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プロローグ*side郁兎
しおりを挟む隣にいる恋人が深い眠りについたのを確認して、郁兎はゆっくりとベッドから起き上がった。
起きている時の大人らしい表情とは違う、あどけない表情で寝ている恋人の頭を優しくさらりと撫でながら、小さな声でつぶやいた。
「ごめんね、」
(これから、僕は君の前からいなくなる。)
もう、決めたことだ。
今更変えられるわけがない。
でも……
(やっぱり、離れたくないよ……っ)
こんなにも好きなのに、離れるなんてありえない。
そう思ってたけど、離れなくてはならなくなってしまった。
それは、僕の落ち度。
僕の責任だ。
だから、全部。
全部片付いたら、また、会ってくれるかな?
……でも、やっぱり、会えないよ。
だってすべてが片付くのがいつになるかなんてわからない。
もしかしたら、1ヶ月とか、結構すぐに終わるかもしれないし、下手をすると1年、はたまた5年なんてかかるかもしれない。
そんな確定しない年月を、待つのが嫌いなこの人に、待ってて、なんて言えるわけがない。
だから君が寝てる間に、と思った。
それなら、君がどんな反応をするかわからないままに出来ると思ったから。
まだ君のことが大好きな僕の決心が鈍らないように。
君は僕がいなくなったら、悲しんでくれるかな?
それとも、怒るかな?
どっちにしろ、それはもう僕には関係ないことになるだろう。
「……よし」
(行こう)
最後に、たった一言だけを書いた紙切れを残して。
部屋の扉に手をかけて、起こさないように、音を立てないように、細心の注意をはらって扉を開けた。
郁兎は振り返って、起きていないことを確認して部屋を出ようと足を踏み出した。
(きっともうこの部屋には来れないのかな)
少しだけ寂しそうに顔を歪めて、歩き出す。
郁兎は、もう振り返らない。
願わくばこの恋人が、自分のいない場所で幸せでありますように。
「本当に、ごめんね。
……はやと」
郁兎side*END*
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