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【最終話】これからもよろしくな! ※
しおりを挟む頭を抱えてうずくまるアディオダスの回りには誰もいない。
赤い衣の枢機卿達だけでなく、帝国側から派遣されていた護衛の騎士達に、常にそばにいたあの秘書官もだ。
全員帝国に帰ってしまったのだ。
皇帝死去のみならず、その皇帝を選ぶ選帝侯家の全ての当主が亡くなった。
これでは皇帝を選ぶ前に、まず選帝侯家の当主を決めねばならないと、枢機卿達がまず真っ先に帰り。
「本国より帰還命令が出ております」
と秘書官もすがるアディオダスをあっさりと振り払い、これまた転送陣に消えたという。
護衛の帝国兵士達も連れてだ。
かくて兄皇帝という最大の後ろ盾を失い、文字通りの一人ぼっちとなった哀れな老人はがくがくと震えているわけである。
ちっとも哀れにはジョウは思わないが。
「どうして帝国が猊下を害すことがあるのですか? 猊下は亡き皇帝陛下の弟君。次期皇帝にもなれる方をどうして?」
ジョウはにこやかに訊ねるが。
「皇帝になど成りたくはない! 帝国に戻ってそんな馬鹿に担ぎ出されてみろ! たちまちのうちに、ワシの命など握りつぶされるわ!」
まさにアディオダトが怖れているのはそれなのだ。
死んだ帝国皇帝には例のゾエ皇女を末に五人の子供がいるが、全員が皇女。つまり一番皇帝に血が近い男子は、アディオダトのみということになる。
「猊下、ご安心ください。猊下は法王。神々の一番の僕ではありませんか。還俗なされない限りは、どなたも帝位につけることは出来ません」
「そ、そうだ。ワシはここにいる。ワシが法王である限りは、皇帝にはならない! 誰もワシに手出しは出来ん!」
スインの言葉に希望を見出したように、アディオダトは抱えていた頭をあげる。それにスインは「残念ながら」とため息を一つ。
「しかし、この大神殿は神のご加護はあれど、猊下のお命を完璧にお守りすることは出来ません。帝国から来られていた兵士達が帰られた今となっては……」
「この大神殿でも安全ではないというのか? わ、ワシはどうしたらいいのだ?」
「ご安心ください猊下。猊下のお命を唯一完璧にお守り出来る場所が一つあります」
「ど、どこだそこは! ワシはそこに行く!」
アディオダトの叫びに、スインは静かに頷く。その細目の顔は相変わらずうっすら微笑んでいるのか? いないのか、わからなかったが。
法王アディオダトが『病気療養』の名目で送られた場所は、絶海の孤島の修道院。そう、甥であるあの豚、もといバジリスクスが送られた場所である。
もっとも日々のお勤めでひいひい言ってるバジリスクと違い、アディオダトは貴賓室にて三食昼寝付きの安らかな生活を送られたそうだが。
かくてアディオダト以降、法王制度は無くなり、大神殿のトップは以降、大神官長に戻ることになる。
帝国の帝位問題は長く続くことになる。後に大空位時代と呼ばれるその間にも、大神殿への影響力を取りもどそうと、手を出してきた馬鹿がいたが、それを華麗にはね除けたのは、また別のお話だ。
今は今、ひとときの平和? を楽しもう。
「今夜もするのか?」
聖者宮。聖者の寝室。天蓋付きの広い寝台に横たわり、手を突く男を見上げながら、ジョウは言った。
「嫌なのか?」
「嫌じゃねぇけど……」
唇を重ねるだけのキスをくり返し、その合間に口を開く。
聖女の部屋に居座っていたゾエ皇女はとっくの昔に居なくなっていたが、ジョウは相変わらずシグアンと寝台を共にしていた。
というか【大蝕】を祓ってからずっと、一緒に寝ている。
ただ「おやすみ」と言い合って、お手々繋いでねんねするような、清らかなお子様のそれではなく。
「身体に支障でも?」
「うんっ……そんなもの初日っからねぇよ」
乳首を吸われて声をあげる。ここ数日だけどチュウチュウ吸われて、なんか色変わってきてねぇか? と思う。大きくなったりしたら、ちょっと嫌だな。
初めてのときは尻が裂けるんじゃないか? と思ったし、実際流血していたんだろうが、それもシグアンの治癒魔法で、綺麗さっぱり治っていた。
そして、二日目の夜は、そりゃ丁寧に解してくれた。
どこを? って? 訊くな!
