双剣使いの極狼零竜《バースト・ゼローグ》

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『遠征2』

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淡い緑の草が生えた土。
10000頭の馬と、20000人の兵士たちが集まっていた。
兵士たちが一斉に礼をした。
軍隊長・カルクス・レイニクルスが現れたからだ。
兵士達は道を開けると、カルクスは椅子に腰を下ろした。
「明日より、アルバスに攻め込む。それは皆、分かっているだろう?」
「はっ!」
「そして、我が軍の秘密兵器はきちんと準備してあるか?」
「そちらも、万全です」
「よろしい、今日は全軍ハメを外せ。村々から奪った娘と遊んでもよし。とにかく、明日に備えよ」
カルクスの口が不気味に微笑んだ。


          ☆ 


ヒュンヒュンと、剣を降る音が聞こえた。
朝早くに目覚めた狼竜おおたは剣を振ろうと、王城の庭に足を運んでいた。
「どうやら先客がいたみたいだな」
「む。狼竜か」
王の右腕。ザクスタン・レイビュートだ。
「結構早起きしたんだけどなー。何時からいた?」
「いや、狼竜とあまり変わらない。今さっきだ」
「そっか。あ、ほい」
ちょうど持っていた水をレイに渡す。
「飲みかけだけど、冷たいし飲んで」
「え、あ、うん・・・」
レイは少し躊躇ちゅうちょしながらも、水を飲んだ。
「つかレイさ、細剣レイピア使い始めたんだね」
「そうなんだ。だが、まだうまく使えん」
「ちょっと相手して。俺が見てあげる」
軽い模擬戦をする事になった。
「んじゃ、準備OK?それじゃ、スタート」
レイの顔が変わり、足を踏み出した。
顔をめがけた突き。だが、狼竜は首を曲げて、避ける。
狼竜も王牙おうがを抜刀すると、振りかざした。
激しい金属音が鳴り響き、どちらも譲らない攻防。
「はぁっ!!」
細剣を魔法付与武器エンチャント・ウェポンに変え、3回、突いてくる。
もとより、速い突きに、レイが選んだ属性は風。
威力はより高く、速いその突きを狼竜は避けることが出来なかった。
はずだった。
それはレイの思い込みに過ぎなかった。
狼竜は、そう間違えさせるほど、数ミリだけを残し避けていた。
「危なかったか?」
「いんや、わざとだ」
(ふっ。どうしようもなく強いな狼竜は)
「とりあえず、わかったよ」
「細剣の使い方?」
「うん。《最後の七宝竜ラスト・インクルシオ》」
シオンが形状を変えて、細剣になった。
「それじゃあ、もう1回ね」
狼竜はレイの肩に触れた。
「な、なんだ??」
「いや、なんでもない」
そしてまた、模擬戦が始まった。
狼竜の細剣は、先は尖っていて細剣だが、普通の剣同様、斬れるようになっている。
「ふっ!!」
狼竜が1歩前に出た。
体重移動を使い、威力の増した突きは、風を斬る。
が、レイもまた反応出来ない速さではなかった。
敵がもっとも体力を奪われると言われる、数センチ、数ミリの感覚で避け、体力を奪いつつ、反撃をする。
三突きの反撃。狼竜はそれを左手でずらし、避けつつ距離をもう一度とった。
「今までのはレイの細剣の持ち方だ。少し変えるぞ」
持ち方を変えた狼竜は、深く息を吐き、強く息を吸い込み、息を止めた。
瞬間、狼竜が大地を蹴った。
レイの間合いに入ると、いつものように剣技を披露した。
「くっ!」
剣として戦うには決定打は打てない。
レイは、いちかばちかの突きを打とうとした。
「それは、ダメだろ」
間合いの中にいる狼竜に、剣を持っている時点で防げないものなど今はない。
身体を回転させ、剣を弾いた狼竜は、遠心力も利用しながら突きを打った。
避けられないレイは、もろに喰らった。
しかし、狼竜がかけておいた防御魔法により、ダメージはない。
「どう?わかった?」
「な、なんとなくならな・・・」
「良かった良かった。怪我ないよね?一応魔法かけておいたから大丈夫なはずだけど・・・」
「大丈夫だ・・・。なんで、狼竜はそんなに強いだ?」
「俺も、最初は強くなかったんだ。小さい時に少しな」
「そうか・・・。すまんな、思い出させたようで」
「いや、いい。それより、シャワー浴びに行こう。汗かいた」
「えっ、あ、うん・・・」
庭から城に入り、右にすぐ、入浴場がある。
「第5入浴場!?何個あるんだよ・・・」
「第7までだな。城は広く、利用者も多い」
