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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【13】真打ちは遅れた頃にやって来る その2
しおりを挟む「お前も“甘い”という顔だな」
コウジの部屋から出て、東の塔を降りて魔王城の長い廊下。後ろのデクスにフィラースは呼びかける。後ろにいてもちゃんと見えるのだぞとばかりに、デクスはかすかに肩を動かし「ガリオンの処置はすでに決定したことです」と断りを入れ。
「……ですが、今回、奴を生かしたことは少なからず影響は出るでしょう」
裏切り者には死を……が魔界の鉄則だ。フィラースが魔王代理となった当初、魔族でもない異世界の、しかも元勇者に反発が無かったわけでない。魔王の抜け殻を傀儡にした、己の力はない人形使いだと口汚く罵るものもあった。
フィラースはそれをことごとく圧倒的な力を持って黙らせてきた。自分に叛逆するものは叩きつぶし、臣従し力あるものは高く評価する。
「今回はあれの言葉が面白かったから気紛れのようなものだ。始末してしまえばすっきりもするが、たしかにあとの“楽しみ”もなくなる。
ガリオンが本当に這い上がってくるか、なにか賭けるか?」
「先にお前が決めていいぞ、好きなものをとらせよう」というフィラースに「ご冗談を」と生真面目な側近は返す。
フィラースは「お前らしい」と気分を害した様子もなく笑う。
先に立って歩く主人を、魔族の青年は複雑な表情が入り交じった目で見つめた。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
数日後。東の塔のてっぺんにて。お茶と今日も絶品のケーキの用意をするリンベイに、コウジは言った。
「このあいだリンベイちゃんが話してくれたことだけどな。今夜あたりどうだ?」
そう切り出すと少女はあきらかに、ぱあっと花開くように喜びの顔となった。「はい、ご用意いたします」と彼女は一礼して部屋を出て行った。
そして、その夜。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「コウジ様、足下お気をつけください」
「ん、リンベイちゃんこそ、気をつけて」
コウジは夜目が利く。本当は先に立つリンベイがかかげるカンテラが無くとも歩けるのだが、逆に彼女の安全のために言わない。
二人は地下の通路を歩いていた。魔王城のこの抜け道をメイドの彼女がなぜ知っているのか、コウジはあえて詮索はしなかった。
リンベイはこの城からコウジを逃がすと告げた。ただし、自分が連れていけるのは城の外までだという話に、コウジは「少し考えさせてくれ」と返した。
そして、今夜、二人は衛兵交替の隙をついて、東の塔を抜け出して、地下通路へと。
水路が流れる両わきの道を進んで、さらには巨大な池。いや、地底湖がある飛び石の道へと。ここを抜ければ城の外へと出られるという。
しかし、ちょうど湖の真ん中。闇のなか、カンテラが照らし出した人物に、リンベイが足を止めた。
「デクス様」
「役目、ご苦労だったリンベイ。こちらに来なさい」
デクスの言葉と同時に、ざあっと湖面が泡立ち、ぬうっと姿を現したのは、銀の鱗の蛇……いや、角があるところから竜か? 手足は確認出来ないが。
リンベイは「そんな……」と声をあげ。
「デクス様はこの方をフィラース様のおそばには置いておけない。逃がして自由にするとおっしゃったではないですか!」
「その男が生きていれば、フィラース様は必ず連れ戻そうとする。だから、ここで死んでもらう」
「嫌です」とリンベイは叫び、銀の鱗の怪物からコウジをかばう様に震える足で立つ。「リンベイ、こちらに来い!」と叫ぶデクスをコウジは見る。
「フィラースは馬鹿じゃない。逃げた俺が“事故”でこの怪物に食い殺されたと装っても、必ずお前の仕業だと気付くぞ」
「もとより覚悟の上だ。お前はあの方の覇道においてよくない存在だと私は判断した。それがあの方と魔界のためとなるならば、私は喜んで叛逆者となりこの命を捧げよう」
「いい覚悟だ」とコウジは口の片端をつりあげて、リンベイの背中をデクスに向かい思いきり突き飛ばした。
そのリンベイを受けとめながらデクスは「やれ!」と魔物に叫ぶ。くわりと開いた魔物の口が、コウジに迫る。
だが、その前に湖の上を駆けるように跳んだ長身。カンテラの光だけだった湖に雷光が瞬き、そして、銀の怪物の頭は、その漆黒の剣に跳ね飛ばされた。
「やっぱり、俺の王子様はかっこよく登場するなぁ」
コウジは自分の前に降り立ったジークに向かい、ニッと笑った。
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