のろまなあの子

灯雨

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のろまなあの子

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季節外れの、向日葵ひまわりだった。

この夏も終わりに近づいているのに
周りの花たちはその盛りを終えて、枯れ始めているのに
どこかから、秋の虫の鳴き声が風に乗って聞こえ始めたのに
それなのに・・
その向日葵だけが、まだ蕾のままで、空をじっと見つめていた。

「お前、どうして咲かないの?」

そう心の中で問いかけても、もちろん返事はない。
向日葵は、ただそこにいるだけで、そのつもりがあるのかないのか、
空を見上げている。

「随分と呑気なもので」

少し前まで、周りには色とりどりの花々が咲き誇っていて
彼らはもう、その使命を果たして次の世代を残す準備に取り掛かっていて
それなのに・・
まるで居残りさせられているみたいに
この向日葵だけが、まだ蕾のまま。
少しは焦ってみたら? なんて。

「誰に似たんだろう、のろまだなぁ……」

夏の終わりを告げるかのように、風が少しだけ涼しくなった夜の空気を運んでくる。
夏が名残惜しいのか、いつまでも咲かない向日葵を見つめながら、私は思った。

「でも、まあ、しょうがないか。そんな君を、どうにか咲かせようとするのも、こっちの勝手な期待だしねぇ」

……しょうがないから、君が咲くまで付き合ってあげるか。



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