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18.ワンコインの幸せ
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それから俺とラオンは、手を繋いで賑やかな街を歩いた。
お互いに、黙ったまま。
けど、手のひらはぴたりと繋がってた。
俺はジュピターの追っ手の気配に神経を張りながら、それでもラオンに合わせてゆっくり歩調で足を進める。
時折感じる、ラオンの指の僅かな動き。握った手のひらの力具合とか。
俺の皮膚が、敏感に拾い上げる。
言葉がなくたって、俺たちは結び合わさっていた。
心の一番、柔らかな部分で。
だからこの時間が、じわりじわりと満たされてく。
ラオンの手、なんでこんなに柔らかいんだろ。
俺の手の中にすっぽりと収まるくらいに小っさな、ラオンの手。
まるでマシュマロみたいにふわふわしてる。
他の奴なんかには、絶対に触らせたくねえ。
不意に、ラオンが立ち止まった。
ラオンの手にくいっと引っ張られる感じで、俺も一瞬遅れで立ち止まる。
「どうした、ラオン」
ラオンは、道の端に並んでる店の方に眼を奪われてた。
だいぶユニークなタッチの似顔絵屋とちょっとボロ過ぎる古着屋の真ん中に挟まれて、アクセサリーやらマスコットやらの店がある。
ラオンの目線は、真っ直ぐにそこに向いていた。
ラオンもやっぱ、こういうの好きなんだな。
そうだよな、女の子だもんな。
夢中で視線を釘付けにしてるラオンが可愛くて、俺の強張り気味だった口元が弛んだ。
「見てみるか?」
「うん」
ラオンは嬉しそうに頷いて、俺の手を引くように露店に駆け寄る。
午後の太陽の陽射しを受けて、キラキラ星みたいに光るガラス玉で造られたアクセサリー。
それを物色するラオンの眼は、負けないくらいにキラキラ輝いてた。
俺はこんな作り物のガラス玉より、ラオンの眼の方がずっと綺麗だと思う。
そんな恥ずかしい事、絶対口には出せないけど……。
なんか気に入ったのを見つけたらしく、ラオンの瞳の焦点が一点に結ばれた。
ラオンが眼をつけたのは、端っこの方にちょこんと並んだなんかの動物のマスコットだった。
モコモコした生地でできた、手のひらサイズのぬいぐるみ。
おんなじ形をしたぬいぐるみが、五個並んでる。
これ、なんの動物だ?
腹のとこに、色違いのガラス玉が埋め込んであった。
「これは、羊という動物ですよ」
牛乳瓶の底みたいな銀縁眼鏡の、兄ちゃんだか姉ちゃんだか判断すらつかない売人が云った。
「ふぅん」
ラオンがぬいぐるみのモコモコを指先でぷにぷに押した。
まるで睨めっこするみたいに、真ん丸な眼でぬいぐるみを見詰めながら。
俺はラオンに気付かれないように、ズボンの尻ポケットの財布を探った。
ラオンに、なんか形のあるものをあげたい。
ラオンの記憶に、ずっと残るように。
今日俺と一緒に過ごした時間を、絶対に忘れないでいて欲しいから。
「それ、いくらですか?」
俺はラオンの後ろから、牛乳瓶底眼鏡に訊いた。
「500ムーア丁度です」
商売人独特の笑顔で、牛乳瓶底眼鏡が答える。
ワンコイン。
俺は500ムーアコイン一枚を、差し出された瓶底眼鏡の手のひらに乗せた。
「ラオン、どの色のヤツがいい? 好きなの選べよ」
ラオンが、くるっと俺を振り向いた。
翡翠色の大きな眼を真ん丸にして、俺を真っ直ぐに見詰める。
「いいの?」
俺が頷くと、ラオンはすげえ嬉しそうに笑った。
街路樹の淡い零れ陽を受けて、キラキラと。
今の瞬間のラオンも、俺の記憶のフィルムにくっきりと焼きつける。
一生忘れたくないものが、またひとつ俺の中に増えた。
「僕、この色にする」
赤、青、緑、黄、ピンク。
ラオンは、一番端の青いガラス玉のマスコットを手に取る。
「ありがとう、ソモル! 僕、絶対大切にするね」
ラオンはモコモコの羊のマスコットを両手で包み込むように持ったまま、花が開いたみたいに笑った。
ふわふわの感触を楽しむように、真っ白な頬っぺたに寄せてみたりしながら、もう一度
「ありがとう」
と云ってにっこりする。
すげえ喜んでる! 買ってあげて良かったあ!
ラオンが喜んでる顔が見れて、俺もすげえ幸せだよ♡
こんなに可愛いラオンが見れて、むしろ俺の方がありがとう!
「ラオン、青が好きなんだな」
ぬいぐるみをずっと指先でモコモコしながら楽しそうにしてるラオンに、俺は何気なく呟いた。
ちょっと意外だったから。
ラオンはてっきり、赤とかピンクとか選ぶと思ってた。
そんな俺を、ラオンが少し上目使いに見上げる。
「だってこの青、ソモルの眼の色に似てたから」
えっ……!
ラオンは頬っぺたでぬいぐるみをモコモコしながら、ふふっと笑った。
俺の心は、トランポリンで飛び上がったみたいにめちゃくちゃ高揚していた。
……そんな嬉しい事云われて可愛く笑われたら、俺、期待しちゃうぜ。
いいのか、ラオン?
