18 / 28
18 脱走
しおりを挟む
続くラオンを気にしながら、ソモルがやや速度を落とす。走る事に慣れたせいか、ラオンは出会った日よりも多少速かった。
ビイィィィ
通路の隅々に、警報ブザーが反響した。
「チクショウ!」
走りながらソモルが舌打ちする。
「あれだ、ソモル!」
通路の先の開けた広い一室に、二人の求める宇宙船はあった。
「よし!」
警報音を背に、一気に駆け抜け中に滑り込む。
「スリル満点だ」
ラオンがこの場に似つかわしくないような笑みを見せる。ずいぶん能天気だと思うが、ソモルはあえて口にしない。
丸い形をした、二人乗りの白い小型宇宙船。ラオンは、機体の戸に手をかけた。
もちろん、ロックされていて戸が開くわけがない。と思いきや、開いた。
ちょっと拍子抜けしながらも、これは恵まれた展開だった。それに、もたもたしてはいられない。二人は、さっさと宇宙船に乗り込んだ。
中は前後に座席がふたつ、操縦桿には細かいレバーやボタンがびっしりだった。
ラオンは機体の窓から顔を出し、天井を見上げた。ちょうど真上には、開閉型の外への扉がある。という事は、このまま上空へ飛び立つ事ができる、筈。
開ける方法は判らないが、物体を感知して自動開閉するタイプである事を願うしかない。
「何処を押せば、飛ぶのかなあ」
ラオンはどれにしようかなと指先を彷徨わせる。
「どれだっていいよ、ラオンに任せる」
今までのラオンの強運ぶりを目の当たりにしてきたソモルは、戸惑う事なくそう云った。
「よーし、いちかばちか!」
直感の導くままに。
ラオンは、これだと思った赤いボタンを押した。
機体に、光が満ちる。
宇宙船が起動した。緩い振動、機体の後部が熱を帯びていく。
ようやく駆けつけた警備員たちは、今にも飛び立とうと構えている宇宙船を目撃した。
「ああ! 宇宙船がっ!」
声は、音に掻き消された。
ドドドドドドドォォォォォ
機体が浮上する。
後は、天井の扉が開けば。
開けっ!
ラオンが祈る。
宇宙船を感知した天井が、灰色の重い鉄の扉を動かしていく。開いたその先には夜空が見えた。
「やった!」
完璧な作戦成功に、ラオンとソモルははしゃぎ笑い合った。
眩しい閃光の余韻を残し、なすすべもない警備員たちに見送られながら、小型宇宙船はタイタンの夜空高く飛び立った。
「やった! やったよ、ソモル!」
「ひゃっほーっ!」
狭い船内に、二人の歓声が響く。
機体が軽いせいか最先端の宇宙船は驚く程速く、一瞬で大気圏をすり抜けそこはすでに星の海だった。真下には、たったさっきまで二人が居たタイタンの丸い形が見えた。その後ろには、輪を描いた大きな土星が鎮座している。
喜び勇むラオンの視界の片隅に、土星の遥か後方に位置する惑星の王、木星の堂々たる光がひっそりと映り込んだ。
ビイィィィ
通路の隅々に、警報ブザーが反響した。
「チクショウ!」
走りながらソモルが舌打ちする。
「あれだ、ソモル!」
通路の先の開けた広い一室に、二人の求める宇宙船はあった。
「よし!」
警報音を背に、一気に駆け抜け中に滑り込む。
「スリル満点だ」
ラオンがこの場に似つかわしくないような笑みを見せる。ずいぶん能天気だと思うが、ソモルはあえて口にしない。
丸い形をした、二人乗りの白い小型宇宙船。ラオンは、機体の戸に手をかけた。
もちろん、ロックされていて戸が開くわけがない。と思いきや、開いた。
ちょっと拍子抜けしながらも、これは恵まれた展開だった。それに、もたもたしてはいられない。二人は、さっさと宇宙船に乗り込んだ。
中は前後に座席がふたつ、操縦桿には細かいレバーやボタンがびっしりだった。
ラオンは機体の窓から顔を出し、天井を見上げた。ちょうど真上には、開閉型の外への扉がある。という事は、このまま上空へ飛び立つ事ができる、筈。
開ける方法は判らないが、物体を感知して自動開閉するタイプである事を願うしかない。
「何処を押せば、飛ぶのかなあ」
ラオンはどれにしようかなと指先を彷徨わせる。
「どれだっていいよ、ラオンに任せる」
今までのラオンの強運ぶりを目の当たりにしてきたソモルは、戸惑う事なくそう云った。
「よーし、いちかばちか!」
直感の導くままに。
ラオンは、これだと思った赤いボタンを押した。
機体に、光が満ちる。
宇宙船が起動した。緩い振動、機体の後部が熱を帯びていく。
ようやく駆けつけた警備員たちは、今にも飛び立とうと構えている宇宙船を目撃した。
「ああ! 宇宙船がっ!」
声は、音に掻き消された。
ドドドドドドドォォォォォ
機体が浮上する。
後は、天井の扉が開けば。
開けっ!
ラオンが祈る。
宇宙船を感知した天井が、灰色の重い鉄の扉を動かしていく。開いたその先には夜空が見えた。
「やった!」
完璧な作戦成功に、ラオンとソモルははしゃぎ笑い合った。
眩しい閃光の余韻を残し、なすすべもない警備員たちに見送られながら、小型宇宙船はタイタンの夜空高く飛び立った。
「やった! やったよ、ソモル!」
「ひゃっほーっ!」
狭い船内に、二人の歓声が響く。
機体が軽いせいか最先端の宇宙船は驚く程速く、一瞬で大気圏をすり抜けそこはすでに星の海だった。真下には、たったさっきまで二人が居たタイタンの丸い形が見えた。その後ろには、輪を描いた大きな土星が鎮座している。
喜び勇むラオンの視界の片隅に、土星の遥か後方に位置する惑星の王、木星の堂々たる光がひっそりと映り込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
パンティージャムジャムおじさん
KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。
口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。
子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。
そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う
釈 余白(しやく)
児童書・童話
ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。
最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。
てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。
てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。
デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?
てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
緑色の友達
石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。
こちらは小説家になろうにも投稿しております。
表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる