どうも魔法少女(おじさん)です。 異世界で運命の王子に溺愛されてます

志麻友紀

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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~

【16】俺、黒天使……は、はずかちぃ! その2

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 見覚えがありすぎるまっ白な空間。あまりなじみたくもないが、ここは神様の空間って奴だ。
 となりを確認してジークがいることにホッと息をつく。それと同時に「やったわ、召喚成功!」とやけに明るい声がする。

「魔王の空間においても、勇者召喚の強制力は働くのですね。さすがお兄さまですわ」
「うんうん、コウジは私の御使いだからねぇ。いつでも呼べることは呼べるのだけど」
「……そんなホイホイ呼ばれたくないんだけとな」

 空間にいたのは頭には花冠に古代風のドレスのアルタナ女神だけではない。いつもの重役机に社長の椅子に腰かけた、相変わらず顔が見えないコウジの世界の神がいた。
 この神様の本体はもしかして机と椅子も含めてなのか? と思う。
 いや、それよりとコウジはアルタナ女神をギロリと見た。

「おい! 女神様よ。あんた、魔王を倒した勇者が魔王となることを知っていて、俺達に黙っていたのか?」
「わたしは知らなかったわよ。自らの創造世界を魔界に侵食されたときに、勇者召喚が出来るのはその世界の神だけだもの」

 「だからわたしは手を貸しただけ」と花冠の女神の冷ややかな視線の先には、白い瀟洒な鳥かごがあった。中にはいっているのは鳥ではなく白い蛾……女神モルガナの化身だ。彼女は「ここから出してよ!」と叫んでいるが、アルタナの「うるさいわね!」のひと言でその声は聞こえなくなった。どうやらこの鳥かごは防音機能も付いているようだ。

「では、私からも質問だ」

 とジークが口を開いた。

「その勇者召喚があのような形で変質して、神々の世界は幾度も侵食され魔界は巨大化してきた。これはあなた達にとっても大事ではないのか? なぜ、このことを神でありながら、いずれの方々も知らなかった?」

 そうだ。勇者召喚がバグと言っちゃなんだが、あんな事態に陥っていたのに、ずっと魔勇者であるフィラースが召喚されて、覚醒を繰り返し力は増幅させて、魔界もまた大きくなってきた。これは結構な大事ではないか? とコウジも思う。

「以前に話したと思うけど、我々神々は基本お互いの世界に干渉しあうことはないのだよ」

 「情報共有なんてないしね」とへらりとコウジの世界の神は笑う。

「それにだ。侵食された世界にしても、そこに暮らす者達からすればたしかに大事かもしれないが、侵食された“一部”は切り捨ててしまって、また新たに創造すればいいだけの話なんだよ」

 「創り上げるのに君達からすれば気の遠い年月だとしても、われわれ神々の時間は無限だからね」との言葉にコウジは「結局トカゲの尻尾切りじゃねぇか」と言う。

「まあ、あともう一つ、誰だって失敗は穴に埋めるみたいに隠したいものさ」
「なんだよ。その赤点のテストを母ちゃんに見せないで、机の奥に突っ込むガキみたいな考えは!」

 つまりは自分達の失態を隠しておいて、次の神、次の神へと押しつけ、その神様もまた臭い物に蓋とばかりにやらかした結果がこれだというのだ。

「それでどうするんだ? ジークが勇者になっちまって、魔勇者から魔王に“出世”したフィラースを倒せってあんたらはいうのかよ?」

 コウジの言葉に「あら、そんな必要はないわよ」とアルタナ女神は言う。

「残念ながらモルガナの世界はもう救えないわ。だからこの次元から、あの世界ごと切り捨ててしまえば、魔界は再び時空の海をさまようことになるでしょうね」

 アルタナの言葉にモルガナ女神の化身たる白い蛾がばたばたと、鳥かごの中で羽を動かしている。おそらくは自分の創造世界を魔界にくれてやるなんてとんでもない! とかなんとか叫んでいるのだろうが。

