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17.謝るのは、俺の方だから
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俺の心臓が、ドッドッと叩きつけるように激しく波打つ。
全身が、カーっと熱くなった。
わけの判んねえ奴等が、ラオンにちょっかい出そうとしてる。
その状況を目の前に、俺の頭に一気に血が上っていく。
俺は弾かれたような勢いで、ラオンの方に飛び出していた。
「ねーっ、いいじゃん! 俺たちがさあ、この街の楽しいとこに案内してあげるからさあ」
「何、一緒に来てんのって女の子? やっぱ君みたいに超可愛い娘? なんならその娘も一緒に……」
「おいっ、ラオン!」
そのふざけた野郎の言葉をぶったぎるように、俺は荒っぽくラオンを呼んだ。
ラオンの肩に触れようと伸ばしかけたそいつの手が、びくっとして宙で止まった。
俺はその汚ねえ手を叩き落としたい衝動を、ぐっと堪える。
チャラい感じのその野郎どもは、鳩が豆鉄砲食らったような間抜けヅラで俺を見た。
そこら中に増殖してるような、頭の悪そうな二人組。
可愛い女の子を見つければ、舌舐めずりして近づいてくるような、程度の低いゲス連中。
このナンパ野郎どもがっ!
馴れ馴れしくラオンに話かけてんじゃねえよっ!
そのにやけたやらしい眼で、ラオンの事見んじゃねえっ!
クソッ! すげえムカツク‼
脳内をアドレナリンで満タンにしたまま、俺はその野郎どもを睨み付けた。
「いくぞっ」
そいつらの低俗な視線からひっぺがすように、俺はラオンの手を強引に引いた。
一秒でも、こいつらの眼にラオンを晒すのが耐えらんねえ。
ラオンはそんな俺の剣幕にちょっとびっくりしながら、それでも俺に手を引かれて歩き出す。
「なんだよ、彼氏連れかよ」
舌打ちの後に、連中が捨て台詞みたいに吐き捨てるのが聞こえた。
すげえムカツキながらも、俺はその一言に頭の片隅で軽く優越感を覚えていた。
「ごめんね」
俺に手を引かれたまま後ろを歩くラオンが、小さく呟いた。
「……なんで、ラオンが謝ってんだよ」
速足で歩きながら、俺は肩越しにちらりと後ろのラオンを覗き見る。
「だって、僕がすぐに約束した樹の下に行かなかったから……」
消えちまいそうな、ラオンの声。
チクリ。
小さな氷の欠片が刺さったみたいに、俺の心に冷たい痛みが走った。
ラオンは多分、勘違いしてる。
約束した樹の下にラオンがすぐに来なかったせいで、俺が怒ってるんだと。
「違うよ、俺、そんな事で怒ってんじゃねえし! ラオンが謝る必要なんて、全然ねえし!」
やべえ……。俺、やっちまった……。
一瞬でも、ラオンを悲しい気持ちにさせちまった。
ラオンに楽しい思い出だけ残してやるって、さっき決めたばっかなのに。
あんなつまんねえ連中に嫉妬して腹立てて、ラオンを悲しい気持ちにさせちまった。
俺、何やってんだ……。
それに今だって、俺すげえ速足で、ラオンの事無理矢理引っ張って。
ラオンは小走りになって、そんな俺に必死で付いてきてくれてんのに……。
そんな事すら、頭のぼせ過ぎて気づけなかった。
あんな連中がラオンに話かける隙を与えちまった事が無性に腹立たしくって、俺は自棄になっていた。
自分自身にも頭きて、無意識に当たり散らしてた。
俺、ラオンの事が一番大切なのに、その大切なラオンを知らない間に傷つけて。
俺は速かった歩調を緩めて、そして立ち止まった。
強く握り過ぎてた、ラオンの手。
指先に入った力を、ゆっくりとほどく。
俺とラオンの手の隙間に、風が入り込む。ひんやりと冷たい、汗の温度に気づいた。
「……謝るのは、俺の方だから」
口ごもるように呟いて、俺はうつむいた。
ラオンの事、見れなかった。
緩く繋がったままの、俺とラオンの手。
ほどけかけた、指と指。
いたたまれなくなって離そうとした俺の手を、ラオンの指がつなぎ止めた。
ドキリとして、俺は動きを止める。
中途半端に固まった俺の手を、しっとりと柔らかいラオンの手が包み込むように握り締めた。
to be continue
全身が、カーっと熱くなった。
わけの判んねえ奴等が、ラオンにちょっかい出そうとしてる。
その状況を目の前に、俺の頭に一気に血が上っていく。
俺は弾かれたような勢いで、ラオンの方に飛び出していた。
「ねーっ、いいじゃん! 俺たちがさあ、この街の楽しいとこに案内してあげるからさあ」
「何、一緒に来てんのって女の子? やっぱ君みたいに超可愛い娘? なんならその娘も一緒に……」
「おいっ、ラオン!」
そのふざけた野郎の言葉をぶったぎるように、俺は荒っぽくラオンを呼んだ。
ラオンの肩に触れようと伸ばしかけたそいつの手が、びくっとして宙で止まった。
俺はその汚ねえ手を叩き落としたい衝動を、ぐっと堪える。
チャラい感じのその野郎どもは、鳩が豆鉄砲食らったような間抜けヅラで俺を見た。
そこら中に増殖してるような、頭の悪そうな二人組。
可愛い女の子を見つければ、舌舐めずりして近づいてくるような、程度の低いゲス連中。
このナンパ野郎どもがっ!
馴れ馴れしくラオンに話かけてんじゃねえよっ!
そのにやけたやらしい眼で、ラオンの事見んじゃねえっ!
クソッ! すげえムカツク‼
脳内をアドレナリンで満タンにしたまま、俺はその野郎どもを睨み付けた。
「いくぞっ」
そいつらの低俗な視線からひっぺがすように、俺はラオンの手を強引に引いた。
一秒でも、こいつらの眼にラオンを晒すのが耐えらんねえ。
ラオンはそんな俺の剣幕にちょっとびっくりしながら、それでも俺に手を引かれて歩き出す。
「なんだよ、彼氏連れかよ」
舌打ちの後に、連中が捨て台詞みたいに吐き捨てるのが聞こえた。
すげえムカツキながらも、俺はその一言に頭の片隅で軽く優越感を覚えていた。
「ごめんね」
俺に手を引かれたまま後ろを歩くラオンが、小さく呟いた。
「……なんで、ラオンが謝ってんだよ」
速足で歩きながら、俺は肩越しにちらりと後ろのラオンを覗き見る。
「だって、僕がすぐに約束した樹の下に行かなかったから……」
消えちまいそうな、ラオンの声。
チクリ。
小さな氷の欠片が刺さったみたいに、俺の心に冷たい痛みが走った。
ラオンは多分、勘違いしてる。
約束した樹の下にラオンがすぐに来なかったせいで、俺が怒ってるんだと。
「違うよ、俺、そんな事で怒ってんじゃねえし! ラオンが謝る必要なんて、全然ねえし!」
やべえ……。俺、やっちまった……。
一瞬でも、ラオンを悲しい気持ちにさせちまった。
ラオンに楽しい思い出だけ残してやるって、さっき決めたばっかなのに。
あんなつまんねえ連中に嫉妬して腹立てて、ラオンを悲しい気持ちにさせちまった。
俺、何やってんだ……。
それに今だって、俺すげえ速足で、ラオンの事無理矢理引っ張って。
ラオンは小走りになって、そんな俺に必死で付いてきてくれてんのに……。
そんな事すら、頭のぼせ過ぎて気づけなかった。
あんな連中がラオンに話かける隙を与えちまった事が無性に腹立たしくって、俺は自棄になっていた。
自分自身にも頭きて、無意識に当たり散らしてた。
俺、ラオンの事が一番大切なのに、その大切なラオンを知らない間に傷つけて。
俺は速かった歩調を緩めて、そして立ち止まった。
強く握り過ぎてた、ラオンの手。
指先に入った力を、ゆっくりとほどく。
俺とラオンの手の隙間に、風が入り込む。ひんやりと冷たい、汗の温度に気づいた。
「……謝るのは、俺の方だから」
口ごもるように呟いて、俺はうつむいた。
ラオンの事、見れなかった。
緩く繋がったままの、俺とラオンの手。
ほどけかけた、指と指。
いたたまれなくなって離そうとした俺の手を、ラオンの指がつなぎ止めた。
ドキリとして、俺は動きを止める。
中途半端に固まった俺の手を、しっとりと柔らかいラオンの手が包み込むように握り締めた。
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