206 / 213
末っ子は大賢者!? ~初恋は時を超えて~
【56】これが本当の拳と拳で語り合うです!
しおりを挟む「モモ、お前なぁ……自分の兄貴達がコテンパンにやられたのに、少しは可哀想に思えよ」
鍛錬場の真ん中に一人立つアルパの姿に瞳を輝かせるモモに、スノゥが言う。
「え~だって、こちらの話も聞かずに頭ごなしに反対したのは兄様達だし。それに自分の番の味方をするのは当然でしょ?」
「だな」
「ほら、お婆様だって、お爺様とお父様がケンカしたら、お爺様の味方なんでしょ?」
「ノクトとカルマンか。俺はどっちの味方もしないな」
「ええっ!? お爺様、かわいそう!」
「可哀想なのはカルマンだろう。負けるに決まってる。お前だって兄貴達の心配のほうしていただろう」
「それはそうか」
あっさりとモモがうなずく。どちらも自分の夫が勝つと思っている番の会話を聞いたら、黒狼達の尻尾はブンブン回転しそうだが、赤狼達の尻尾はたらんと下がりそうだ。
「次は俺の番だな」
鍛錬場の四方八方で伸びている赤狼達が、他の騎士によって邪魔にならない、片隅へと運ばれるなか中央に立つアルパに、カルマンが真っ直ぐ向かう。
「大丈夫かな?」とモモがつぶやくのにスノゥが「カルマンがだな」と訊き、素直に「うん」と頷く。この会話も赤狼の父の耳に入ったならば、ひと月ぐらいは尻尾が……(以下略)。
「歯ごたえのない息子達で失礼した」
「いえ、この私の身体に触れるだけでなく、掴むことが出来るなど、十分にお強い」
アルパとしては褒めたつもりだろう。にこやかな笑顔が物語っているが、ぴくりとカルマンの筋骨たくましい肩がはねた。赤く太い眉の眉間にぐっとしわが寄る。
「そちらこそ、小手先の技でひらりひらりと身軽にお避けになることばかりがお得意ではあるまい? 是非とも、今度は我が拳を受けてもらいたいものですな」
「ええ、喜んで」
アルパが頷くと「ではお言葉にあまえて!」とカルマンがおもむろに拳を振り上げた。
それをアルパは避けずに、まともに腹に受けた。
「アルパ!」
思わずモモが飛び出しそうになるが、それをスノゥが後ろから抱きしめて留める。「大丈夫だ」となだめる。
その言葉通り、アルパは岩をも砕くと言われるカルマンの拳を受けて、微動だにしなかった。その上体はまったくぐらつくことなく「お見事」とカルマンの拳が離れるときに告げる。カルマンもまた「さすがですな……」と、拳を向けた側というのに表情が冴えない。額に汗さえ浮かべている。
「流石だな。腹筋を締めて防御しやがった。あのカルマンの拳だからな。多少は痛かったかもしれねぇが、びくともしねぇとは」
スノゥがつぶやく。アルパは無事だと、ホッと息をついたモモが、スノゥに抱きしめられたまま、後ろを見て。
「アルパの腹筋バキバキだもんね。モモが触ると柔らかいけど。お爺様もそうなの?」
「宰相様なんていわれて机に座っちゃいるが、今でも鍛錬は欠かしていないからな。あいつは俺が触ってもバッキバッキ……」
そこでスノゥは言葉を濁した。ほんのり赤くなった祖母の雪のような頬に、孫息子は「あ……」とこちらも赤くなる。
モモが触れた初めは柔らかいけど、カチカチになります……なんて言わずに。
「は、はしたないことを口にしました」
「いや、こちらこそ……だな。孫とする会話じゃねぇ」
お互い旦那? 持ちの人妻? だからして、まあ、そこらへんはお察しだ。
「では、今度は私ですな」
そしてアルパが拳を振り上げる。そして、カルマンの腹にそれがめり込んだ。赤狼の副団長のたくましい身体がぐらりとぐらつき、見ていた観衆がざわりとざわめいた。
しかし、カルマンはグッと奥歯を食いしばり、よろめきながらも、その場に留まった。
「あいつ、吹っ飛ばされずによくふんばったな」
スノゥが褒めるが「しかし……」と続ける。
「まあ、これが限界だな」
「え?」とモモが訊く声と「お、おみごと……」とカルマンがようやく言い、そして……後ろにどさりとひっくり返る音が重なった。
100
あなたにおすすめの小説
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。