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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【14】ダイヤモンドより美しいもの※ その2
しおりを挟むくしゅんとコウジはくしゃみをした。「誰かが噂でもしてるのかな?」と言えば、きょとんとした顔をされたので「俺が来たところじゃ、くしゃみが出るのはどこかで誰かが噂してるって証なんだ」と説明する。
「ちなみに一回なら良い噂で、二回は悪い噂だったか。まあ、今頃、俺の噂してるなんて、フィラースあたりか? うわっ!」
どんと木の幹におしつけられて、腕で囲まれて口づけられる。一旦口を離して「このやきもちやきめ!」と言いながら、コウジは今度は唇を開いて、その舌を受け入れる。「ふ……」と合わせた唇から熱い吐息がこぼれる。
二人が跳んだのは深い森の中だった。場所はわからないが、魔王城の青い影が遠くにうっすら見えているところから、そんなに離れていないのだろう。
一刻も早く城から遠ざかるべきなのだろうが……。
「っ……」
ざりっと互いの頬が擦れ合うのにかすかな痛みを感じて、コウジは声をあげた。自分の無精髭ならこうはならない。
「なに? お前もお髭生えてるの?」
銀色だからわからなかったが、ジークの顎から頬にかけてぽつぽつと髭が。いや、朝なんかちょっぴり伸びてることがあるけど、ここまでって見た事がない。
「ずっと駆けていた」
ぽつりとジークが言う。髭を剃る余裕もなく、真っ直ぐ魔王城を目指して、独り走る姿が浮かんで、胸が痛んだ。
「ちったあ、メシ食って寝たのか?」
少しこけたような気がする精悍な頬に手を当てれば、手を重ねられて「あなたのことしか考えられなかった」という。
人並み外れた魔力を持っているジークだ。だから呑まず食わず、眠らずの最速で駆けて来られたのだろうが。
「しかたねぇなあ。この森の中に食い物あるかな? 探してきてやるから、お前は少し寝ろ……んっ!」
唇を塞がれる。また貪るように舌を絡められて、混ざり合った唾液を互いに呑み込む。
「それより、あなたが欲しい」
「……仕方ねぇな」
たしかに魔力循環させりゃ、食わなくても寝なくても回復はするが、不健全なことこのうえない。
だけど、回復よりなにより、ただコウジが欲しいのだと訴える、長い前髪からのぞく剃刀色の瞳の熱に苦笑してしまう。
うっすら生えた髭だけじゃない。いつもはきっちりあげている前髪も全部おりて、年相応の青年の顔になっている。しゃれ者というわけではないが、いつも身だしなみはきっちりしている、この男がだ。
コウジはスーツの上着に手を入れて、煙草を一本取り出す。黒のスーツは城から抜け出すときにリンベイに返してもらっていた。ばりばりにアイロンがかけられていたが、着たとたんにくったりするのは、仕様だ。仕様。
魔力で火をつけた煙草を地面に放り投げれば、とたん煙があがり周囲に広い結界が展開する。これで自分達の姿は見えなくなるし、侵入者がいればわかる。
「立ったまんまヤるぞ。すぐに逃げられるようにな。敵さんが来たら抜けよ」
「あなたを抱えたまま走れるが」
「駅弁スタイルで逃走なんて、おじさんが情けないから止めてくれ……っ」
ネクタイをゆるめられ、首筋を吸われて息を飲む。ワイシャツの裾から侵入した指に乳首をひっかかれて、のけぞりながら「手早くヤれ…よ……」と言う。
ムードもへったくれもないが、実のところコウジも早くジークと繋がりたかった。この男が欲しいと足の間に手を伸ばして、くすりと笑う。
「すごい、ギンギン」
「あなたも」
「ん、あ……久しぶりだも…んな……」
互いにスラックスの前を開いて取り出して手を動かす。最後には互いの先をすりあわせるようにして、コウジの手の上からジークが手を重ねて、二つまとめて高ぶりが同時にはねる。白濁が二人の手を汚す。
コウジはそのまま自分の後ろに手を伸ばす。指に絡まる互いのそれを、己のそこに塗りたくり指を入れる。とジークの指も当然のように追いかけてくる。そこが少しほぐれたのを見計らったように、はいってくる。
ぬちぬちといやらしい音が下肢から響く。弱い場所を自分とジークの指が触れるのに、たまらず細い声が喉から漏れる。「も、いい……」とかすれた声で男の耳にささやけば、自分の指ごとジークの指も抜かれて、かわりにもっと熱いものが押し当てられた。ずぶずぶと入りこんでくる。
両足を抱え上げられ、木の幹に背を預けて自重でさらに交わりが深くなる。男の首にしがみついて、その力強い律動に身を任せる。
「あっちぃ……お前だ…な……」なんてしみじみ言えば、さらに強く突き上げられて感慨にふけるなんて思考は霧散した。
あとはもう吹っ飛んで、気がついたときには自分の腹もうちも濡れたような感覚がある。しかし、くわえこんだ相手がまだ元気なのに、若いな……と苦笑して「もう一回ヤるか?」と訊く。
そして、自分の肩口に埋まった頭。完璧な鼻筋に顎のライン。そこに伝って落ちたしずくは、たぶん汗じゃないことに、コウジは軽く目を見開く。
そして、青年の頭をぎゅっと抱きしめた。よしよしなんて頭はなでない。男の泣き顔なんて見るもんじゃないし、お前泣いているだろう? なんて野暮なことは言わない。
ただ黙っていりゃいいだけだ。形の良い銀髪の頭を抱えて、コウジは空を見る。そして、自分の頬を一筋伝うものに気付く。
あ、俺も泣いてんのか? と思った。
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