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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【18】優しさだけでは…… その1
しおりを挟む「戦いは極力避けねばならない」
フィルナンド王の言葉には重みがあった。外交の失敗が戦争という言葉通り、武力行使は最終手段であって、安易に力など使わないのが賢明な統治者というものだ。
円卓会議の間。メンツはいつものごとくの三王子にそれぞれのパートナー。そしてロンベラス将軍だ。
代替わりしたばかりの若い元老院議長と、おろおろするばかりの宰相や大臣達は当然のごとく追い出された。
事務方としては優秀だが危急の事態には慎重論ばかりで役に立たない官僚に、己の保身しか考えていない元老院の貴族共ばかりが、国の中枢のメンツってどうなんだ? と思わないでもないが、これが今のフォートリオンの現状だ。
なにしろ災厄の影であった、今は名前も消された正妃アルチーナが消えてたった一年しかたってないのだ。彼女の陰謀で毒を盛られていたフィルナンド王は、ここ数年病床に押し込まれて、政から遠ざけられていた。その影響と傷はあまりにも大きい。
人材育成には時間がかかるものだ。ないものを嘆いてもしようがない。
それにある意味でこんな危急の事態には頭数が少ないほうが、逆に方針を即決できるという利点もある。
なにより、これも怪我の功名だろうが、先の災厄討伐から続くモルガナの聖女騒動をへて、いまフォートリオンの王家は、聖王グラフマンデや中興の祖と呼ばれるカーク大帝以来の力を持っていた。
災厄を討伐したのはジーク達三王子であり国民から絶大な支持を受けていること。さらには他の王子達はパートナーたる魔法少女が全員元の世界に帰還しており、三王子と並ぶほどの魔法騎士としての力はない。
さらには聖女騒動で有力貴族が主家である王子達十七人がフォートリオンを裏切りモルガナ側についた。モルガナ女神の力に魅了されたとはいえ、国を滅ぼそうとする陰謀に荷担したわけだから、言い訳も出来ない失態だ。
有力貴族の家をすべて取り潰すなど手間がかかると、すべての王子は亡命扱いで王位継承権や爵位も剥奪。主家も王子を放逐、その名前を王統図から抹消という形でフィルナンド王は手を打った。
これで王子達の主家の力が、王家に対して格段に下がったことは言うまでもない。彼らが主要な地位を占める元老院もだ。
絶対王政、独裁などと言葉は悪いが、こういうときには迅速に動ける。そういうことだ。
「しかし、あちらの要求を呑むことが出来ない以上、戦いは避けられないでしょう」
コンラッドが口を開く。
円卓の間と言われるとおり、丸い大きな卓の中央には一枚の羊皮紙がおかれていた。
今朝、王都の上空に魔王城が出現し、そこから飛び出した翼ある兵士達。ガーゴイルの集団が、王宮の庭に降りたって「魔王様より、この国の王への通達だ」と置いていったもの。
王へとあてた“親書”ではなく“通達”ときた。いかにも傲慢不遜な魔王のイメージ通りではある。
そして、その内容もまた苛烈なものだった。
フォートリオンの全面降伏と魔王への臣従。これを受け入れるならば、王侯貴族の“領主”として役目はそのまま魔王に一定の税を納めればよいと。
猶予の期間は三日。これを過ぎれば四日目の朝に魔王軍は王都に侵攻し、王族、貴族たちの命はないものと思えと、そんな内容だ。
繰り返すが外交の失敗は戦争であるからして、魔王のこの一見攻撃的な書状もまた、巧みな交渉の方法であった。
降伏を受け入れるならば、王侯貴族としのてお前達の地位は安堵してやる。受け入れないならば死が待つのみだぞ……と。
コウジはつくづくここに元老院の貴族共がいなくてよかったと思った。彼らがいれば一気に降伏へと話が傾いたに違いない。事なかれ主義の官僚達も、それに同調したはずだ。
「それで王様、降伏を受け入れるのか?」
「冗談ではない。降伏すれば、こちらの領土地位もそのままだと? そのようなムシのいい話を受け入れられるほど、余はおめでたくないぞ。
最悪、魔王軍が無血開城でこの王宮にやってきたとたん、王族貴族がひとまとめに始末されてしまえば、それで終わりだ」
たしかにこの書面通りの〝保証〟などどこにもないが……。
「モルガナでの魔王の統治を見ましたが、略奪もなく民に課せられる税は、以前の神殿に収めていた喜捨よりも逆に心ばかり少ないほどだったとか」
ジークが口を開く。率直なその物言いは、フィラース本人は気に入らないが、彼の行動までは否定しないと、どこまでも公明正大な王子様だ。
「魔王とやらは統治者としても優秀らしい」とフィルナンド王は顎に手をあててうなり、「ならばなおさら降伏は受け入れられんな」と結論する。
「支配した土地でそのような“善政”がなされているならばなおさらだ。魔王は言葉通り我らを“領主”として間接的に統治するかもしれん。
だが、同時に我らは魔王へ収める税と、領主としての税の二重取りということになる。まともに足し算したならば、民に課す税は当然重くなる」
フィルナンド王の言葉にコウジはなるほどとうなる。しがないコンビニのバイトで、修羅の町中目黒の掃除屋にはない感覚だ。せいぜいが消費税がたけぇなあ~と顔をしかめる程度で、税金なんて身近にあるものではない。
「仮にそうなったと仮定して、国庫の取り分を減らして、魔王への“上納金”を捻出したとしよう。民が収める税率は変わらないようにな。
とはいえ、税とはなにも王侯貴族が贅沢に暮らすためのものではない。公共事業に役人や兵士達への給与と様々なものに使われるものだ。民への税率は変わらずとも、こちらの手持ちが少なくなった分、そのやりくりも大変であるぞ」
フォートリオンは豊かな国だ。百年に一度の災厄が襲うという状況であっても、王家の統治は千年にわたり安定し、その税金は比較的軽いと言える。
その長年変わらない税を増やすとなれば、確実に反発は出るだろう。やり方によっては民が暴徒となって王家は転覆。魔王の直接統治となりかない。
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