双剣使いの極狼零竜《バースト・ゼローグ》

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『遠征』

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狼竜は夢を見ていることに気がついた。
若い自分と、死んだはずのじいちゃんがいたからだ。
ただ、この夢は見ないといけない気がしたので、まだ目は開けない。
「狼竜。強くなる事は悪いことじゃない。それだけ、お前が頑張った証だ。だがな、そのお前の頑張りを、罵ったりする奴もいるだろう。それでも、お前が信じた道を行け。やりたいことをしろ。決心した心はな、もう誰にも止められないんだ。それで、俺を超えろ、狼竜」
話し終わったじいちゃんは、親父に変わる。
「なぁ狼竜、お前は強い。だが、弱いところもあるだろう。その弱さを磨き、強くなれ。お前は、お父さんも、俺も超えられる。守りたいやつもできるだろうさ。そしたらお前は・・・」
親父の言葉はここで終わった。聞こえなかったのか、聞かなかったのか、わからないが、この世界に来たのなら、今は言葉の続きは聞こえない。
(この言葉の続きは、自分で探そう)
こうして狼竜は、目を覚ました。


戦闘を避け続ける大蛇に襲われた悲劇。
何もしていない大蛇は、ただ狩りたいからの理由だけで攻撃をされる。反撃をしようものならば、奴らは酷いことをしてくるだろう。
大蛇に生まれた運命なのか、人間の偏見だけで、大蛇は悪者扱いをされよう。
種族が行ったこと罪なのか。モンスターにだって、わからなかった。
昔、こういう絵本を、サクラは見たことがあった。
モンスター側からしたら、確かに一方的に攻撃をされているだろう。
そんなことを思い出しながら、サクラは夢から目を覚ました。
狼竜とサクラは目を覚ますと、真っ先に洗面所に向かう。もちろん、顔を洗うために。
サクラの目的はそれだけじゃない。朝一番に、狼竜の顔が見れるからだ。
「あっ、サクラおはよう」
狼竜に先におはようと言われてしまった。
「うん、おはよう」
一足先に来ていた狼竜は、タオルで顔がを拭きながら出て行った。
(そういえば、なんであんな夢見たんだろうなぁ・・・)
すこし、嫌な予感がした。


            ☆


草原を駆け巡り、逃げ続ける。
ある者は翼を生やし、ある者は脚を速くした。
しかし、前線には、能力を使わずに、能力使用者と同じぐらいのスピードで地を掛けている者がいた。
「右に行ったぞ!早く追え!」
指示塔兼、サポートアタッカーの、ザクスタン・レイビュートだ。
サポートアタッカーといっても、最もモンスターを撃破しているはずの、アタッカーより数多くモンスターを倒し、サポート支援もしながら、指示を出していた。
「ふぅ。在り方、片付けただろう」
今回モンスター狩りをした理由はただひとつ、モンスターの異常発生による、アルバスの被害を防ぐためだ。
被害は物資運搬に及ばず、国の浸出を防ぐためだ。
それでも、まだ沢山モンスターはいるのだが。
(あっ。今日狼竜来る日じゃないか・・・。急いで戻らないと、とりあえずこの場は福指揮官に渡そう)
またレイは、走り出した。


「おーい、まだかー」
「待って、もう少し」
「何回目のもう少しだよ」
女子の準備はやけに時間がかかる。
服どーしよー、待って忘れ物あるかも!などのチェックがたくさんあった。
「終わった終わった、さぁ行こう!」
「呼ばれてんの、俺なんだけどな・・・」
みんなで、クロに飛び乗り、飛び立った。
「ごめんな、クロ。人が増えたわ」
『いや、大丈夫。女子が1人、2人、3人、4人・・・。うん、大丈夫だから・・・』
「すまん、すまん・・・」
狼竜だけアルバスに呼ばれていた。しかし、サクラの希望で、サクラとヨミと朔夜とミラが同行することになった。
「わぁああああ!すっごい高~い!」
「飛んでるもんね!!」
サクラとヨミが騒いでる。
「狼竜狼竜!こいつ、名前あるの?」
「無いなら私達が付けるー!」
「いや、あるんだけど・・・」
「えぇ!あるの?え、あるの!?」
「うん、あるよ。クロって名前」
「えっ・・・。ダサい・・・」
「酷いっ!相当悩んだすえの名前を・・・」
(あ、いや、悩んでないな)
「んー、でもまぁ、クロでいいかぁ」
名前には納得して、ヨミと一緒に尻尾の方に行ってしまった。
「大変だねぇ狼竜も」
「朔夜か。大変ではないな。疲れるけど」
「あはは、疲れてちゃ、大変じゃん」
「そうなのか」
クロに乗ったことにより、速くも王都に着いた。
「じゃあ待ってて、話し聞いてくる」
「なら私も行かないと」
「なんでだし」
「それはだな・・・うーん、狼竜は私の騎士だからだ!」
「うっす。もう好きにしてくれ」
門番に顔を通し、入ることを許可された狼竜とサクラは中に入る。
もう流石に場所を覚えた狼竜は、すたすたと足を運んだ。
「なぁ狼竜。今日は何なんだろうな」
「呼ばれたこと?多分あれだろ、国の代表の話しとか」
王がいる部屋に着くと、門番に止められる。
「王に言ってくれ、綾辻狼竜が来た、と」
「了解しました」
少し待つと、扉が開いた。
「おー、来てくれたか」
「やっほー、おじちゃん」
(え?馴れ馴れしくね?前にもあったことあるけどまともに話してないような・・・)
「おー、サクラちゃんも来たのか」
(はいきたー。王様公認のやつね。はいはい、おーけーおーけー)
「今日は何の話し?なんか行くなら私達も行っていい?」
「あー、いいぞ。って、え?私達とは?」
「んーと、私とヨミとミラと朔夜!」
「多いのぅ。でもまぁ、大丈夫じゃよ」
(いいのかよ・・・)
雑談ばかり話しているので、そろそろ本題を言い出した。
「王様、今日は何の用で呼んだのですか?」
「ふむ。狼竜君に、我が軍の前線に出て欲しい」
「軍・・・ですか?」
「あぁ、今戦ってる輩は大丈夫じゃが、次の相手はちと厄介での。それに、ポっとでの野郎って狼竜君、舐められてるのでな。ちょうどいいと思って」
「なるほど・・・」
(敵を倒すために、戦力になれ。それと、味方に強さを見せてやれ、と)
「わかりました。喜んでやらしていただきます」
「ふむ。明後日には準備を始めるから、今日から止まって行ってくれ」
「はーい」
サクラが返事をすると、門を出た。
朔夜たちの元に戻ると、話したことを説明し、泊まることになった。
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