全寮制男子高校生活~生徒会長の恋~

雨雪

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昔話ー食堂の事件・狼牙ー

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*狼牙side*

転校生と話していた庵の様子がいつもと違うことには気づいていた。

だから俺は、庵から目を離さなかった。



そして、



庵の体が、ふらふらと揺れていた。

大きく、ぐらりと揺れたと思うのとほぼ同時に、倒れていった。

階段の、下の方へ。




それを目視した俺の行動は速かった。

席から立ち上がり、庵の方へ走る。

「……っ、庵っ!!」

自分の手を精一杯伸ばし、間一髪で庵の腕を掴む。

掴んで、力一杯こちらに引っ張る。
引っ張って、その体がとても軽いことに驚く。

(っ!?……軽い。どれだけまともに食べてないんだ?)

そして、庵の体を自分の腕の中へ。
庵が無事なのを確認し、ホッとしてその体を抱き締め座り込む。

周りの風紀委員が騒ぎ出す。一階席の生徒までも。

「委員長、速っ!!凄ぇ!!」
「マジ間に合わないかと思った……」
「庵様、無事で良かったです!!」
「桐谷様ナイスです!!」

そんなもんか?まあ、ほっといていいか。

庵を抱き締めている狼牙以外は、庵に意識がないことをまだ知らない。

そして、庵の一番近くにいた狼牙は体調が悪いらしい庵の様子を伺う。
掴んだ腕がとてつもなく熱かった。それに、息が荒い。
狼牙は庵の額に手を当てると、その熱さにまた驚く。

そして、庵を抱えると、風紀委員に告げた。

「……庵に熱がある。俺は保健室に連れて行くから、風紀委員、後始末頼むぞ」
「はい!」
「任しといてください!!」
「りょーかい、行ってらっしゃい狼牙。……役得だね~?」
「……煩い」

狼牙は庵を横抱きにしている。
まあ、これに他意はない。意識がない時におんぶはバランス的に危ないってだけなのだが……

海斗にからかわれたが無視。

庵を抱えて再び思う。

(やはり、軽すぎる。……これは生徒会メンバーによおく事情を聞かなくては)

庵の軽すぎる細い体を抱え、狼牙は生徒会メンバー(と、転入生)への怒りが湧いてきた。
狼牙は報告として、生徒会メンバーが四六時中転入生についていて、仕事をしているのは庵だけということを聞いている。
それを聞いた時、生徒会メンバーにふつふつと、しかし静かに苛立った。

そして今は、あの時とは比べ物にならないほどの怒りが湧いている。


実は狼牙は初等部の時から庵が恋愛感情で好きなことを自覚済みだった。
しかし庵の気持ちには気付かず。

2人して自分に向けられた好意に鈍いのである。


********************

生徒会メンバーは前作とは違いますが、風紀メンバーは一緒なので海斗がいます。
出てきてませんが湊もいます。
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