うつ伏せの体勢にされて、尻を突き出すあられもない姿。
「あ……だからっ! 舐めるなっ……てっ! うんんっっつ!!」
舐めるどころか、舌まで入れてくるのは初日……じゃねぇ、二日目からもだった。
そりゃ、浄化の魔法をかけて中までしっかりキレイキレイしてくれているから、衛生面では問題はまったくないのだが。
やっぱり気持ち悪い……いや、こいつだと気持ちイイから困る!
「あ、あ、後ろだけじゃなくて……前も……なんてズルぃ……だろっ!」
腹に触れるほどになっている、それをゆるゆると扱かれて、ジョウは身もだえる。無意志にずり上がろうとすれば、腰を両手でつかまれ引き戻された。
そして、背中に口づけの雨が降る。白百合の囲まれた刺青の観音に。
「女神様じゃなくて……俺に口づけろよ」
くるりと振り返って、男の広い背に手を回す。
重なり合う唇。ジョウは両手で、シグアンの背を撫でる。がさがさと凹凸と引きつりがある皮膚を。炎のような烙印が押された火傷のあと。
「うんんっ!」
片脚を抱え上げられて、ずっ……となかにはいってくるたくましい雄に、塞がれている口内にくぐもった声をあげる。
たくましい律動、腹をかき回される戦慄と背中合わせの快感。
「あ、そこ深ぃ……イイっ!」
女みたいに啼く。他のヤツなら今だって八つ裂きにして許さないが、こいつならばいいと思う。
「テメェなら……なにしたって……いいんだ」
男の背に両腕回して、それでも足りなくて、抱え上げられていない片脚もその腰に絡ませてしがみつく。
「ずっと一緒だ」
低い声が耳元でささやく。
抱き合っていると必ず、こいつは誓うように言う。
「ああ、地獄の果てまでだろ?」
死ぬまでどころじゃない。生まれ変わったその先も、その先も。
転生が終わったその先に落ちる地獄まで。
二人一緒だ。
今夜も固く抱き合って、誓い合った。
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完結おめでとうございます、更新ありがとうございました。
思っていた以上にロス感が強く、なかなか感想を文章にしにくい作品でした。
個人的に受けさんが強い作品が好きなのですが、本当に好みです。しかも溺愛。
ラスト近辺の、聖者&聖女の馴れ初めというか過去からの因縁もなかなかの重さとロマンスなエピソードで良かったです。
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ただなぁ…祓うべきブツが神様の汗みたいな感じなのがなぁ…
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とにかく好みな設定モリモリで楽しく読ませていただきました。ありがとうございました。
感想ありがとうございます。
強い攻めが大好きで溺愛も大好きなので、同士~と心の中で握手しておりました。
神様の汗……そ、その通りw
それはともかく二人はずっと一緒だと思います!
詳らかにして頂きたい一読者の想いはありつつも
ふたりが思う存分いちゃいちゃできるのにほっこりです。
最後までうっかり愛され過ぎてて萌えます。
ええ、うっかり愛され過ぎちゃう、おジョウ様ですw
感想いつもありがとうございました。
完結おめでとうございます🎊でも、二人に会えないのはさみしいですぅ
いったん完結つけましたが、また番外編思いついたら、ちょろちょろと書きたいと思います。