蘭花学園物語〜探しモノ。〜

雨雪

文字の大きさ
1 / 2

プロローグ*side郁兎

しおりを挟む

隣にいる恋人が深い眠りについたのを確認して、郁兎はゆっくりとベッドから起き上がった。

起きている時の大人らしい表情とは違う、あどけない表情で寝ている恋人の頭を優しくさらりと撫でながら、小さな声でつぶやいた。


「ごめんね、」

(これから、僕は君の前からいなくなる。)


もう、決めたことだ。
今更変えられるわけがない。

でも……


(やっぱり、離れたくないよ……っ)


こんなにも好きなのに、離れるなんてありえない。

そう思ってたけど、離れなくてはならなくなってしまった。
それは、僕の落ち度。
僕の責任だ。

だから、全部。
全部片付いたら、また、会ってくれるかな?


……でも、やっぱり、会えないよ。

だってすべてが片付くのがいつになるかなんてわからない。
もしかしたら、1ヶ月とか、結構すぐに終わるかもしれないし、下手をすると1年、はたまた5年なんてかかるかもしれない。
そんな確定しない年月を、待つのが嫌いなこの人に、待ってて、なんて言えるわけがない。

だから君が寝てる間に、と思った。

それなら、君がどんな反応をするかわからないままに出来ると思ったから。
まだ君のことが大好きな僕の決心が鈍らないように。

君は僕がいなくなったら、悲しんでくれるかな?
それとも、怒るかな?

どっちにしろ、それはもう僕には関係ないことになるだろう。


「……よし」

(行こう)

最後に、たった一言だけを書いた紙切れを残して。


部屋の扉に手をかけて、起こさないように、音を立てないように、細心の注意をはらって扉を開けた。

郁兎は振り返って、起きていないことを確認して部屋を出ようと足を踏み出した。


(きっともうこの部屋には来れないのかな)


少しだけ寂しそうに顔を歪めて、歩き出す。
郁兎は、もう振り返らない。

願わくばこの恋人が、自分のいない場所で幸せでありますように。

「本当に、ごめんね。





























……はやと」





郁兎side*END*
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

病弱で病院生活の俺は、幼なじみの恋人と別れたい

しゅうじつ
BL
この先明るい未来のない俺から恋人を解放してあげたい受け×何があってもずっと一緒にいたい恋人 超短編、暗い話 1話完結です。 追記 続きを出しました。(2026/3/5)

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

処理中です...