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第一章/第二陣 元少年、Sランクへの道!
第2話 依頼
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冒険者になり、陽が暮れてきた事もあって宿探しに奔走していた。
王都の次に大きな街だからか冒険者区画も中々に広く、この辺りは成りたての冒険者が多いと聞いていたのだけど宿が少なかった。
決して数が少ないというわけではない。
ただ、国に3人しかいないSランク冒険者専用の宿だったり、Bランク以上の宿だったり、Eランクの成りたて専用だったりして入れなかっただけなのだ。
Dランクの人たちはそのことを知ってか数の少ないそれ以外の宿を確保していて、Cランクとなると逆にこの街には来ないとのこと。
つまりCランクの冒険者は非常に珍しく、飛び級のようにCランク冒険者になるのであれば別の街までわざわざ行くのだと聞いたときは脱帽した。
そんなこんなで中々宿が見つからず、結果冒険者区画から一般区画に行き通常の宿に泊まることになったのだ。
宿を決めた後は防具と武器を買いに出かけた。僕たちの所持金はそれなりの量があるのである程度揃えることが出来るだろう。
冒険者区画にそれはあった。剣と盾が交差するような看板が飾ってあってすぐにわかった。
「いらっしゃい」
如何にも、という筋骨隆々の男性が出てきて、その人がドワーフだとかは無かった。異世界なのに、異世界ではない部分が多々あって少しテンションが下がってしまう。
この世界に転生してからというもの、人以外を見たことが無い。エルフやドワーフと言った王道から吸血鬼なんてものも見かけない。
店内を歩いていると、ちょうどよさそうな物を発見する。
それは片方しか刃のない刀だった。僕はそれを手に取って感触確かめると、おかしなことにすぐに手に馴染んだ。
ミスティには魔法の杖を買い、防具は色違いだけれどお揃いの皮の胸当てを購入した。
これで装備は良いだろう、ということで合計銀貨32枚だった。刀が12枚、杖が6枚で皮の胸当てが7枚だ。
その後、宿に戻って夕食を御馳走になり布団の中に潜った。
朝になり、宿の支払い銀貨2枚を二人分済ませてギルドに向かうことにする。今日から冒険者の仕事をするのだ。
一般区画から冒険者区画は隣接しているとは言え、ギルドまで移動するとなると若干遠めだ。
片道徒歩30分というそれなりの遠さをミスティと歓談して暇を潰し、一般区画なので僕たちのことを心配しているような目で見てくる住民もいた。
何がそんなに心配させているのかがわからないけれど、一応周りに気を配っておこうと思う。
ギルドの中に入ると、朝にも関わらずたくさんの人が出入りしていて僕たちのことに気にする人はいなかった。いや、朝だからたくさんの人がいるのだろう。
朝に依頼を受けて夕方頃に帰ってくるというのはこれから僕たちがするようなことと似ている。
それでも、若干名の好奇の視線に晒されることとなりミスティが僕の後ろで怯えたり、ということもあったけれど無事に依頼板と呼ばれる、依頼書の張り付けられた木の板のところまで来た。
その板はランクごとに分かれており、一先ずCランクの依頼書が貼っている依頼板のところへ移動する。
「う~ん……Cランクはあまりいいのがないねぇ。受けるとしたらBランクかな?」
依頼書を見て唸っていると、ミスティが一枚の依頼書を持ってきた。
「お姉ちゃん、これは?」
「ん? 『ゴブリン・オーガの討伐』か。定番だね」
「定番?」
「あ、なんでもないよ。じゃあそれにしよっか」
ミスティがそれでいいならそれにしておこう。
ゴブリンとオーガなんて定番の中の定番だよ、楽しみだなぁ。
報酬もこの依頼にしては多く、銀貨25枚とのことだった。
受ける依頼が決まると依頼受付所という窓口に行って依頼の確認と報酬の確認をする。
「初めての依頼ですね……それでは少し説明させていただきます」
窓口にいたのは若い女性職員だった。
僕をみて本当に大丈夫かな? と首を傾げていたけれど、ゴブリンと言えば最弱の魔物なはず。それくらいなら、問題ないだろう。
「依頼に失敗すると違約金が発生します。今回の場合は依頼料の半分を負担することになります。一つ上のランクの依頼を受けると違約金が半分で、一つ下の場合は8分の1となります。同じランクであれば4分の1の違約金が発生しますので、注意してください」
なるほどね。
上の方が多く払わないといけないんだね。普通、下の方が多い気がするんだけど。
「それは、自分の力量を間違ってしまわないように、抑止力も兼ねているのですよ」
と微笑まれた。
つまり僕にこの依頼を受けるなと言いたいのだろうか?
