双剣使いの極狼零竜《バースト・ゼローグ》

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『順位決戦』

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相手は1位。ザクスタン・レイビュート。
(はあ、1位相手に勝負申し込むとか。負けたいんですかね)
1位、1番。すべての、勝負事に置いての高み。そして、絶対の象徴。
その高みにレイはいつもいた。
今の今までこの『絶対』から降りた事はない。
彼女は天才だった。才能もあった。努力もした。
彼女の天才が努力をしたら、凡人がどれだけ、どれだけの努力をしたとしても、素が天才ならば、凡人は勝てない。
剣技、魔法、地位。こういうものなら、1位は取れる。
だが、同じ所に狼竜はいた。
狼竜も天才だ。だが、立場が違う。
天才故に、幼すぎる狼竜には、高過ぎるであろう事すらも、親はやらした。
故に、狼竜は優しく、強く、たくましく、謙虚で、何に置いても、できないことは無かった。
大好きな物をどれだけ奪われても泣かなかった。
しかし、大好きだったおばあちゃんが殺された時は、理性を保てなかった。
犯人を警察では無く、その怒りだけで、捕まえた。
それ以来、その怒りがおさまるまで、隔離された。
核爆弾をしまうような所に閉じ込めても、親が育てたその、強さと、努力と、怒りを止められたかった。
結局、幼い狼竜は犯人を半殺しにした。
なんとか怒りが収まった狼竜を見て、親は、狼竜を怒らせてはならないと死んでも誓った。
(凡人は天才には勝てないか・・・)
レイは思った。
男が四人いて運べる大剣を、レイは軽々と持ち上げる。
「王よ。勝ってきます」
「うむ。頑張るんじゃよ」
(王に頑張れと言わせた。その対価が奴にはあるか)
「サクラ。待ってろ。1番、倒してくっから」
「うん!待ってる」
(どれだけ強かろうが関係ない。騎士だ。姫の願いは叶えるもの!)
「ザクスタン・レイビュートだ。よろしく」
「綾辻狼竜だ。よろしく」
双方、武器に手を置いた。
「おほん!これより、順位決戦を始める。準備はよいか?」
王の掛け声にレイと狼竜は頷いた。
「では、決戦開始じゃ!」
先に動いたのは、レイだった。
大剣は地面にささったまま、素手で来た。
「強さを確かめるって?上等だ!」
呪いの宝刀は抜刀せず、狼竜も素手でいく。
レイの回し蹴り。だが、狼竜は受け止める。
その勢いを利用し、投げ飛ばそうとする。しかし、投げる寸前で、肩を捕まれ、止まる。
「はっ!」
肩を掴み、狼竜の手から逃れると、流れるように狼竜の首に、足を挟んだ。
そのまま力を込めて、首を折った。
しかし、何事も無かったように狼竜はいた。
「とっさに首を曲げたか」
見た先に狼竜はいなかった。
(瞬きの間にいなくなるとは・・・)
「どんな足してんだよ!」
狼竜の攻撃を避けながら、大剣まで駆け寄る。
大剣を手に取った瞬間に、振るう。
「ッ!」
抜刀した狼竜はその大剣を受け止めた。
(重っ!)
簡単に吹き飛ばされた狼竜は空中に身体を捻り、着地する。
「今度はこっちの番だ!」
あの大剣ごと、レイを吹き飛ばすのは容易ではない。だが、狼竜は出来ると確信していた。
「はあ!」
刀を力いっぱい放った。
「くっ!」
防いだレイは吹っ飛んだ。着地に手を付いてしまった。
(両手を使わせた!)
狼竜は走り込んだ。何よりも、サクラのために。
レイも、即座に立ち上がり、剣を振るう。
凄まじい音を放ち、2本の剣がぶつかり合う。
どちらも3歩引いた。
「ここで決める」
刀を鞘にしまう。そして、構えた。
瞬間、尋常じゃ無いほどの殺気が放たれる。
「綾辻流初段、夜堕烏[やたがらす]」
「!?」
素早い抜刀で首を狙う。とっさに防ごうとはするが、フェイクだった。
軌道を、首から足に変えた。しかし、防がれた。
「これを防ぐかよ!」
レイからの蹴りを避け、手を使い、回って反撃。
これを、レイは掴み、腹を蹴り飛ばす。だが、これを足で防ぐ。
(強い・・・)
心からレイは思う。
「だが、これで終わりだ」
「フリーズ」
唱えると、狼竜の足元が、凍った。
(氷の魔法!)
動きを封じられた狼竜は、為すすべがない。
重く、強い大剣が足に放たれた。
「!?」
封じたはずの狼竜がいなかった。
「詰めが甘かったな」
後ろに回った狼竜。レイは大剣を振るっていた。防ぎようがない。
「綾辻流古段、冬紙[ゆきがみ]」
大剣を落とし、倒れ込んだ。
「な・・・んで」
(どうして?確かに封じたのに)
「氷を斬った。見えなかったろ。そりゃそうだ、レイには見えない速度で斬ったからな」
刀を鞘にしまった瞬間、狼竜の勝ちが確定された。
(あぁ、これか。これが、敗者の気持ちなだな)
今の今まで敗けたことの無いレイは、初めて、『敗け』という感情を感じた。
本気で戦い、敗けた。
治癒魔法を使える者が来た。
痛い。痛い痛い痛い。身体よりも、心が。王に、あんな顔をさせた自分を怒りたい。いっそ、死んでいいほどに。
レイの瞳には涙が現れる。
(泣いた事なんて無いのに)
すると、手が差し伸べる。
「立てよ。君は充分強かった」
その手を掴めなかった。この時、決意した。
私は、この男より強くなる。強くなった時に、掴んでやると。
だが、そんなことはさせんとばかりに、強引に引き寄せられる。
「そう泣くなよ。俺が言うのもなんだけど、可愛い顔が台無しだ」
狼竜は涙を拭ってくれた。涙さえも拭えない自分の代わりに。
「おほん!」
びくっ、と2人が震える。
「この順位決戦は綾辻狼竜の勝ち。よって今より、この国の1番は綾辻狼竜になった!」
レイを立たせ、背中を押した。
「いけよ、王の場所に。きっと、待ってる」
「ああ」
怖い。なんて言われるかわからない。怖いよ・・・。
「レイよ」
「ッ!!。は、はい」
「よく、頑張った」
「!!」
また、泣いてしまった。
「良く勝ったな狼竜!」
「え、うん。まぁ」
「これで私の騎士が一番だ!あはは、嬉しいな!どうだ?全力は出せたか?」
「・・・」
(とても、失礼なことをしてしまったな・・・)
あの順位決戦で、狼竜はまだ完全な本気を出していないことを知るのは、狼竜だけだった。
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