが魔王と言うべきか。
それにフィラースは臆することなく「お前が魔王か?」と口を開いた。
「いかにも、異世界の羽虫がよくもこの我の前まで、たどりつけたもの」
いや、たどり着くもなにもお城の前まで女神様に送っていただいて、さらにここまでほぼ一撃であなたの手下を倒してきたんですけどね……とは、コウジはまあ口にしない。
いまは勇者と魔王との会話中だ。
「魔王に告げる。この世界を去れ。ここはお前の世界ではない」
「なにを言う。すべての次元、すべての世界は我に征服されるべき世界。弱き神は我によって消し去られ、すべて魔界に塗り替えられるべきなのだ。
そう、お前達がやってきた次元もまた我の獲物よ」
交渉決裂というより、支配欲の権化みたいな魔王には最初から交渉など通じないとはわかっていた。が まずは舌戦というのが戦いの挨拶みたいなものだろう。
「神々に祝福されし世界は、すべての神と人々と命のものだ。魔王、お前のものではない!」
お、勇者らしい言葉だな~と思わずコウジは感心してしまう。「生意気な!」と闇の雷撃をこちらに放つ。それは勇者の白い聖剣の一振りによって払われた。まあ小手調べだ。
「我に逆らった者達の末路、無限の闇へと堕ちるがよい!」
おお、いかにも魔王らしいひと言。玉座からすさまじい闇の波動が放たれる。コウジは煙草の煙の結界でそれを防ぐ。しかし、さすが魔王様、その強さに圧されかけるが、それをシオンが放った矢の炎の結界と、マイアが手を前に付きだして作った黄色い渦巻く風の盾によって補強される。コウジは二人を見て「ありがとうな」と次の煙草をくわえる。
コンラッドが槍で、ピートはその両手の短剣を振って炎と風の攻撃を魔王に仕掛けた。問答無用でぶち込むとは勇者と英雄の脳筋が二人ともうつってないか?
しかし、魔王はその直撃をうけながら「ははは! 無駄よ!」と笑う。うーん、流石魔王様か?
その余裕もジークが黒い聖剣を一振りして、雷撃を仕掛けるまでだったが。いくつもの雷の柱が魔王を取り囲む。魔王はその紫のマントを翻してそれを防ぐ。「こしゃくな……」と悔しげなつぶやきが聞こえる。
おいおい勇者様の前に魔王を倒したんじゃ話にならないぞと思っていると、フィラースが玉座まで駆けた。
白い聖剣が放つ光の閃光の一撃で魔王の首が跳んで、ころころと床に転がる。「へ?」と声をあげたのはピートだ。
「まさか、これで終わりじゃないでしょうね?」
「いんや、ゲームだとこれが第一段階であっけなく倒されておいての、いきなり強い第二段階、下手すると第三段階なんてあってなあ」
「不吉なことを言わないでよ!」とシオンが叫ぶがそこに「ふふふ……」と首だけの魔王の笑い声が重なった。
「この程度で我を倒したと思うな! 愚か者め!」
首が跳んで玉座に腰掛ける胴体に再び繋がると同時に、骨の玉座が音を立ててせり上がり始める。玉座を形作っていた骨が、組み合わさり巨大な魔王の身体となっていく。紫のマントをまとう不気味な骸骨の異形の姿へと。
「この我だけではない! お前達はすべてのものを滅ぼしたと思っていたのか?」
さらに骸骨の異形の周りには、同じく骨だけの姿となった、魔道士にケルベロス、コウモリの翼の悪魔達、バイコーンにまたがったデュラハンが現れる。彼らは四角形の形で魔王を取り囲み、赤黒い線が走る闇の結界を張った。
「倒したあとにゾンビ化か?」
「あなたがヘンなこというからよ」とコウジにシオンが噛みつく。
「いや、これはおじさんのせいじゃなくて、元からこうだったと思うぞ」
言いながらコウジはぽいぽいと周囲に火をつけた煙草を次々と投げてそれをつなげて結界とする。同時にさっき以上の闇の波動が襲ってきたが、結界は軽く揺らぐだけで破られることはなかった。
同時にジークにフィーラース、コンラッドにピートが、骨の身体となった巨大な魔王に攻撃をたたき込むが、その強力な一撃も屍化した眷族達が張った結界によってはじかれた。「無駄、無駄、無駄」とどこかで聞いたようなセリフを吐きながら、魔王は高笑いしている。
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