6 / 13
昔話ー食堂の事件・狼牙ー
しおりを挟む
*狼牙side*
転校生と話していた庵の様子がいつもと違うことには気づいていた。
だから俺は、庵から目を離さなかった。
そして、
庵の体が、ふらふらと揺れていた。
大きく、ぐらりと揺れたと思うのとほぼ同時に、倒れていった。
階段の、下の方へ。
それを目視した俺の行動は速かった。
席から立ち上がり、庵の方へ走る。
「……っ、庵っ!!」
自分の手を精一杯伸ばし、間一髪で庵の腕を掴む。
掴んで、力一杯こちらに引っ張る。
引っ張って、その体がとても軽いことに驚く。
(っ!?……軽い。どれだけまともに食べてないんだ?)
そして、庵の体を自分の腕の中へ。
庵が無事なのを確認し、ホッとしてその体を抱き締め座り込む。
周りの風紀委員が騒ぎ出す。一階席の生徒までも。
「委員長、速っ!!凄ぇ!!」
「マジ間に合わないかと思った……」
「庵様、無事で良かったです!!」
「桐谷様ナイスです!!」
そんなもんか?まあ、ほっといていいか。
庵を抱き締めている狼牙以外は、庵に意識がないことをまだ知らない。
そして、庵の一番近くにいた狼牙は体調が悪いらしい庵の様子を伺う。
掴んだ腕がとてつもなく熱かった。それに、息が荒い。
狼牙は庵の額に手を当てると、その熱さにまた驚く。
そして、庵を抱えると、風紀委員に告げた。
「……庵に熱がある。俺は保健室に連れて行くから、風紀委員、後始末頼むぞ」
「はい!」
「任しといてください!!」
「りょーかい、行ってらっしゃい狼牙。……役得だね~?」
「……煩い」
狼牙は庵を横抱きにしている。
まあ、これに他意はない。意識がない時におんぶはバランス的に危ないってだけなのだが……
海斗にからかわれたが無視。
庵を抱えて再び思う。
(やはり、軽すぎる。……これは生徒会メンバーによおく事情を聞かなくては)
庵の軽すぎる細い体を抱え、狼牙は生徒会メンバー(と、転入生)への怒りが湧いてきた。
狼牙は報告として、生徒会メンバーが四六時中転入生についていて、仕事をしているのは庵だけということを聞いている。
それを聞いた時、生徒会メンバーにふつふつと、しかし静かに苛立った。
そして今は、あの時とは比べ物にならないほどの怒りが湧いている。
実は狼牙は初等部の時から庵が恋愛感情で好きなことを自覚済みだった。
しかし庵の気持ちには気付かず。
2人して自分に向けられた好意に鈍いのである。
********************
生徒会メンバーは前作とは違いますが、風紀メンバーは一緒なので海斗がいます。
出てきてませんが湊もいます。
転校生と話していた庵の様子がいつもと違うことには気づいていた。
だから俺は、庵から目を離さなかった。
そして、
庵の体が、ふらふらと揺れていた。
大きく、ぐらりと揺れたと思うのとほぼ同時に、倒れていった。
階段の、下の方へ。
それを目視した俺の行動は速かった。
席から立ち上がり、庵の方へ走る。
「……っ、庵っ!!」
自分の手を精一杯伸ばし、間一髪で庵の腕を掴む。
掴んで、力一杯こちらに引っ張る。
引っ張って、その体がとても軽いことに驚く。
(っ!?……軽い。どれだけまともに食べてないんだ?)
そして、庵の体を自分の腕の中へ。
庵が無事なのを確認し、ホッとしてその体を抱き締め座り込む。
周りの風紀委員が騒ぎ出す。一階席の生徒までも。
「委員長、速っ!!凄ぇ!!」
「マジ間に合わないかと思った……」
「庵様、無事で良かったです!!」
「桐谷様ナイスです!!」
そんなもんか?まあ、ほっといていいか。
庵を抱き締めている狼牙以外は、庵に意識がないことをまだ知らない。
そして、庵の一番近くにいた狼牙は体調が悪いらしい庵の様子を伺う。
掴んだ腕がとてつもなく熱かった。それに、息が荒い。
狼牙は庵の額に手を当てると、その熱さにまた驚く。
そして、庵を抱えると、風紀委員に告げた。
「……庵に熱がある。俺は保健室に連れて行くから、風紀委員、後始末頼むぞ」
「はい!」
「任しといてください!!」
「りょーかい、行ってらっしゃい狼牙。……役得だね~?」
「……煩い」
狼牙は庵を横抱きにしている。
まあ、これに他意はない。意識がない時におんぶはバランス的に危ないってだけなのだが……
海斗にからかわれたが無視。
庵を抱えて再び思う。
(やはり、軽すぎる。……これは生徒会メンバーによおく事情を聞かなくては)
庵の軽すぎる細い体を抱え、狼牙は生徒会メンバー(と、転入生)への怒りが湧いてきた。
狼牙は報告として、生徒会メンバーが四六時中転入生についていて、仕事をしているのは庵だけということを聞いている。
それを聞いた時、生徒会メンバーにふつふつと、しかし静かに苛立った。
そして今は、あの時とは比べ物にならないほどの怒りが湧いている。
実は狼牙は初等部の時から庵が恋愛感情で好きなことを自覚済みだった。
しかし庵の気持ちには気付かず。
2人して自分に向けられた好意に鈍いのである。
********************
生徒会メンバーは前作とは違いますが、風紀メンバーは一緒なので海斗がいます。
出てきてませんが湊もいます。
0
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる