双剣使いの極狼零竜《バースト・ゼローグ》

文字の大きさ
6 / 22

『2本の剣』

しおりを挟む
「いやー。まじで1位になるとは」
順位決戦の後、サクラと狼竜は帰っていた。
「うん。俺も驚き」
「にしても、狼竜強いな・・・」
「・・・」
(そんなに強くないよ・・・。世界は広いから、上には上がいる)
少し弱気な狼竜。
「家帰ったら、私と全力で戦って」
「え」
「狼竜の戦い見てたら、戦いたくなった」
「なら、モンスターを狩ろうよ」
「嫌だ。狼竜と戦う」
(こう来たら多分頑固だな・・・)
「わかったよ」
「やった!あ、本気だからね?」
「んー」
竜車に乗り込んだ。
「グガゴァ」
「サクラ。俺、見張りも兼ねて前にいるね」
「うんー」
竜の後ろに飛び乗り、紐で叩く。
それに反応して、竜が進み出す。
(刀見てみるか・・・)
レイとの戦いで、刃こぼれしていないか確かめた。
「うっわ・・・」
刃は予想通り、ボロボロだった。
(使えるけど・・・切れ味が悪すぎる)
「相当強かったんだな・・・。こいつには」
自分より、圧倒的な大きさの大剣と渡り合ったんだ。名刀だな。
「研げないし・・・。もう捨てるしか無いのか」
「何をだ?」
「うおっぐベル!」
「変な驚き方だな」
にこにこなサクラがヒョイっと顔を出している。
「それで、何を捨てるしか無いんだ?」
「これ」
サクラから貰った、呪いの宝刀を見せる。
「刃こぼれか・・・」
「うん」
狼竜は悲しげなな瞳で刀を見つめた。
「武器ってさ、永遠に使えたらなーとか、刃こぼれするなーとか思うじゃん」
「うん」
「でもさ、きちんと手入れしたら武器も喜ぶし、勝ちたかった強敵をその武器で倒したらさ、喜びも分かち合えるよね」
「・・・」
「だから、壊れたり、使えなくなると、かなしくなるよね」
「でも、まだ狼竜これそんな使ってないよね?」
「いや?こいつのおかげで勝てたし。何よりもサクラに貰ったから」
ドクンッとサクラの鼓動が速くなる。
(ああ、本当に優しいな)
心からサクラは思った。


        ☆


「帰ってきたー」
「ただいま」
玄関に寝転ぶサクラを立たせ、帰宅の知らせを告げる。
「おかえりなさいませ。サクラ様、狼竜様」
「うん。ただいま。ミラ」
「ところで、負けましたか?負けましたよね?」
(なんで全部負けなのさ・・・。まさかまだミラだけにって事、根に持ってる?)
「決してそうではありませんよ、狼竜様」
「だから人の心を読むなよ!」
とりあえず、中に入る。荷物を置き、もう一度、刀を見た。
「刃こぼれですか?」
「うん」
「直しましょうか?」
「いや、こいつはもう使えない」
「何故、ですか?」
本当に疑問に思ったのだろう。
「剣は直せば使えます」
「それは、心が生きていたら、だろ?」
「・・・」
「こいつの心は、もう終わってる。無理に直しても、心の無い武器は、ガラクタに過ぎない」
「では処分します」
「やめろ。俺がする」
少しだけ、睨んでしまった。
外に出て、少し歩いた。
「ふっ」
地面を、えぐった。
「今までありがとうな」
えぐって飛んだ土で軽い山を作る。
そして、刺した。
「ここで少し、眠っていてくれ」
そして、ここをあとにした。
「狼竜」
「サクラか」
「勝負、しよ」
「・・・うん」
「はい」
風を切り、剣が放たれた。それを受け取り、構える。
サクラも構えた。
「じゃあ、試合開始!」
走り出したサクラを見つめた。
(これだから、強くなるのはつまらないんだ)
1歩だけ、たった1歩歩き、手をこねた。
パキンッ、とサクラの剣を弾く。
そして、首に剣が置かれた。
「・・・私の敗け」
ああ、最悪なことをしたと心から思う。
弱いものいじめだ。
強過ぎる。
だからなんだというんだ。
自分だって制御出来ない。
弱くなりたい。
だけど、そんなことしたら、下の人に、失礼過ぎる。
強くなり過ぎた?なんだよそれ、ふざけんな。
高みを目指すのは、当たり前だ。
ただ、行き過ぎた。
ふと、サクラの声が聞こえた。
「狼竜は強くて、毎日が楽しいよな」
「ッ!?なん、で・・・そう思ったの?」
「だって強いから。それだけじゃん。楽しく無いの?」
「・・・」
純粋な強さか・・・。俺だって求めたよ。
「あと狼竜」
「ん?」
「強くなりすぎでつまんないなんて、思うな。上には上がいるからな。ご飯、出来たっぽいよ」
上には上がいる?そっか・・・。
「だめだ、今日はおかしいな」
自分で分かっていることを、言われるなんてな。
「でも、強ずきて悪いわけがないだろ。サクラをその分守れる」
少し考えた後、サクラを追った。


          ☆


今は何時だろう。
サクラは夢を見ていた。
深い、深い深い海のような。
音が聞こえない世界。
夢、なのだろうか。
動ける。苦しい。助けて。
「お、狼竜・・・」
求める。何も出来ないから、助けを求める。
「たす・・・け、て」


