ワンダープラネット《やんごとなき姫君と彷徨える星の物語》

遠堂瑠璃

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18 脱走

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 続くラオンを気にしながら、ソモルがやや速度を落とす。走る事に慣れたせいか、ラオンは出会った日よりも多少速かった。

 ビイィィィ

 通路の隅々に、警報ブザーが反響した。

「チクショウ!」

 走りながらソモルが舌打ちする。

「あれだ、ソモル!」

 通路の先の開けた広い一室に、二人の求める宇宙船はあった。

「よし!」

 警報音を背に、一気に駆け抜け中に滑り込む。

「スリル満点だ」

 ラオンがこの場に似つかわしくないような笑みを見せる。ずいぶん能天気だと思うが、ソモルはあえて口にしない。
 丸い形をした、二人乗りの白い小型宇宙船。ラオンは、機体の戸に手をかけた。
 もちろん、ロックされていて戸が開くわけがない。と思いきや、開いた。
 ちょっと拍子抜けしながらも、これは恵まれた展開だった。それに、もたもたしてはいられない。二人は、さっさと宇宙船に乗り込んだ。
 中は前後に座席がふたつ、操縦桿には細かいレバーやボタンがびっしりだった。
 ラオンは機体の窓から顔を出し、天井を見上げた。ちょうど真上には、開閉型の外への扉がある。という事は、このまま上空へ飛び立つ事ができる、筈。
 開ける方法は判らないが、物体を感知して自動開閉するタイプである事を願うしかない。

「何処を押せば、飛ぶのかなあ」

 ラオンはどれにしようかなと指先を彷徨わせる。

「どれだっていいよ、ラオンに任せる」

 今までのラオンの強運ぶりを目の当たりにしてきたソモルは、戸惑う事なくそう云った。

「よーし、いちかばちか!」

 直感の導くままに。
 ラオンは、これだと思った赤いボタンを押した。

 機体に、光が満ちる。
 宇宙船が起動した。緩い振動、機体の後部が熱を帯びていく。

 ようやく駆けつけた警備員たちは、今にも飛び立とうと構えている宇宙船を目撃した。

「ああ! 宇宙船がっ!」

 声は、音に掻き消された。

 ドドドドドドドォォォォォ

 機体が浮上する。
 後は、天井の扉が開けば。

 開けっ!
 ラオンが祈る。

 宇宙船を感知した天井が、灰色の重い鉄の扉を動かしていく。開いたその先には夜空が見えた。

「やった!」

 完璧な作戦成功に、ラオンとソモルははしゃぎ笑い合った。
 眩しい閃光の余韻を残し、なすすべもない警備員たちに見送られながら、小型宇宙船はタイタンの夜空高く飛び立った。

「やった! やったよ、ソモル!」
「ひゃっほーっ!」

 狭い船内に、二人の歓声が響く。
 機体が軽いせいか最先端の宇宙船は驚く程速く、一瞬で大気圏をすり抜けそこはすでに星の海だった。真下には、たったさっきまで二人が居たタイタンの丸い形が見えた。その後ろには、輪を描いた大きな土星が鎮座している。
 喜び勇むラオンの視界の片隅に、土星の遥か後方に位置する惑星の王、木星の堂々たる光がひっそりと映り込んだ。


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