我、水産す。

初夏終冬

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エルフとちゃうんか?

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 婚約者は後で締めたるとしてや。

「うち、いつまでこんなとこおらなあかんの?」

 もう疲れたわ。立ってるの。しかもうちが呼ばれたの夕方やで?腹減ってもうた。

「そうですね。それではこちらへ」

 いっちゃん前におった爺ちゃんくらいの年齢の人が手招きしよる。
 なんでかは知らへんけど、うちと他の人らの間に妙な溝を感じるんや。なんでやろな?

「あ、なぁなぁ、あんた。名前何ていうん?」

 カッコええ男がうちの隣に並んだで!これチャンスとちゃうか?
 やっぱ名前知っとかなあかんよな。恥ずかしいけど、いつも通り振る舞うんや!それに失礼やろ?ずっと「あんた」呼ばわりじゃ。

「俺はカイルだ」

 ほっほー!カイルって言うんか!これはまたカッコええ名前やな。うちの旦那にぴったりやわ。

「うちは優香や。ゆうって呼んでや!」

 カイルは名前だけやったし、もしかしたら名字なんてあらへんのかな?名字は聞かれた時に答えればええか。

「カイル!天使様になんて口聞いてるんだ!謝れ!」

 ちょ、そんなバシーン!って叩かんでもええやろ!ここは体育会系なんか?いや、ちょぉ待て。なんや耳長くないか?もしかしてエルフって奴か!?そんで美形ばっかりなんかー!

「カイル!あんたもしやエルフかいな!」

「エル……?聞いたことない言葉だが、お前がそう思うんならそうなんだろう。お前ん中ではな」

 な、な、なんやてぇ!?
 そのネタ知っとるとかどう考えてもおかしいやろ!さてはカイル、日本に来たことあるんとちゃうか?

「うちはお前じゃない、優香や!」

「……そうか」

 よーやっとわかってくれたか。
 ほんまにひどいなぁ。ちゃんと名乗ったのにお前って!
 けどそこがまたイイ!カイルに名前呼ばれたらうち、変になるかもしれへんな。どうすればええ?

「着きました。ここが我々の住む街です。天使様」

「へぇ!潮の香りすると思うてたらこんな海に近いんか!ええとこやなぁ。長閑で自然を感じる。日本とは大違いや」

「気に入って頂けてよかったです。街役所に着いてから、いろいろと説明させて頂きますね」

「そういや何も聞いてへんかったな。そんでええよ」

 にしても、うちのこと天使とか今でも信じられへんわ。天使言うたら普通白やろ?うちの格好制服やから真っ黒やで。髪の毛も真っ黒の短髪や。
 街に入ったらめちゃくちゃ見られた。さっきは高台みたいなところにおったから、そっから下山して今は街に入っとるんや。
 簡単に言うとやな、山があって海があって、街を川……じゃないな。これは堀言うんか?それがある。防衛戦やったら相当強いと思うで、これ。

「ここが街役所です」

 そう言うてズカズカ入って行きよった。うちも付いていったら街役所におった人らが道を開けてくれるんや。
 うちなんかのためにわざわざスンマセンなぁ。

「天使様、どうぞお座りください」

「おお、サンキューな。って座布団やないか!異世界にもあるんかぁ」

 座布団が出てきてちょっとばかし調子狂ってもうたけど、これからうちが現れた理由を説明するらしいわ。

「天使様が現れたのは、神の思し召しです」

 ……は?
 それだけ!?それだけかいな!?舐めとるわ、この爺ちゃん。

「私たちはいつものように参拝していたのです。あのやしろには神がお住まいだという言い伝えがあります。過去に神が現れたことはありませんが、天使様ならあります!そして現れた!あなたこそ私たちの救世主なのです!」

「ちょ、ちょぉ待ってぇな!」

「はい?何か、おかしなことでも?」

 こ、この爺ちゃんいてこましたろか……。ツッコミどころ満載やわマジで。

「まず、うちは天使じゃあらへん」

「……!?」

「そんでうちは異世界から来たんやけど、今日だけ特別なことしたとかあらへんの?」

「今日だけ、ですか?そうですね。特には」

「そーかそーか。なら偶然ってことやろな。たまたまうちがこっちに来る時、あんたらがおった。そんだけのことやろ。もう天使言うんやめてな。うちは優香や」

「は、はぁ。しかし、街は今危険な状態です。優香様を放っておくことなど……」

「あ、なぁなぁ、余ってる家とかあったら貰えへんか?異世界来たら生活の基盤作んのが一般やからな。まずはそれせんといかんわ」

 生活の基盤出来たら、今度はカイルを旦那として迎えるんや!

「そ、そんな恐れ多い!」

「てかさ、危険な状態ってどういうことなん?」

「それは……」

 なんや、言葉に詰まるんか?そんならわざわざ口に出さんでええのに。

「言われへんねやったら言わんでもええよ」

「そんなことはありません。言いましょう。今、下等な人間どもが私たちの街を攻め落とそうとしているのです。優香様が天使様だったら、すぐに事は済んだのですが」

 嫌味かいな。
 うちかて好きでこっち来たんとちゃうんやで?早々に馴染んどるけど、ほんまにちゃうからな。
 でもまぁ、カイルに会えたから良しとするわ。
 けどな、下等な人間どもってなに?うちも人間……人間やんな?

「下等な人間どもってどういうことや。あんたらちゃう言うんか?」

「当然です。私たちをあんな低俗な輩と一緒にしないで頂きたい」

「なら、あんたらなんなんや?」

「はい。私たちは半天使族ハーフエンジェルです。世界中に散らばり街を作り、監視する。それが役目です」

「え!エルフちゃうの!?」

「そのエルフというのは聞いたことがございません」

「ちなみに半天使族ってのは?」

「人間の上位種族です。耳が長く、髪が緑の者をそう呼びます」

 それってエルフちゃうの?てか、ちょっと待ってな。うちのこと天使とか呼ぶけど、あんたら半天使族なんやろ?なんでうちが天使であんたらが半天使族なんや……。

「しかし、私たちには人間にはない天法を扱うことができます。このように」

 爺ちゃんが手のひらから水の球出したで!凄いな!これって魔法なんか?あ、でも人間にはないって言うたよな。
 あ~、異世界きて魔法ないとか地獄やろ!
 それにしても、や。魔法も使えたらますますエルフやん。なんで名前エルフじゃないん?

「なぁ、なんで天使族じゃなくて半天使族なん?」

「人間よりも上位であり、しかし天使様と同じなどと恐れ多い。そこで間をとって半天使族と名乗ることになったのです」

 あー、つまり自称なわけやな?
 住んでるとこはエルフの特徴とはちゃうけど、身体的特徴はエルフそっくりやし、もううちはエルフって呼ぼ。
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