どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【8】どーんとやってみよう! の結果 その1

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「おじさんも参加しようかね」

 コウジがいきなりロケットランチャーを肩に担ぐとシオンが「もう馬鹿魔力」と言いながら自分も弓を引き絞る。マイアもまた「はいっ!」と拳と蹴りを繰り出した。
 同時に勇者と三王子達の攻撃が再びだが、コウジと、そしてわかっていたかのようにジークの攻撃は、魔王の骨の身体へと向かわなかった。

 骨のバイコーンにまたがった二騎のデュラハンへと。コウジのロケットランチャーの着弾とジークの聖剣を槍の形に変えた雷光が襲う。
 乗っていた骨のバイコーンごと、デュラハンの姿が吹っ飛ぶ。結界の一つが崩れるが、すぐに四角錐が三角錐の形の結界となって骨の魔王を覆った。他の王子と魔法少女、勇者の攻撃は跳ね返される。

 また一旦姿を消したデュラハン二騎も、一度死んだ不死の身であり、他の眷族三体からの魔力の供給があるのか、ゆらりと透ける蜃気楼のような姿が浮かびあがりすぐに復活し、結界は元の四角錐の形となる。

 「どこを攻撃している?」と指摘するコンラッドにフィラースが「結界の一つは確かに一旦消えたな」とつぶやく。さすが勇者様はわかっている。「だが結界の一つを吹っ飛ばしても他の三つで補ううえに、すぐ復活する」とコウジは続ける。
 「なら、四つすべての結界を同時に攻撃すればいいんですよ」とピート。うん、こちらも賢い。

「では、ピートとマイア嬢はケルベロスを、コンラッドとシオン嬢はデモン達を攻撃してくれ。私達は魔道士とデュラハンを受け持つ。
 結界が途切れた瞬間に勇者は攻撃を」

 ジークの言葉にみんながうなずき別れる。さて、魔道士とデュラハンを同時にぶち抜かないといけないか……とコウジは唇に指を当てて少し考えて「これでやってみるか」と出したのは。

 黒光りする巨大砲レールガンだった。槍を構えるコンラッドとともに弓を構えたシオンが「やっぱり馬鹿魔力」とつぶやいている。後方で待機しているフィラースは「まだ実用化されていない兵器のはずだが」と瞳を輝かせている。

「ジーク、こいつにお前の魔力を注いでくれ。俺の魔力と一緒にぶっ放す」
「わかった」

 ジークが剣の形のグラフマンデを槍の形に変えて、砲身がおかれている石の床に突き刺せば、地面より雷光がばりばりと砲身に伝わり中に満ちる。コウジは己の闇の魔力をジークの光の魔力と練り上げて、そして。

「さあっ! ドーンと行こうぜ!」

 「それが合図!」とシオンが文句を言いながらも、弓を放ち、コンラッドが炎の槍をケルベロスにたたき込む。ピートとマイアは背中合わせの舞いで巨大なかまいたちの竜巻を発生させて、デモン達へと攻撃する。
 そして、レールガンから発射された光と闇の魔力の螺旋は、魔道士をぶち抜き二体のデュラハンをバイコーンごと消滅させた。

 結界が消滅し骨の魔王がむき出しとなる。そこにフィラースが聖剣を振りかぶり高く跳んだ。
 光をまとった剣が魔王の身体脳天から真っ二つにする。そこだけは骨ではなく肉があった顔が二つに割れて、閃光によって燃えはがれて白いしゃれこうべとなった。
 がらがらとくずれていく骨の身体。コウジはそれに魔王を倒したという実感があまりなかった。あっけないというより。

 これは抜け殻だ……。

 眷族を含めての骨の山がさらさらと砂のように崩れていくのに、そんな直感があった。自分達がいままで戦っていたのは、中身のない張りぼてであったのではないか? そんな……。
 そして、砂となりさらには風にさらわれて消えた魔王の残骸のなか、半分だけのしゃれこうべ、そのぽっかり空いた闇の眼窩にコウジは目を向けた。

 瞬間、意識が吸い込まれた。



   ◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇



 もはや身体に染みついている硝煙と血の匂いと銃撃の音。ここは戦場だ。

 見覚えのある白亜の大理石のホールに階段。ここは砂漠のあの国の独裁者が築いた官邸。通称大統領宮殿だ。
 革命が成ったとき、この無駄に豪奢な建物も壊せ! という声が大きかった。前時代のものはすべて壊してしまえ! と。

 しかし、砂漠の獅子と呼ばれた革命家は民衆にそれを禁じた。不満げな顔する彼らに革命家は言った。私は奴らと同じ略奪者になるつもりはないと。
 革命家に告げられた者達はハッ! とした顔となった。それまでは独裁者の親族やその関係者、協力した者達にはなにをしてもよいという雰囲気だった。実際いくつかの暴力沙汰も起こっていた。

 だが、革命家のこのひと言でそれは止んだ。独裁者はたしかに略奪者であった。国の財を私物化し、気に入らない者達は抹殺した。奴と同じ破壊者に自分達はならないと革命家の言葉に、人々は誓いを新たにする。

「私達が成し遂げるべきは破壊ではなく、これから新しい国を作っていくことだ」

 革命家のこの呼びかけに、民衆は歓呼の声をあげた。あれはこの白亜の大統領宮殿のベランダからだった。独裁者は屋上のヘリポートから逃げた、その数時間後のことだ。

 そして、大統領宮殿は大統領官邸としてそのまま使われた。宮殿を飾っていた豪奢な美術品や絵は競売にかけられて、新しい国を作る資金とされた。
 豪奢な飾りは取り払われて、執務机に椅子だけとなった簡素な執務室の主人となったのは、臨時政府を経て正しい選挙の上で大統領となった、あの革命家だ。迷彩服を着ていた砂漠の獅子は、今度はスーツに身を包んで大統領の椅子に腰掛けた。

 彼は次々に改革を行って国民だけでなく、世界の喝采を浴びた。独裁者と彼につながっていたグローバル企業が独占していた鉱山資源を国民へと等分に分配した。福祉を充実し教育にも力を入れた。宗教的な理由で女子の教育が遅れていたこの国で、その門戸を開き社会進出を促した。
 すべてがうまく行っているように見えた。だが、それこそが小さくも資源豊かなこの国の利権を欲しがる大国や、大企業からすればよくないことだった。男が世界から支持され喝采され続けることも。

 そのクーデターは突然に起こった。革命家である男が信頼していたはずの若い将校達の叛乱。なんの備えもない大統領府はすぐに軍に囲まれて踏み込まれた。
 男は血だまりのなかに沈んでいた。執務机は最後の徹底抗戦のためのバリケードとして使われて、革張りの椅子もまた床に転がって。

 そして、その向こうに逃げることなく戦った側近達の遺体とともに男の死体が、自動小銃の一斉射撃で蜂の巣となった姿で倒れている。
 そんな姿になってもなお、銃を構えた兵士達は彼にしばらく近づくことが出来なかった。かつてはこの国の英雄とたたえた人物を。かの独裁者と同じように亡命することを拒んで、自ら銃を持って最後まで戦った、その苛烈さ故に。

 彼は革命の志半ばにして、突如起こった軍のクーデターによって死んだ。





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