「魔王はもともと堕ちた神。その寿命は無限だけど、勇者に選ばれた者は人間よ」

 ジークは人間だから百年足らずで亡くなる。魔界が次の神の創造世界と接触するまでは、数百年どころか千年以上かかることもあるという。

「だから勇者が亡くなったなら、次の世界ではまた異世界から別の勇者が呼ばれるでしょうね」

 結局先送りかよとコウジは呆れるがジークが「女神アルタナよ」と口を開く。

「あなたは肝心なことを忘れている。もともと私達が勇者召喚と魔王討伐に協力したのは、モルガナ国とフォートリオンを隔てる、虚海の結界がもろくなっており、魔界の侵攻がこちらに迫る可能性があったからだ」

 そのジークの言葉にアルタナは「ああっ! それがあった!」と叫んだ。本当にうっかり女神様だ。

「勇者ジーク・ロゥよ! 今すぐに、あの魔王となった魔勇者を倒して、フォートリオンを守りなさい!」
「あのな。ジークがフィラースの野郎を倒したら、今度はこいつが魔王になっちまうじゃねぇか!」

 まったくやっかいなことにだ。勇者が魔王を倒すというのはそういうことだ。

「世界を救うためには、多少の犠牲はしかたないことじゃない」
「わかっていたけどよ、まったく神様ってのは自分勝手だな!」

 まあ、神様から見りゃ己の作り出した世界のものをどう扱おうと自由というのがあるのだろう。箱庭で家を壊して遊ぶ子供みたいに……と考えるとゾッとするが。

「私はコウジ。あなたがいるならば世界がどうなろうと構わない」

 じっと自分を見つめるジークにコウジは苦笑する。

「ジーク、俺はお前がけっこう自分の国を大切に思っていることを知っている。フォートリオンを守ってお前が魔王になるっていうなら、俺もつきあうさ」

 それこそ地獄まで……だ。魔界って地獄か? と思うが。
 しかし、それに「それは困るなあ」とつぶやいのは、コウジの世界の神だ。

「繰り返されたいびつな勇者召喚の因果律の重なりを、そのままその王子様が受け継ぐことになる。さらなる強力な魔王の誕生だよ。
 そのうえに私が創造した“御使い”までその“番”として堕ちて二柱の強力な荒魂あらみたまとなるなんてね」
「“御使い”ってフィラースの奴も言っていたな。それ俺のことか?」

 コウジが訊くと「気付いてないのかい?」とコウジの世界の神の言葉ともに、コウジの前に神社の祭壇で見るような丸い鏡、そのでっかいのが出現する。
 そこに映った自分の姿にコウジは「なんじゃこりゃぁ!」と叫んだ。
 黒いスーツの痩せたおじさんの背中には、黒い大きな翼があった。

「じ、ジーク、俺の背中に羽がある」
「うん、綺麗だ」

 いや、そうじゃないだろう? と思うが、目の前の王子様は自分がミジンコでも構わない男だから、羽根つきでもいいのかもしれない。
 しかし綺麗だって……綺麗って……いや、黒いのになんかキラキラ金色に輝いてない? もう一度、なんじゃこりゃああ!!

「いや~すごいねぇ。確かに君は私が久々に手ずから作った創造物とはいえ、その魂は人間だからねぇ。 正直ここまで“進化”するとは思わなかったよ」
「進化って俺はポケモンかなんかか! いや、それよりこんな羽! いくら中二病設定のキャラだって、これじゃ恥ずかしくて外も歩けねぇよ!」

 漆黒の羽に堕ちた俺……とか、それどんなビジュアル系? だし、おじさんにはまったく似合わない。

「ああ、その羽は君の意思で自由に出したり消したり出来るはずだよ」
「マジか? え~と、消えろ、消えろ! 消えた!」

 鏡の中で背中から羽がなくなりコウジはホッと息をつく。
 これで羽根つきのコスプレから解放された。





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