「丁寧にありがとうございます」
「あらあら、気にしなくていいのよ。気を付けてね」
「はい」
受けることに変わりはないのだけど。
依頼の受諾作業を済ませると街の外へ出る。
ミスティは身分証で、僕は冒険者の証を門のところにいる兵士に渡した。
兵士は何か思うところがあるのか訝し気な表情だったけれど、無事に通してもらうことが出来た。
念の為、空間から杖と刀を出しておく。杖はミスティに渡して刀は腰に装備した。
それからゴブリンとオーガの殲滅の為、南下していく。
川沿いに南下していくと、魔物の一匹とも会うことがなく依頼を出してきた村に到着した。
そこでは常に警戒態勢が敷かれているのか、村の周りを囲むように村人と思われる人たちが農具を持ってうろついていた。
「止まれ。この村に何か用か?」
村の門⋯⋯というよりただの柵を一か所だけ開けた場所に行くと、村人が二人いた。
その二人は僕たちのことを胡散臭い目で見ていて歓迎されていないことがわかる。
「私たち、依頼を受けて来ました!」
その言葉に二人は目を見張る。
元気な様子のミスティに毒気を抜かれて僕は平常心に戻った。
「これが依頼受諾証明書と冒険者の証です」
依頼受諾証明書とは、間違ってほかの人なのにその人だと思いこみ、別の人が依頼を受けるという事故を防ぐためのものだそうで、随分と前に出来たシステムらしい。
「嘘ではないようだな。疑ってすまなかったな」
よしよし、と僕たちの頭を撫でる二人。
ミスティはえへへ、と喜んでいるけれど、僕はちっとも嬉しくなんてない。ほんとだよ?
「巣までの案内はこちらでする。ついてきてくれ」
「はい」
二人の内片方が僕たちの案内を買って出た。
「俺はジュバルってんだ。⋯⋯で、本当に戦えるのか?」
ジュバルは僕たちを疑っているようだ。
まぁ、10歳と8歳だし、仕方ない。
「もちろんです」
「それならいいんだが⋯⋯」
一度実力を見せたほうがいいんだろうか?
そんなことを思っているとついたらしく、案外近場にあった。村から1キロ程度しか離れていないんじゃないかな?
僕は探知魔法を発動させる。
魔力をソナーのように使って敵を感知するのだ。魔力を持つ物ならなんでもわかるので、魔力の宿った木なんかの位置も正確に割り出せる。
「100匹以上はいると思うから、気を付けろよ」
100匹⋯⋯ねぇ。
これ、たぶん200は越えてるよ。
多すぎて数えられないけれど、物凄い数が蠢いているのがわかる。それも一か所に集まっていて⋯⋯って、これちょっとまずい?
もしかしてスタンビートってやつじゃ⋯⋯。
「ガガッ」
少し呆然としていると敵に見つかってしまったらしい。
「ジュダルさん逃げっ⋯⋯!?早いよ!逃げるの早いよ!」
既にいなかった。
「ミスティ、援護お願いね!」
と、お願いしても返事が返ってこなかった。
おかしいな、と思い後ろを振り返るとそこには魔力の質が高まっていくミスティの姿があった。
「⋯⋯この位置はヤバイっ!」
咄嗟に逃げると同時に、ミスティの魔法が放たれた。
『業火!』
放たれた魔法は林だったここら一帯に燃え移っていった。
これはまずいと思い、すかさず
『フロストノヴァ!』
で消火していく。
完全に火がなくなった頃合いを見計らってミスティの方へ向き直る。
「もう、勝手に攻撃したらダメでしょ?それに結界も発動してないし⋯⋯」
「ご、ごめんなさい」
すぐに謝ったミスティの頭を優しく撫でる。
すると上機嫌に戻ったミスティが結界を発動した。
うん、上出来だ。
ミスティの周囲を円柱状の結界が覆う。
それと同時に僕は駆け出した。魔力を体全体に流し込むと力が溢れてくる。これは身体強化と名付けた魔法だ。
そのまま、身体能力を強化する魔法。
探知魔法も併用しながらなので魔力の消費が少し激しい。けれど、魔力が尽きる前に終わらせればいいだけだ。
刀を構えて向かい来るゴブリンを横に一閃、縦に一閃、斜めに一閃して次々と斬り伏せていく。
それほど時間がかからずに敵本拠地である洞窟に辿り着くと、中にはゴブリンよりも大きな魔力の持ち主と、ゴブリンよりも小さな魔力の持ち主がいることを確認した。
ゴブリンより小さな魔力の持ち主は人の可能性が高い。さっきのジュダルさんと同じくらいの魔力量だからだ。
さて、どうしようかと悩んでいるとオーガが外へ出てきた。
外の異変がわかったのかな?
