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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【16】俺、黒天使……は、はずかちぃ! その1
しおりを挟む「どのみちお前が選ぶのは一つしかあるまい? お前は捕らえられて、あの男が死ぬか。私のものとなると約束して、あの男を解放するか?」
フィラースの言葉がコウジの耳の上を上滑りしていく。見つめているのは、巨大な骸骨の足に踏み潰されようとしているジークの苦悶の表情だ。このままあんなデカブツに力を込められれば、いかに頑強な彼の結界とて保たないだろう。
「さあ、どうする?」
「俺があんたに泣いてすがりついて、自分はどうなってもいいから、愛しい王子様を助けてくれと、言うと思うか?」
そんな悲劇のヒロインなどおじさんに似合わないったらありゃしない。コウジは「おい! ジーク!」と腹に力を入れて叫んだ。
「いつまでちんたら、そのデカブツの足の下にいやがる! 俺の王子様なら、とっととそいつを片付けやがれ!」
ジークがコウジの言葉に口の端に血をにじませた唇に苦笑を浮かべる。
「仰せのままに、私の姫君」
「だから、姫じゃねぇっ!」とコウジは叫ぶ。それにフィラースは「愚かな……」と怒りをにじませた酷薄な微笑みを浮かべる。
「行く先が破滅とわかっていて、なおも抵抗するか!?」
「俺達は死にゃしねぇよ! 一緒に戦って、一緒に生きるんだ!」
最後まで諦めないなんて根性論は、斜に構えたコウジという男の生き方には、似合わないことはこの上ない。
だけど、この中に入ってる魂は、うろ覚えの記憶のしがないコンビニのバイトだった男は、二十二歳の若造だ。将来に絶望していても、いつかははきっといいことはあるんじゃないか? なんて夢を見ていたと思う。
馬鹿馬鹿しくとも愚かでも、それでも未来を信じていた。明日は昨日よりはきっとよくなる。
だから、生きる。
「ならばそれを絶望に変えてやる!」
「やれ!」とフィラースが傀儡となった魔王の屍に命じる。
その足に力が込められればジークはそれでおしまいに見えた。
しかし。
「馬鹿な……」という言葉がフィラースの口から漏れ、コウジは「さすが俺の王子様!」とこんなときなのに無邪気に笑った。
巨大な骨の足に踏みつけられながら、ジークはその身体に力を込めて起き上がったのだ。そして、自分を踏みつける足を両手ではねのけて抜け出る。デカブツがよろりとよろめく。
「じゃあな!」とコウジはフィラースを突き飛ばすようにして、逆に自分が宙へと身を投げる。
当然身体は下へと落下する。崖下の海岸に落ちたジークとは距離がある。だけど、あそこに行くと思った。
空を飛んでも……。
よろめいたデカブツは、ジークに向かいその口を開いた。闇の閃光がパチパチとひらめく。ジークもその手にグラフマンデを出現させる。黒い剣が鮮烈な雷光をパチパチとまとう。
「ジーク!」
コウジはその広い背中に触れた。どうして自分がここまで来られたなんて考えなかった。後ろから彼を抱きしめる。
魔王の屍が口から闇の閃光を放つのと、ジークが剣を一閃させて雷光を放つのは同時だった。
闇と光が激突する。いや、その輝く雷光には闇が絡みついていた。コウジの力だ。
そして、闇と混ざり合った黄金の雷光は、闇のみの閃光を押しのけて、巨大な魔王の屍に向かい直進する。
それは天を貫く、光と闇の螺旋の巨大な柱となった。魔王の巨大な屍はその中に崩れ去る。
「魔王を倒したのか?」
コウジは思わず呆然とつぶやいた。自分達でやったこととはいえだ。
それに“魔王”は“勇者”にしか倒せないはず……。
そして“魔王”が倒れたならば“勇者”は。
いきなりあがった笑い声に、コウジは上を見た。そこにはバイコーンにまたがった、フィラースの姿があった。
が、様子が少し違う。その頭の漆黒の角がねじれてさらに大きくなっている。さらに彼は、その深紅の魔剣を振るい飛ばしたのは。
漆黒の闇のみの閃光。
それをジークがすかさずグラフマンデから雷光を放って飛ばす。
闇と光の力は空中で激突して霧散して消える。
その瞬間にコウジは悟った。
「そうか……魔王が完全に滅した今、お前が今の魔王になったか? フィラース」
「ああ、そうだ。そして、皮肉なことにその男が今度の勇者だ」
フィラースが黄金の瞳で、ジークを見る。そして、ジークもまた剃刀色の瞳でそれを傲然と見返す。
ジークが勇者だって!? 魔王を倒したんだから、勇者になるのか? いや、魔王を倒した勇者は、魔王になるんじゃ? いや、だがフィラースがいたのだから……とコウジは軽く混乱する。
そんなコウジにフィラースが視線を移す。
「お前がその男を勇者にしたか? 御使いよ」
御使いって俺のことか!? と考える間もなく、コウジは別の空間へと移動していた。
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