どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

文字の大きさ
89 / 120
どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【14】ダイヤモンドより美しいもの※ その1

しおりを挟む
   



 コウジを見たジークは「無事か?」も「会いたかった」の言葉もなく、いきなりコウジを抱きしめて口づけた。
 この王子様の暴挙? にコウジは目を見開いたものの、すぐにその首に手を回して目を閉じて応える。

 目の前で繰り広げられる濃厚な抱擁に、デクスは固まり、リンベイは尖った耳の先まで真っ赤になり、背中の四枚の透ける羽もぷるぷる震えている。
 口づけを繰り返しながら、首に回ったコウジの左手をジークが掴み、その手首にはまる金の輪を感触だけで確認して、眉間にしわを寄せた。

 魔封じのその輪をジークは己の手で握りつぶすように外した。おいおい聖剣も使わずに引きちぎりやがったよ……とコウジは思う

────こいつ、ますます力強くなってねぇ? 

 そんなことを思えたのは一瞬だった。舌がするりと入りこんできて絡め取られる。くらりとめまいがしてヤバいと思った。

「舌、入れるんじゃねぇよ!」

 ぺしりと秀でたデコをたたきながら、ぷはっと口を離す。

「我が主のときは懐かぬ猫のように噛みついたのに、その男のときは子猫がじゃれるように軽く叩くだけとは……」

 呆然としたままデクスがつぶやく。おい、お前、こだわるのはそこか? いや、人を猫扱いするんじゃねぇよ! あげく、子猫とはなんだ! 子猫はさらにねぇ! 
 しかも、まずいのは目の前の剃刀色の瞳が剣呑に光ったことだ。

「あの男に口づけられたのか?」
「いや、ありゃ枯れかけた魔力供給の応急措置で、舌入れようとしたから噛みついたんだが……おい! だからもうキスはいいって!」

 ぐいぐい迫ってくる端正な顔を、これまたぐいぐいと乱暴にコウジは押しのける。この芸術品みたいな顔をなんて乱暴な扱いをするのか! と怒られそうだが、これは俺のモノだからいいんだ! 

「あの男にされたのだろう?」
「たった今、お清めのキスは済んだからいいだろう! これ以上お前にちゅーちゅー吸い付かれて、舌入れられたら俺が腰砕けになって、お前が抱えて逃げなきゃならないぞ!」
「……ずいぶんと楽しそうだな」

 ギギギ……ときしむ音でも立てるかのように首を回してコウジは、そちらを見た。そこにはフィラースが立っていた。
 彼を見たとたん、剣の柄に手をかけ臨戦態勢となるジークに「馬鹿! ここは逃げるぞ!」と叫んで、コウジは両手をつなぐ。
 とたん、二人の姿は転移によって消えた。それに「二人のみだ。そう遠くには跳べまい」とフィラースは言い「追っ手の手配をしろ」とデクスに告げる。

「王子は殺しても構わん。だが、コウジは必ず生きて私の前に連れてこい」
「お言葉ながら……あの男は危険です」

 デクスが「生かしておいてよいことがあるとは思えません」と続ける。それにフィラースは。

「だから、コウジを逃がすふりをして、ここで魔物に襲われたように見せかけて始末するつもりだった」
「はい」

 デクスはうなずく。説明せずともすべてわかっているだろう主に彼は「死を賜る覚悟は出来ております」とフィラースの前に両膝をつく。

「最後に一つ、主に逆らった愚昧な下僕の言葉をお聞き下さるならば、ちっぽけな男ごときにこだわらず、あなたには大いなる道があることをおわかりください」
「私がコウジと関わって甘くなったと、お前も思うのか?」
「あの男はあなたの覇道の障害にしかなりません」

 そこに「お待ちください」と健気な声が割って入る。メイドの少女はデクスの横に膝をついて、震えながらもしっかりとフィラースを見上げる。

「わたくしがコウジ様をこの城から逃がそうとしたのです。デクス様はそれを止めようとなされました。すべての罪はわたくしにあります」
「なにを言いだすのだ、リンベイ。お前は私に命じられて、あの男をここに連れてきたにすぎない」
「いえ、コウジ様を逃がしたいと思った、わたくしの気持ちは本当です」
「フィラース様、リンベイは私をかばってこのような偽りを申しているのです。この娘はただ私に命じられて、あの男をここまで連れてきただけのこと。すべての責は私にあります。この娘には寛大なるご処置を……」

 そんな二人に「やれやれ」とフィラースはため息をつき。

「主従でかばい合うとは美しいな、デクスよ。部下など都合の良い道具として切り捨てる者が多いなか、お前も十分に“甘い”ぞ」

 逆に自分が“甘い”と指摘されて虚を突かれたような顔をする魔族の青年に、フィラースはくくくと笑う。

「沙汰を言い渡す。リンベイ、お前は変わらずこの魔王城にて仕えろ。本日より、私付きのメイドとする。
 デクス。お前は逃げたコウジとあの王子の行方を追え。絶対に逃がすな」

 「フィラース様!」とデクスが、まだあの男にこだわるのかと、声をあげるのにフィラースは「そうではない」と返す。

「お前は私がただあの男にこだわっているように見えるか? あれは私の閃光の直撃を受けても無事だった。これを偶然だと思うか?」
「それは……」

 勇者として何回もの召喚と魔勇者としての覚醒を繰り返してきたフィラースの力は絶大だ。それをコウジという男が傷一つ負わずに耐えたのは事実だ。

「さらに瞬発的といえ、私の魔封じを一度突破した。ああ、今回は破壊されたか」
「金の腕輪を破壊したのは、あの王子です」
「どうやって?」
「……片手で握りつぶしました」

 これもよく考えれば信じられないことだ。魔勇者の強力な封印を受けて、なお魔力を使ったこと。そして、本来ならば封印をとけるのはフィラースのみのそれを、片手だけで解除したこと。

「あの王子はまだ覚醒する前とはいえ、勇者の私と互角に戦った。あと二人、魔法少女と契約した王子はいたがな。しかし、その力には格段の差があったぞ。むしろ異様なほどにな」

 そしてそれはコウジにもあてはまる。

「王子の力は雷光、すなわち光。そしてコウジは闇だ。本来、パートナー同士の属性は同じらしいがな。
 光と闇。相反する性質を制御したものが、どれほどの力を持つか、それはお前がよくわかっているだろう?」

 それはデクスの目の前にいる人物だ。光の勇者と堕ちた闇の力を双方の力を持つ、魔勇者。

「あの王子の力はコウジと契約したからだ。あれが闇だから、光となったのか。もとからあの王子が光だから、コウジが闇となったかは知らないがな。
 もう一ついうならば、コウジは私と同じ異世界から召喚されたものではない。あれの魂はたしかに異世界人のものだが、身体と能力を与えたのはあの世界の神だ」

 「それも我らが侵略してきたどの次元よりも古いな……」とフィラースは続ける。

「人々は神話の時代を忘れ、科学という魔法を手に入れた。神々の手から人の運命は完全に離れ、すべては幻想の彼方にあると思っている。
 だから、神の力は弱いと思うか? とんでもない。神々は確かにあの世界にあって、人の営みを見続けている。
 その神がひさかたに手ずから創造したのが、あの男だ。本人には“御使い”の自覚などかけらもないがな」





しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまいネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。校正も自力です!(笑)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。