僕はオーガに無造作に近づく。
ゴブリンとの戦闘がうまく行きすぎていたから、油断していたのだ。
オーガがこん棒を振りかざし、ゴブリンと同じように振り下ろす前に斬ろうとすると思っていたより早く振り下ろされた。
「ぐぁっ!」
僕の体は後方へ吹き飛ばされる。
それを見てオーガはこちらに走り出した。
「このっ⋯⋯!」
油断していた気を引き締めて刀を持つ手と足に魔力を込める。
ドンッと音が鳴った時には既にオーガの目前まで来ていた。
あまりの速さに平衡感覚を失いそうになるけれど、なんとかそれを耐え抜いて横凪に一振りする。
それだけの動作でオーガは上半身と下半身を真っ二つに斬られて地面にその肉塊が落ちた。
中に入ると、まだオーガがいたので全て殲滅する。
そして、一番奥にはやはり人がいた。
洞窟内部を焼かなくてよかった⋯⋯と安堵し、裸に剥かれている彼女たちに何かないかと思い空間の中身を思い出していると、サイズの合わない服しか思い浮かばなかった。
でも、流石にそれではいけないと思ったので大きめの布を取り出す。
「これを巻いてください」
裸の女性だというのに、興奮することはなかった。
性転換してるからかな?
「ぁ⋯⋯」
僕に気付いた人が涙をほろほろと流し始めた。それに気付いた残り二人の女性も涙を流し始める。
彼女たちの様子を見るにちょっと手遅れだった。もう少し、早く来ていればよかった。そしたら⋯⋯。
「⋯⋯ありがとう、ございます」
「いえ⋯⋯僕こそ、もう少し早く来ていれば⋯⋯」
「いいんです。助かっただけでも⋯⋯本当に、本当にありがとうございます」
号泣して訴えかけてくる彼女たちに罪悪感も薄くなり、僕は頬をぽりぽりと掻く。
「とりあえず、ここを出るので⋯⋯僕の服はサイズが合わないのでこの布を体に巻いてください」
僕が渡したのはバスタオル代わりに使っている布なのでそれなりの大きさがある。色はバラバラだけれど、それでもつけないよりはマシだということでおおむね快くつけてもらえた。
僕は彼女たちを引き連れて外へ出る。
すると、ミスティが待ちくたびれていたようで結界の中ですやすやと寝ていた。
幸い魔物がいなかったようで安心する。
「ミスティ、帰るよ」
そっと起こしてあげると目を擦り体を持ち上げた。
「ん⋯⋯、わかった」
僕はきっちりオーガの死体を全て空間に仕舞ってから村へ戻る。
「お、お前ら⋯⋯!無事だったんだな!」
戻ってみると村の門周辺に農具を持って決起している村人たちがいた。
彼らの中からジュダルが出てきて女性たちが無事なことを喜ぶ。
「じゃ、これで依頼は完了ということなので戻りますね」
「ああ。ありがとう。本当にありがとう」
村人たちからたくさんの感謝の言葉をもらい、その場を後にした。
「はい。おめでとうございます⋯⋯無事でよかったです」
「へぇ⋯⋯こうやって依頼達成数を⋯⋯」
僕は冒険者の証に一つ増えた項目を見る。
そこには「依頼達成数:1/1」と書かれていた。
オーガの死体を見せると、その場にいた職員やら冒険者やらが驚いていたけれど、気にせずに手続きを済ませる。
受付の人から依頼達成の報酬である銀貨25枚を貰うと、僕たちは宿でごはんを食べてから眠りについた。
王都の次に大きな街だからか冒険者区画も中々に広く、この辺りは成りたての冒険者が多いと聞いていたのだけど宿が少なかった。
決して数が少ないというわけではない。
ただ、国に3人しかいないSランク冒険者専用の宿だったり、Bランク以上の宿だったり、Eランクの成りたて専用だったりして入れなかっただけなのだ。
Dランクの人たちはそのことを知ってか数の少ないそれ以外の宿を確保していて、Cランクとなると逆にこの街には来ないとのこと。
つまりCランクの冒険者は非常に珍しく、飛び級のようにCランク冒険者になるのであれば別の街までわざわざ行くのだと聞いたときは脱帽した。
そんなこんなで中々宿が見つからず、結果冒険者区画から一般区画に行き通常の宿に泊まることになったのだ。
宿を決めた後は防具と武器を買いに出かけた。僕たちの所持金はそれなりの量があるのである程度揃えることが出来るだろう。
冒険者区画にそれはあった。剣と盾が交差するような看板が飾ってあってすぐにわかった。
「いらっしゃい」
如何にも、という筋骨隆々の男性が出てきて、その人がドワーフだとかは無かった。異世界なのに、異世界ではない部分が多々あって少しテンションが下がってしまう。
この世界に転生してからというもの、人以外を見たことが無い。エルフやドワーフと言った王道から吸血鬼なんてものも見かけない。
店内を歩いていると、ちょうどよさそうな物を発見する。
それは片方しか刃のない刀だった。僕はそれを手に取って感触確かめると、おかしなことにすぐに手に馴染んだ。
ミスティには魔法の杖を買い、防具は色違いだけれどお揃いの皮の胸当てを購入した。
これで装備は良いだろう、ということで合計銀貨32枚だった。刀が12枚、杖が6枚で皮の胸当てが7枚だ。
その後、宿に戻って夕食を御馳走になり布団の中に潜った。
朝になり、宿の支払い銀貨2枚を二人分済ませてギルドに向かうことにする。今日から冒険者の仕事をするのだ。
一般区画から冒険者区画は隣接しているとは言え、ギルドまで移動するとなると若干遠めだ。
片道徒歩30分というそれなりの遠さをミスティと歓談して暇を潰し、一般区画なので僕たちのことを心配しているような目で見てくる住民もいた。
何がそんなに心配させているのかがわからないけれど、一応周りに気を配っておこうと思う。
ギルドの中に入ると、朝にも関わらずたくさんの人が出入りしていて僕たちのことに気にする人はいなかった。いや、朝だからたくさんの人がいるのだろう。
朝に依頼を受けて夕方頃に帰ってくるというのはこれから僕たちがするようなことと似ている。
それでも、若干名の好奇の視線に晒されることとなりミスティが僕の後ろで怯えたり、ということもあったけれど無事に依頼板と呼ばれる、依頼書の張り付けられた木の板のところまで来た。
その板はランクごとに分かれており、一先ずCランクの依頼書が貼っている依頼板のところへ移動する。
「う~ん……Cランクはあまりいいのがないねぇ。受けるとしたらBランクかな?」
依頼書を見て唸っていると、ミスティが一枚の依頼書を持ってきた。
「お姉ちゃん、これは?」
「ん? 『ゴブリン・オーガの討伐』か。定番だね」
「定番?」
「あ、なんでもないよ。じゃあそれにしよっか」
ミスティがそれでいいならそれにしておこう。
ゴブリンとオーガなんて定番の中の定番だよ、楽しみだなぁ。
報酬もこの依頼にしては多く、銀貨25枚とのことだった。
受ける依頼が決まると依頼受付所という窓口に行って依頼の確認と報酬の確認をする。
「初めての依頼ですね……それでは少し説明させていただきます」
窓口にいたのは若い女性職員だった。
僕をみて本当に大丈夫かな? と首を傾げていたけれど、ゴブリンと言えば最弱の魔物なはず。それくらいなら、問題ないだろう。
「依頼に失敗すると違約金が発生します。今回の場合は依頼料の半分を負担することになります。一つ上のランクの依頼を受けると違約金が半分で、一つ下の場合は8分の1となります。同じランクであれば4分の1の違約金が発生しますので、注意してください」
なるほどね。
上の方が多く払わないといけないんだね。普通、下の方が多い気がするんだけど。
「それは、自分の力量を間違ってしまわないように、抑止力も兼ねているのですよ」
と微笑まれた。
つまり僕にこの依頼を受けるなと言いたいのだろうか?
