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末っ子は大賢者!? ~初恋は時を超えて~
【57】勇者対勇者の巨大怪獣!?決戦!!
しおりを挟む「次は私だな」
ひっくり返ったカルマンも騎士達に運ばれていき、ノクトがアルパに歩み寄る。
「連戦だがいけるか?」
「もちろん、良いお相手で身体もほぐれました」
真顔で訊ねるノクトに、アルパがにこやかに答える。それでは、赤狼達との戦いが、ただの準備運動のように聞こえるが、本人に悪気はない。
そう、勇者達にとっては。
「では、今回は互いの剣は無しの、素手で行くか」
「はい、それで行きましょう」
そのやりとりに壁際で見ていたスノゥがぼやく。
「だから、聖剣は持ち出すなとあれほど禁止しただろう」
「それは壊れるものがないところでやれと、お婆様が怒ったから、二人とも守っています。偉いです」
モモがお爺さまとアルパはえらい! とにっこりするのに、スノゥが「守ってくれなきゃ、この鍛錬場どころか、王宮が壊れるだろうが」とぼやく。
あの二人、初めの鍛錬で熱くなりすぎて、お互いの聖剣を取り出したのだ。
「馬鹿野郎! この家壊すつもりかぁあああ!!」
二人の中庭での戦いの様子を卵サロンの三階で見ていたスノゥが飛び降りて、二人の間に決死の勢いで飛びこんだ。両人ののど元に双剣を突きつけて怒鳴った。
「それは、いけません。お爺様とお婆様とモモの思い出もたくさん詰まったお家が無くなるなんて!」
瞬時に転移してきたモモも、スノゥの怒鳴り声に涙目になり、黒狼達の尻尾はしゅん……と垂れ下がった、経緯がある。
「……とはいえ、素手でもこの鍛錬場がヤバいな」
「修理代が……」と放浪の赤貧時代の思い出から、ケチ……ごほごほ節約家が身に付いている、スノゥがぶつぶつとつぶやく。
「モモ、この闘技場全体を結界で覆えるか?」
「出来ますけど、さすがに勇者二人の戦いに耐えられる結界となると、隠形の術は解かないといけません」
「かまわない。どうせ、あいつらにはバレバレだ」
「はい! いきます!」
モモはその手に星のロッドを出現させると、隠形の術を解く。いきなり壁際に出現した、二人の姿に騎士達が目をむく。
が、モモの美しい旋律のような呪文の詠唱に、うっとりと聴き入る表情とみながなる。隣にいるスノゥも、その旋律と同時に浮かび上がる魔法陣の輝きに目を細める。
そして、対峙する勇者達を中心に美しい球体の結界が張られる。
「さあ、そこなら思う存分戦っていいぞ」
スノゥの言葉にお互い視線を交わし、二人の勇者はうなずきあう。そして。
互いの拳を叩きつけ合った。
その瞬間、結界内でとんでもない爆風が巻き起こり、中が閃光でまっ白に。たちまち見えなくなる。
「爆発!」
「忍びこんだ他国の間者の仕業か!」
「馬鹿者。慌てるな!」
「副団長!」
そのとき息を吹き返していたカルマンが、慌てる騎士達を一喝する。
「モモの結界内に誰かが忍び込めるものか。あれは強力な拳を叩きつけあったことによる、衝撃波が爆発に見えたのだ」
己の腹を撫でながらカルマンが説明すれば。
「たしかに、モモ殿は大賢者の弟子と呼ばれていましたな」
「しかし、拳を叩きつけ合うだけで、あのような爆風が?」
「流石、伝説の勇者である宰相殿」
「それを言うならば、拳を叩きつけ合って同じく爆発した、あの宰相殿そっくりな青年は?」
「これはますます、副隊長殿の隠し子説が……」
「しっ!」と言い、ごまかすように咳払いする年かさの騎士と若い騎士達の会話に、カルマンは先ほどのような怒りの表情ではなく、苦笑するしかない。
「これはまだ、ずいぶんと手加減……いや、撫でられたようなものか」
まだ痛む腹を撫でながらぼそりとつぶやく。
そして、父と同じく息を吹き返していた九人の赤狼の息子達も、うなだれて……る場合ではなった。
みんな、末っ子の作ったまん丸球体の結界内を、目をカッと見開いて、瞬きもせずに見つめている。クロウなど、そうしながら、両目から涙を流し男泣きするという、器用なことをしている。
「俺は、俺は……なんて馬鹿だったんだ! 自分の実力もわからず、ノクト爺様と対等に戦える相手を優男の格好つけと舐めていたなんて……は、恥ずかしい」
そのときクロウの肩を温かな手がポンと叩いた。
「私もだよ」
「タロウ兄」
「正直、あの方の実力を舐めていた。今と昔では違うのだと。お爺様のことは認めていても、あの方は、意地を張り認められなかった」
「私達は可愛い末っ子可愛さに、目が曇っていたようだ」というタロウの言葉に、兄弟達全員がうなずくしかなかった。
「あの……」
そんな肩をたたき合う兄弟達に、恐る恐る一人の騎士が声をかける。
「皆様方には、あの結界の中の戦いが見えるのですか?」
それに「あれが見えねぇのか!」とクロウが叫ぶ。
「くそっ! あんなスゲえの、素手なのに真空派とか気を飛ばし合うとかなんだよ! 時々見失うし、動き速すぎてついていけねぇ……」
「また修行しなおしだ……」とうなだれるクロウや頷く赤狼の兄弟達に、他の騎士達は内心で。
「いえ、私達にはまったくさっぱり見えないのですが、素振りからはじめないといけませんか?」
という顔だ。
「……結界張ってなきゃ、初手の一撃でこの鍛錬場吹っ飛んでいたな」
スノゥが腕組みしてつぶやく。モモを見て「保つか?」と聞く。
「一応、三日でも余裕で保たせられますけど」
「さすが大賢者様だな。勇者同士の戦いだっていうのに」
「照れちゃうからお婆様まで言わないでください。アーテル伯父様もからかうし……」
とモモは唇をとがらせ。
「でも、三日となると眠くなっちゃいます」
「まあな。一日だって腹がへる。このままだと百日たっても決着がつかねぇしなあ」
「百日はさすがに無理です」
「俺も付き合いきれねぇよ。そろそろ引き離すか」
「なら、僕が壁を落とします」
「ああ、モースの爺さんの得意技、お前も引き継いでいたか」
スノゥの言葉と同時にモモは円形の結界を解いた瞬間。
駆け寄り互いに拳を叩きつけようとする、勇者達二人の間に、ドスンと天井から大きな壁が落ちた。
物質ではなく、結界があまりに強力で実体化したように見える『壁』だ。
その壁のアルパ側には、桃色の戯画化された垂れ耳兎が「ケンカはイケません!」と叫んでいる顔が描かれ。
そしてノクト側には、これも戯画化された白色兎が腕を組んで、ギロリとにらみつけて「いい加減しろ!」とぷぅ! と怒っている姿が描かれていた。
「……なあ、爺さんの結界の壁はあんなだったか?」
「僕がただの壁だと楽しくないからって、お花とか描いてみたら、大先生がそれはいいって、喜んでくれたんです!」
「そうか。まあ酔狂な爺さんは喜ぶよな」
スノゥが脱力する。そして、この可愛い? 壁にすっかり戦意喪失したアルパは苦笑して、モモを見て、ノクトはいつものむっつり顔でスノゥを見ていた。
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