どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【10】答え合わせをしよう その1

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 目が覚めた。
 天蓋付きのベッドに慣れちまったのはどうなんだ? とコウジは身を起こしてくしゃりと髪をかき混ぜる。

 なんか違和感あるなぁ……と思ったら、枕にしていたのは普通の羽根枕だった。普通の……ってのはどうなんだ? 申し分のない枕のはずだが、ジークの胸枕に慣れた身としては、あの弾力と温かさが恋しいって……ほど、まだ離れてないか。

 見渡せば当然、ジークの屋敷のベッドルームとは違う。違うが天蓋付きのベッドといい、置かれている豪奢な調度からして、とても牢屋とは思えない。
 自分は魔勇者となったフィラースの閃光の直撃を受けたはずだ。身体に痛みがないってことは治療してくれたのか? 

 生きているし怪我はない。しかし、どうしてこんな豪華な部屋に鎖にも繋がれずに寝かされているのか? 
 そこで左腕の違和感に気付く。手首につけられた金色の細い輪。これが魔力を封じているのか? 手から引き抜こうとしても取れない。当然か。

 魔法は使えないことはわかったが、なんで自分がこんな豪奢な部屋にいるのか? が理解不能だ。ベッドの上であぐらをかいて、しばし考えていると部屋の扉が開いた。
 入ってきたのは可愛らしいメイド姿の少女だった。メイド服ってのはどこも変わらないのか? と、コウジはヘッドドレスに黒いワンピース、白いエプロンの彼女をまじまじと見る。

 髪の色は銀に淡い紫の巻き毛、肌の色は青みがかったように白く、耳の先は尖っている。髪と同じく銀に紫の瞳の瞳孔は針のように細い、魔族の少女? かと思ったが背中に透ける羽が四枚見えた。
 彼女はコウジにむかいうやうやしく頭を下げ。

「お世話をさせていただきます、リンベイと申します。ご希望があればなんなりとおっしゃってください」
「じゃあ、リンベイちゃん、おじさんをここから出してくれる?」
「それはできません」

 一番の希望はそれなのだが、やはり出来ないか。「この部屋から出るのもダメ?」と確認したら「はい」と答えられた。ふむ、一応は閉じこめられているのか。
 しかし、牢屋で鎖に繋がれるわけではなく、閉じこめられているとはいえ、こんな豪華な部屋で世話係のメイド付きって自分はどういう状況なんだ? とコウジがうーんと考えこめば。

「なにかお召し上がりになりますか?」

 そうリンベイに訊かれた。そうだな。腹は空いてないが、なんか食うか。

「パフェある?」
「はいご用意いたしますす。お飲み物は温かなお茶になされますか?」
「ん~アワアワのシャンパン、極上の奴」

 どうせフィラースの懐から出るんだろうから高いの頼んでやれと思う。

「パフェもメロン盛った奴がいいな」

 メロンは魔界じゃ高いのかな? まあ好きだから食べてやれと思う。
 程なくして、リンベイがワゴンを押して部屋にやってきた。グラスに盛られた、まるい形のグリーンにオレンジのメロンの果肉だけでなく、白に紫のジェラートにキラキラ輝くクラッシュされたゼリーも挟まっている、芸術的な代物だ。魔王城のシェフもなかなかやるようだ。

 そして、シャンパンを一口。うん、注文どおりの極上品だ。この味を覚えたのは、この世界に来てからだ。シャンパンが果物にあうと教えてくれたのは……。
 ジークの奴どうしているかな? とコウジは思う。今頃はフォートリオンに無事についていると思いたいが。

 そう、シャンパンと果物が合うと教えてくれたのはあいつだ。あれは散々しつこくされて拗ねたベッドの上でだったか? 「おじさんはいくら好物だからって、果物と酒なんかでご機嫌は取られないぞ」と口にした、イチゴとシャンパンはすごくうまかった。
 今、口にしているメロンもシャンパンも極上の品だ。柄の細長い銀のスプーンで一口すくって食べたアイスクリームはホワイトチョコか。これも、うまい。

 うまいことはうまいが、あいつがいない。

「……いまいちだな」
「うちの料理人の味が気に入らないか?」

 小卓を挟んでフィラースが反対側の椅子に腰掛ける。あの黒い甲冑を脱いで、今はシンプルな黒いシャツにパンツにブーツ姿だ。
 そういえば俺の服……とコウジが自分の姿を見れば、白いシャツにズボンの姿だった。スーツは脱がされたようだが、ぴらぴらのレースのお貴族様の服でないのでいいと思う。おじさんにフリルなんて似合わないことこの上ない。

「いや、味は絶品だぜ。ただし、ここに閉じこめられているのが、気に入らないだけだ」

 「答え合わせをしようぜ」とコウジは続ける。パフェを食べる手は休まず、口にオレンジのメロンの果肉を放り込んで、シャンパンを一口。

「答え合わせ?」
「ああ、あんたはこの世界で勇者召喚される前に、別の世界で召喚された。そこで、魔王をゾンビ化して、自分が魔王になるのを止めたってことか?」

 コウジの言葉にフィラースは軽く目を見開く。

「誰かに聞いたとは思えないな。玉座の間のあの瞬間まで、お前達は魔王の正体にも私の真の姿にも気付いていないようだった」
「ああ、まんまと騙されたぜ。だけど、魔王があんたによって倒された。“そう見せかけられた”瞬間に、俺の意識が一瞬飛んで“視えた”のさ。
 あれは夢や幻じゃない。そうだと考えれば、あんたが今、どうして魔王にならず、勇者のまま闇の力も使える魔勇者になってるか説明がつく」

 魔王を倒さなければ勇者は魔王化することはない。繰り返されてきた神々によるこの“たくらみ”を、フィラースは魔王を不死化して止めた。いや、それだけでは足りないと、自ら半堕ちして闇を取り込んで魔勇者となることで、屍となった魔王を使役する上位者となった。





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