「丁寧にありがとうございます」
「あらあら、気にしなくていいのよ。気を付けてね」
「はい」
受けることに変わりはないのだけど。
依頼の受諾作業を済ませると街の外へ出る。
ミスティは身分証で、僕は冒険者の証を門のところにいる兵士に渡した。
兵士は何か思うところがあるのか訝し気な表情だったけれど、無事に通してもらうことが出来た。
念の為、空間から杖と刀を出しておく。杖はミスティに渡して刀は腰に装備した。
それからゴブリンとオーガの殲滅の為、南下していく。
川沿いに南下していくと、魔物の一匹とも会うことがなく依頼を出してきた村に到着した。
そこでは常に警戒態勢が敷かれているのか、村の周りを囲むように村人と思われる人たちが農具を持ってうろついていた。
「止まれ。この村に何か用か?」
村の門⋯⋯というよりただの柵を一か所だけ開けた場所に行くと、村人が二人いた。
その二人は僕たちのことを胡散臭い目で見ていて歓迎されていないことがわかる。
「私たち、依頼を受けて来ました!」
その言葉に二人は目を見張る。
元気な様子のミスティに毒気を抜かれて僕は平常心に戻った。
「これが依頼受諾証明書と冒険者の証です」
依頼受諾証明書とは、間違ってほかの人なのにその人だと思いこみ、別の人が依頼を受けるという事故を防ぐためのものだそうで、随分と前に出来たシステムらしい。
「嘘ではないようだな。疑ってすまなかったな」
よしよし、と僕たちの頭を撫でる二人。
ミスティはえへへ、と喜んでいるけれど、僕はちっとも嬉しくなんてない。ほんとだよ?
「巣までの案内はこちらでする。ついてきてくれ」
「はい」
二人の内片方が僕たちの案内を買って出た。
「俺はジュバルってんだ。⋯⋯で、本当に戦えるのか?」
ジュバルは僕たちを疑っているようだ。
まぁ、10歳と8歳だし、仕方ない。
「もちろんです」
「それならいいんだが⋯⋯」
一度実力を見せたほうがいいんだろうか?
そんなことを思っているとついたらしく、案外近場にあった。村から1キロ程度しか離れていないんじゃないかな?
僕は探知魔法を発動させる。
魔力をソナーのように使って敵を感知するのだ。魔力を持つ物ならなんでもわかるので、魔力の宿った木なんかの位置も正確に割り出せる。
「100匹以上はいると思うから、気を付けろよ」
100匹⋯⋯ねぇ。
これ、たぶん200は越えてるよ。
多すぎて数えられないけれど、物凄い数が蠢いているのがわかる。それも一か所に集まっていて⋯⋯って、これちょっとまずい?
もしかしてスタンビートってやつじゃ⋯⋯。
「ガガッ」
少し呆然としていると敵に見つかってしまったらしい。
「ジュダルさん逃げっ⋯⋯!?早いよ!逃げるの早いよ!」
既にいなかった。
「ミスティ、援護お願いね!」
と、お願いしても返事が返ってこなかった。
おかしいな、と思い後ろを振り返るとそこには魔力の質が高まっていくミスティの姿があった。
「⋯⋯この位置はヤバイっ!」
咄嗟に逃げると同時に、ミスティの魔法が放たれた。
『業火!』
放たれた魔法は林だったここら一帯に燃え移っていった。
これはまずいと思い、すかさず
『フロストノヴァ!』
で消火していく。
完全に火がなくなった頃合いを見計らってミスティの方へ向き直る。
「もう、勝手に攻撃したらダメでしょ?それに結界も発動してないし⋯⋯」
「ご、ごめんなさい」
すぐに謝ったミスティの頭を優しく撫でる。
すると上機嫌に戻ったミスティが結界を発動した。
うん、上出来だ。
ミスティの周囲を円柱状の結界が覆う。
それと同時に僕は駆け出した。魔力を体全体に流し込むと力が溢れてくる。これは身体強化と名付けた魔法だ。
そのまま、身体能力を強化する魔法。
探知魔法も併用しながらなので魔力の消費が少し激しい。けれど、魔力が尽きる前に終わらせればいいだけだ。
刀を構えて向かい来るゴブリンを横に一閃、縦に一閃、斜めに一閃して次々と斬り伏せていく。
それほど時間がかからずに敵本拠地である洞窟に辿り着くと、中にはゴブリンよりも大きな魔力の持ち主と、ゴブリンよりも小さな魔力の持ち主がいることを確認した。
ゴブリンより小さな魔力の持ち主は人の可能性が高い。さっきのジュダルさんと同じくらいの魔力量だからだ。
さて、どうしようかと悩んでいるとオーガが外へ出てきた。
外の異変がわかったのかな?