俺、すげえ単純なんだからさあ……。
to be continue
お互いに、黙ったまま。
けど、手のひらはぴたりと繋がってた。
俺はジュピターの追っ手の気配に神経を張りながら、それでもラオンに合わせてゆっくり歩調で足を進める。
時折感じる、ラオンの指の僅かな動き。握った手のひらの力具合とか。
俺の皮膚が、敏感に拾い上げる。
言葉がなくたって、俺たちは結び合わさっていた。
心の一番、柔らかな部分で。
だからこの時間が、じわりじわりと満たされてく。
ラオンの手、なんでこんなに柔らかいんだろ。
俺の手の中にすっぽりと収まるくらいに小っさな、ラオンの手。
まるでマシュマロみたいにふわふわしてる。
他の奴なんかには、絶対に触らせたくねえ。
不意に、ラオンが立ち止まった。
ラオンの手にくいっと引っ張られる感じで、俺も一瞬遅れで立ち止まる。
「どうした、ラオン」
ラオンは、道の端に並んでる店の方に眼を奪われてた。
だいぶユニークなタッチの似顔絵屋とちょっとボロ過ぎる古着屋の真ん中に挟まれて、アクセサリーやらマスコットやらの店がある。
ラオンの目線は、真っ直ぐにそこに向いていた。
ラオンもやっぱ、こういうの好きなんだな。
そうだよな、女の子だもんな。
夢中で視線を釘付けにしてるラオンが可愛くて、俺の強張り気味だった口元が弛んだ。
「見てみるか?」
「うん」
ラオンは嬉しそうに頷いて、俺の手を引くように露店に駆け寄る。
午後の太陽の陽射しを受けて、キラキラ星みたいに光るガラス玉で造られたアクセサリー。
それを物色するラオンの眼は、負けないくらいにキラキラ輝いてた。
俺はこんな作り物のガラス玉より、ラオンの眼の方がずっと綺麗だと思う。
そんな恥ずかしい事、絶対口には出せないけど……。
なんか気に入ったのを見つけたらしく、ラオンの瞳の焦点が一点に結ばれた。
ラオンが眼をつけたのは、端っこの方にちょこんと並んだなんかの動物のマスコットだった。
モコモコした生地でできた、手のひらサイズのぬいぐるみ。
おんなじ形をしたぬいぐるみが、五個並んでる。
これ、なんの動物だ?
腹のとこに、色違いのガラス玉が埋め込んであった。
「これは、羊という動物ですよ」
牛乳瓶の底みたいな銀縁眼鏡の、兄ちゃんだか姉ちゃんだか判断すらつかない売人が云った。
「ふぅん」
ラオンがぬいぐるみのモコモコを指先でぷにぷに押した。
まるで睨めっこするみたいに、真ん丸な眼でぬいぐるみを見詰めながら。
俺はラオンに気付かれないように、ズボンの尻ポケットの財布を探った。
ラオンに、なんか形のあるものをあげたい。
ラオンの記憶に、ずっと残るように。
今日俺と一緒に過ごした時間を、絶対に忘れないでいて欲しいから。
「それ、いくらですか?」
俺はラオンの後ろから、牛乳瓶底眼鏡に訊いた。
「500ムーア丁度です」
商売人独特の笑顔で、牛乳瓶底眼鏡が答える。
ワンコイン。
俺は500ムーアコイン一枚を、差し出された瓶底眼鏡の手のひらに乗せた。
「ラオン、どの色のヤツがいい? 好きなの選べよ」
ラオンが、くるっと俺を振り向いた。
翡翠色の大きな眼を真ん丸にして、俺を真っ直ぐに見詰める。
「いいの?」
俺が頷くと、ラオンはすげえ嬉しそうに笑った。
街路樹の淡い零れ陽を受けて、キラキラと。
今の瞬間のラオンも、俺の記憶のフィルムにくっきりと焼きつける。
一生忘れたくないものが、またひとつ俺の中に増えた。
「僕、この色にする」
赤、青、緑、黄、ピンク。
ラオンは、一番端の青いガラス玉のマスコットを手に取る。
「ありがとう、ソモル! 僕、絶対大切にするね」
ラオンはモコモコの羊のマスコットを両手で包み込むように持ったまま、花が開いたみたいに笑った。
ふわふわの感触を楽しむように、真っ白な頬っぺたに寄せてみたりしながら、もう一度
「ありがとう」
と云ってにっこりする。
すげえ喜んでる! 買ってあげて良かったあ!
ラオンが喜んでる顔が見れて、俺もすげえ幸せだよ♡
こんなに可愛いラオンが見れて、むしろ俺の方がありがとう!
「ラオン、青が好きなんだな」
ぬいぐるみをずっと指先でモコモコしながら楽しそうにしてるラオンに、俺は何気なく呟いた。
ちょっと意外だったから。
ラオンはてっきり、赤とかピンクとか選ぶと思ってた。
そんな俺を、ラオンが少し上目使いに見上げる。
「だってこの青、ソモルの眼の色に似てたから」
えっ……!
ラオンは頬っぺたでぬいぐるみをモコモコしながら、ふふっと笑った。
俺の心は、トランポリンで飛び上がったみたいにめちゃくちゃ高揚していた。
……そんな嬉しい事云われて可愛く笑われたら、俺、期待しちゃうぜ。
いいのか、ラオン?
俺、すげえ単純なんだからさあ……。
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