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どうも魔法少女(おじさん)です。【3】~魔王降臨!!おじさんの昔のオトコ!?~
【19】おじさんの為に争わないで、再び…… その2
しおりを挟むフォートリオンの王宮正面の前庭。式典の日は整然と騎士や兵士達が居並ぶ広大な空間には、フィルナンド王にジーク以下の三王子、そして、魔法少女のミニドレス姿のシオンにマイア、いつも通りの黒いくたびれたスーツ姿のコウジが立つ。
そこに上空の魔王城より翼ある二角獣にまたがった魔王フィラースが降りてきた。三日の刻限の時間ぴったり、そして供も連れずに単騎とは、彼の魔王としての絶対の自信を現しているようだった。
実際、魔勇者から魔王となった彼の迫力はさらに増していた。その頭の捻れた大きな角だけではない。光を捨てて闇のみとなった長身から発せられる気は、重いものだ。
彼がバイコーンからひらりと降りて、こちらをただ見ただけでマイアは思わず一歩あとずさり、いつもは冷静なシオンさえこわばった表情となった。
フィルナンド王はたじろぐことなく「魔王よ」と呼びかけた。
「そなたの出したフォートリオンへの宣戦布告状であるが」
「そのようなものではない。あれは通達だ。降伏か死か。簡単なものであろう」
まったくこの男らしいはっきりした物言いだ。フィルナント王は「さて」とあごに手をあてて。
「そなたに臣従すれば、我らはそなたの臣として、このままこの地の領主となれると? ずいぶんとお優しい征服者ではある。
だが、我らが地位が約束されるという保証はどこにもない。降伏したとたんに、首を刎ねられるのはこちらもゴメンなのでな」
「なるほど、無駄に歳はとっているわけではないようだな。老王よ。
敗者など勝者の慈悲に縋るしかないというのに、生意気な……と言いたいところなれど、気が変わった。
コウジをこちらに寄こすならば、このようなちっぽけな国などいらぬ。魔界はこのままこの世界を去るとしよう」
自分の名が出たとたん、ぐわりとジークから立ち上がった剣呑な気配に、コウジはどうどうどう……とばかりにジークの軍服の上着の後ろ裾を掴んだ。まさか勇者が魔王にいきなり取っ組み合いのケンカを仕掛けるとは思わないが。
「コウジを寄こせと?」フィルナンド王はあごに手を当てて考えるそぶりを見せながら。
「一人の男にフォートリオン一国ほどの価値があると?」
「そうだ」
「魔王よ。コウジを引き渡したところで、この国の平和が本当に得られるかどうか、それもまたわからぬ。
まして、これはそなたに対しての唯一の切り札である“勇者”の相棒であるからな」
世間に言われている盟友ではなく、コウジが言う相棒と口にする。こんなときなのにフィルナンド王のその茶目っ気に、コウジは思わず内心でクスリと笑う。
「つまりは、私に臣従することも出来ない。コウジも引き渡さないと?」
「このフォートリオンの安寧の確約がない以上そうなるな」
「のらりくらりと……では、全力でお前達を踏み潰すとしよう」
そのフィラースの言葉に「魔王よ」とジークが呼びかける。
「なんだ“勇者”よ」
その勇者という物言いには、少し馬鹿にしたような皮肉な響きがあった。そんな挑発にのるようなジークではなく、彼は真っ直ぐに要件を口をする。
「あなたとの一騎打ちを申し入れたい」
「ほう、なかなか勇ましいが、私がそれに応じるとでも?」
『では、わたしの名の下にならば受けてくれるかしら?』
その場にいた全員の頭の中に声が響き渡り、空中に光り輝く花冠の女神アルタナが現れる。「これはこれは、この世界の女神のお出ましとはな」とフィアースも軽く目を見開く。
「魔王よ、勇者との一騎打ちに勝ったならば、あなたにこの大地をすべて譲り渡しましょう。
その代わりにあなたが敗北したならば疾く、この次元を去りなさい」
「ほう、魔界に侵食された世界を切り捨てるのではなく、己の創造した世界すべてを賭けるとは、ずいぶんと剛毅な女神もいたものだ」
フィラースは「面白い」と声をあげて笑う。
「その挑戦、受けて立とう」
「なりません、陛下」
そのとたんにフィラースの後ろへ転移によって姿を現したのは、魔族の青年であるデクスだ。
「御自ら戦う必要などどこにもありません。軍団はすでに準備が整っております。たったひと言、進軍の下知を下さるだけで……」
「なぜ出て来た? お前は城にて、全軍とともに待機と命じたはずだ」
後ろも振り返らずにフィラースが言い放つのに「しかし」とデクスが言いつのろうとしたが。
「そこの勇者をひねり倒すだけで、魔軍の一兵も損ねることなく、このフォートリオンが手に入るというのだ。この挑戦を受けなくてどうする?
力こそすべての魔界にあって、魔王が臆病風に吹かれて、先陣切って戦わずに大軍の奥に守られていたなど、他の者にも示しがつかん。
自ら戦ってこそ、魔王よ」
「さあ、城に戻れ、命令だ」とフィラースに言われ、デクスは唇を噛みしめてこちらをにらみつけたものの、一礼してその姿が消える。
「さて、ここで戦うか?」という魔王に女神アルタナが「いいえ、場を設けます」と返す。たしかに王宮の庭は広いが、ここで魔王と勇者が激突すれば、王宮が全壊どころか、王都にも被害が及ぶ。
アルタナ女神が「用意を」と背後に控える、事務服、七三分けの青年に命じる。その彼を見てフィルナンド王は軽く目を見開いたが、アンドルのほうは逆に目をそらした。
しかし、アンドルも女神の眷族としていっぱしにはなったのか、彼が空中に浮かび展開した空間は見事なものだった。
王宮と遥か上空に浮かぶ魔王城との中間地点に、浮かぶ巨大なコロシアムは作られた。みんなの姿もまたその場に一瞬にして転移する。
コムシアムの中央へと向かうフィラースに続いて、ジークもそちらに歩みだそうとするが、くいと軍服の裾が引っぱられる。コウジが、あ、しまった、つかんだままだった! と放したが、逆にジークの腕がコウジの腰に回り。
「ん……」
口づけられていた。こうなりゃやけくそだと、自分も青年の首に腕を回して、ひとしきり応えたあと唇を離して「負けたら承知しねぇぞ」と言ってやる。
「もちろん、勝つ」
「いいや、勝つのは私だ。この世界も、そしてコウジ、お前も手にいれる」
コロシアムの中央に立つフィラースとジークとのあいだにバチバチと見えない火花が散る。
世界をかけた魔王と勇者の決戦のはずなのだが……。
フィルナンド王の「華麗なる恋のさや当てだな。どうだね? 美男同士の決闘の褒美になった気分は?」との言葉に、コウジはがくりと脱力したのだった。
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