僕はオーガに無造作に近づく。
ゴブリンとの戦闘がうまく行きすぎていたから、油断していたのだ。
オーガがこん棒を振りかざし、ゴブリンと同じように振り下ろす前に斬ろうとすると思っていたより早く振り下ろされた。
「ぐぁっ!」
僕の体は後方へ吹き飛ばされる。
それを見てオーガはこちらに走り出した。
「このっ⋯⋯!」
油断していた気を引き締めて刀を持つ手と足に魔力を込める。
ドンッと音が鳴った時には既にオーガの目前まで来ていた。
あまりの速さに平衡感覚を失いそうになるけれど、なんとかそれを耐え抜いて横凪に一振りする。
それだけの動作でオーガは上半身と下半身を真っ二つに斬られて地面にその肉塊が落ちた。
中に入ると、まだオーガがいたので全て殲滅する。
そして、一番奥にはやはり人がいた。
洞窟内部を焼かなくてよかった⋯⋯と安堵し、裸に剥かれている彼女たちに何かないかと思い空間の中身を思い出していると、サイズの合わない服しか思い浮かばなかった。
でも、流石にそれではいけないと思ったので大きめの布を取り出す。
「これを巻いてください」
裸の女性だというのに、興奮することはなかった。
性転換してるからかな?
「ぁ⋯⋯」
僕に気付いた人が涙をほろほろと流し始めた。それに気付いた残り二人の女性も涙を流し始める。
彼女たちの様子を見るにちょっと手遅れだった。もう少し、早く来ていればよかった。そしたら⋯⋯。
「⋯⋯ありがとう、ございます」
「いえ⋯⋯僕こそ、もう少し早く来ていれば⋯⋯」
「いいんです。助かっただけでも⋯⋯本当に、本当にありがとうございます」
号泣して訴えかけてくる彼女たちに罪悪感も薄くなり、僕は頬をぽりぽりと掻く。
「とりあえず、ここを出るので⋯⋯僕の服はサイズが合わないのでこの布を体に巻いてください」
僕が渡したのはバスタオル代わりに使っている布なのでそれなりの大きさがある。色はバラバラだけれど、それでもつけないよりはマシだということでおおむね快くつけてもらえた。
僕は彼女たちを引き連れて外へ出る。
すると、ミスティが待ちくたびれていたようで結界の中ですやすやと寝ていた。
幸い魔物がいなかったようで安心する。
「ミスティ、帰るよ」
そっと起こしてあげると目を擦り体を持ち上げた。
「ん⋯⋯、わかった」
僕はきっちりオーガの死体を全て空間に仕舞ってから村へ戻る。
「お、お前ら⋯⋯!無事だったんだな!」
戻ってみると村の門周辺に農具を持って決起している村人たちがいた。
彼らの中からジュダルが出てきて女性たちが無事なことを喜ぶ。
「じゃ、これで依頼は完了ということなので戻りますね」
「ああ。ありがとう。本当にありがとう」
村人たちからたくさんの感謝の言葉をもらい、その場を後にした。
「はい。おめでとうございます⋯⋯無事でよかったです」
「へぇ⋯⋯こうやって依頼達成数を⋯⋯」
僕は冒険者の証に一つ増えた項目を見る。
そこには「依頼達成数:1/1」と書かれていた。
オーガの死体を見せると、その場にいた職員やら冒険者やらが驚いていたけれど、気にせずに手続きを済ませる。
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