遡って30分前
「今日はスライム100匹の討伐だ」
「100か・・・」
「数が数だから、人呼んだよ」
「やあ、君がサクラ君の騎士か」
「それでいて1位ね」
(2人か・・・。そして、どちらも女の人・・・)
「私はクレイ・アスクフォート。よろしく」
「私はね~。アスカ・ベイルーツだよ。よろしく~」
2人の挨拶が済んだあと、森に向かう。
「狼竜君、イケメンじゃない?」
「だよね。わかるわ」
「こら。私の騎士だぞ」
「はーい」
3人の女の子の後ろをついていく狼竜。さっきの会話を悪口と思い、冷や冷やした。
「あ、いたよ」
「うっわ。きもい・・・」
そこには大量のスライムがいた。
ぬちゃぬちゃと動くスライムは不気味だった。
「んじゃ、行こうか」
中級のスライムといえど、質より量のスライムは討伐に時間がかかる。
「あーあ、1匹になってくれたらいいのに」
このサクラの一言により、スライムが動いた。
「ん?」
「ありゃ」
親スライムが来た。子供の4倍位の大きさだった。
サクラの上に飛び跳ね、どんどん大きくなっていく。
「くそ!くそ!」
足止めと言わんばかりの雑魚スライムにより、回避ができなかった。
「んっ!!?」
巨大なスライムに雑魚ごと、サクラを飲み込んだ。
狼竜達の雑魚も、寄って合体した。
「サクラ!」
武器のない狼竜は拳を放つ。しかし、ダメージはない。
「ッ!?」
瞬間、サクラがもがいた。
(まさか、こいつら!)
「くそ!」
クレイが剣を振るう。しかし、柔らかすぎて、剣が通らない。
アスカのハンマーが放たれた。
「やめろ!」
急に呼び止められ、なんとか攻撃を中止する。
「な、なんで!?サクラを助けないと!」
「分かってる!だけど、俺が殴ったとき、サクラが苦しんだ。こいつ、衝撃をサクラに集めたんだ。打撃はサクラに危険が及ぶ」
「剣も無理だった」
「なら、どうするの!サクラが死んじゃう!」


『俺を・・・使え!』


カードが光出した。
(まさか、これが?)
「ええい、もうどうにでもなれ!」
『なら叫べ!カード、インバイトと!』
「カード、インバイト!!」
瞬間、カードの輝きが増した。
「くっ」
余りの眩しさに目をつぶる。目を開けると、刀と剣が、浮いていた。
『使え!助けたいなら!』
刀をとり、抜き取る。
その刀は黒かった。
(まるで、呪いの宝刀見たいだ・・・。いや、あれより黒い!)
「はあ!」
その刀を振るった。
刀は切れ味が良過ぎた。スライムと大地を切り裂いた。
(す、すごい・・・)
「サクラ!」
その切れ味で瞬く間にスライムが刻まれる。そして、サクラを救い出せた。
「・・・ガハァ!ハアハア」
苦しかったのか、荒い呼吸をする。
「サクラ大丈夫!?」
クレイとアスカが駆け寄った。
「う、うん。スライムは?」
「狼竜がやっつけてくれたよ」
「そっか・・・。あれ?狼竜その刀・・・」
苦しいはずのサクラは声を振り絞る。
「ああ、俺の、俺の刀だ」
「そっか・・・。よかっ・・・たね」
その時、サクラは意識を失った。
「サクラ!?」
狼竜はすぐに、首筋に手を置いた。
「大丈夫、気絶しただけだ。呼吸困難だったから、そっとしておこう」
サクラをお姫様抱っこして、立ち上がる。
「帰ろう。スライムは倒した」
「う、うん」
(この剣達は・・・?)
『お前の剣さ』
「そうか、ありがとう。またあとで話そう」
こうして、スライム退治は終わり、狼竜は剣を手に入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

甘そうな話は甘くない

ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
「君には失望したよ。ミレイ傷つけるなんて酷いことを! 婚約解消の通知は君の両親にさせて貰うから、もう会うこともないだろうな!」 言い捨てるような突然の婚約解消に、困惑しかないアマリリス・クライド公爵令嬢。 「ミレイ様とは、どなたのことでしょうか? 私(わたくし)には分かりかねますわ」 「とぼけるのも程ほどにしろっ。まったくこれだから気位の高い女は好かんのだ」 先程から散々不満を並べ立てるのが、アマリリスの婚約者のデバン・クラッチ侯爵令息だ。煌めく碧眼と艶々の長い金髪を腰まで伸ばした長身の全身筋肉。 彼の家門は武に長けた者が多く輩出され、彼もそれに漏れないのだが脳筋過ぎた。 だけど顔は普通。 10人に1人くらいは見かける顔である。 そして自分とは真逆の、大人しくか弱い女性が好みなのだ。 前述のアマリリス・クライド公爵令嬢は猫目で菫色、銀糸のサラサラ髪を持つ美しい令嬢だ。祖母似の容姿の為、特に父方の祖父母に溺愛されている。 そんな彼女は言葉が通じない婚約者に、些かの疲労感を覚えた。 「ミレイ様のことは覚えがないのですが、お話は両親に伝えますわ。それでは」 彼女(アマリリス)が淑女の礼の最中に、それを見終えることなく歩き出したデバンの足取りは軽やかだった。 (漸くだ。あいつの有責で、やっと婚約解消が出来る。こちらに非がなければ、父上も同意するだろう) この婚約はデバン・クラッチの父親、グラナス・クラッチ侯爵からの申し込みであった。クライド公爵家はアマリリスの兄が継ぐので、侯爵家を継ぐデバンは嫁入り先として丁度良いと整ったものだった。  カクヨムさん、小説家になろうさんにも載せています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...