「ふーん。じゃ、入るか」
中に入ると、脱衣場はひとつしかなかった。
狼竜は看板があることに気がついた。
看板にはこう、書いてあった。
~混浴~
「えっと、レイ?大丈夫・・・だよな?」
レイをちらっと見ると、耳まで赤かった。
「えっ、う、うん」
了承を得たので、戸惑いながらも、衣服を脱いだ。
ここには、バスタオルが完備してあり、そこらへんには困らなかった。
「うわっ、すっげー」
速く脱いだ狼竜は、脱衣場を抜けて、風呂場に来た。
広かった。室内温泉だった。
多分、温泉に管を通し、引っ張っ出来ているのだろう。
「温泉はここだけなんだ」
バスタオルに身を包んだレイが言った。
「そうなんだ。露天風呂が良かったなー」
「当初はそれを計画していたんだが、反対されてな」
二人とも、身体を流したあと、入浴した。
「へー、どんな?」
「確か、こころよく、えっ、えっちなことが出来ないとかで・・・」
「あ、ごめん」
お互いに、背中を向け合いながらも、背中をくっつけて、よっかかった。
「にしても、やっぱり風呂は気持ちいいなー」
「そうだな」
(ううっ。意識してしまう・・・。狼竜はその気じゃあないが、ついつい見てしまう・・・)
「あのー、レイさん?ガン見は恥ずかしいんだけど・・・」
無意識のうちに、ガン見をしていたようだ。
「えっ、あっ、ごめん!!えーと、おあいこってことでぇ!?」
テンパったレイは、自らの身体見せつけるかのように、バスタオルをとった。
「あっ・・・」
それに反応し、狼竜もレイの身体を直視した。
二つの山が、重力にさからいながらも、垂れることなく維持されている。
下も・・・。
「うわぁああ!!」
流石に我に帰ったレイは温泉に思い切り浸かった。
「えっと、その・・・、大丈夫?」
「だ、大丈夫・・・」
口まで浸かりながらぶくぶくしているのをみてると、大丈夫ではなさそうに見える。
「ってか、そろそろ上がらないと」
「そ、そうだな」
狼竜が先に上がり、レイが後から上がってきた。
急いで、食堂に向かうと、みんないた。
「おっ、狼竜。どこいってたんだ?」
サクラが聞いてきた。
「すまんな、庭に少し」
「そっか」
料理が運ばれてくると、みんなで食べ始めた。
(サクラの家の料理に慣れたのかな?あまり驚かないや)
「そういえば、なんでここに来たんだっけ」
サクラが唐突にいい始めた。
「いや、俺が呼ばれたんだよ」
「うんうん。あ、だから、それがなんで?」
「サクラ話し聞いてたよね!?俺が軍の前線に出るんだよ」
「うむ。狼竜は軍の誰よりも強い。即戦力の中の即戦力と言っていい。だから、頼もしい」
それはレイの、本音だった。
「え?でもレイがいればとりあえずは・・・?」
「大丈夫では無いんだ。今回は、厄介でな。詳しくは王から聞いてくれ」
「あぁ、わかった」
朝食を済ませると、レイは装備の準備などをやりに行った。
俺も、服を着替えるために、寝た部屋に向かう。
戦う時に着る、黒い服を、早着替え装置を使い、着替えた。
その後、時間潰しのために、王牙やシオンの手入れをやり始めた。
「厄介ね~。どう厄介なんだろうな」
『さあな。軍だから敵の数とかか?』
王牙が返事を返してくれた。
「ん~。まぁ大丈夫だろう」
『そうだな。だけど、油断はするなよ』
「はーい」
剣の手入れを終えた狼竜は、残りの準備を素早く終え、王の間に向かった。
先にみんな来ていたらしく、どうやら狼竜が1番遅かったらしい。
「遅いぞ、狼竜」
「あぁ、ごめん」
サクラが狼竜に言った。
「まぁまぁ、さて、みんな来たの。では、今回の説明をする」
王だ。
「今回は獣人のカルクスってやつの軍が来る。ただ、軍兵が多い。20000人いる。それに、獣人は5感がとにかくはたらくらしい。だから、気をつけておくれ」
「なるほど・・・。それで厄介か」
「それともうひとつ。我が軍からはもっと兵を出したかったんだが・・・、1000人しか出せない」
「なっ・・・」
20000人VS1000人だと?普通に考えて負けるだろう。
「そこで、君だ。狼竜君」
「俺か?」
「あぁ、君は強い。だから、やってくれないか?」
もはやこれは、負けを覆せという、無茶ぶり。
部活動が強くなるために行く、遠征のようなもの。
(面白い・・・。やってやるよ)
「わかりました。勝ってみせます」
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