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第三章 愛した人
十五
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拓海は、忙しい毎日を送った。
一年間は研修中の身であったので、早く一人前になるために仕事に集中していた。
秀也から連絡が途絶え始めたのは、拓海が勤めはじめてから二年が経った頃だった。
最後に拓海が彼に送ったメッセージは【仕事が忙しくて連絡が難しい、ごめん】だ。
仕事が落ち着いたら連絡をしようと思ってたけど、今更なんて送るのが正解なんだろうか。
急に、仕事が落ち着いたと送っても、半年以上の間音沙汰無しだった男から連絡がきても、気持ちの好いもんじゃないよな。……なんて送るのが正解なんだろう。
会う事もなく、連絡を取ることもなく、お互いの距離も共有する時間も長い間空いてしまった。どうしようも出来ない拓海は、仕事が早上がり出来たとしても連絡を取るのを躊躇い、帰宅するのがその後も続いた。拓海は結局それから秀也に一度も連絡を入れなかった。
雪が降り曇り空が続く季節から暖かな日差しをうけ草花が芽吹く春。
ある日の夕方、秀也から一本の電話があった。
拓海はたまたま診療時間外に急患の診察があった。近所で交通事故があり、大型病院の救急車が来るまでの間、様子を見ることになった。自転車と歩行者の交通事故であり、幸いなことに重症の患者が運ばれることはなかった。それでも、患者の精神的なショックや、個人病院であるため、精密な検査が出来ず患者の様態がいつどう変わるか予測できないため、おもに拓海と南が交代で患者の様子を確認することになった。
電話に気付いたのも、大型病院に移す救急車に患者を送り終わった後だったため、遅い時間になってしまった。
「もしもし」
『拓海さん! 無事ですか!?』
久しぶりの秀也の声だ。焦っているが、気分が落ち着く声だ。
「ごめん、急患があってさっきまで仕事中だった。その、久しぶりだな」
『はい。すごくお久しぶりです』
ああ、会いたいな
『その昼間電話した理由なんですが、明日から一年間アメリカに行くので伝えようと』
「アメリカ!? どうして!」
『アメリカの研究機関で働くことになりました。一年経ったら日本に帰ってきます』
「そうか。……明日からって、卒業式は出席しないのか?」
その問いかけに、秀也は小さな間を空けた。
『今日、卒業式だったんです』
「あ、あー本当にごめん。連絡できなくて」
『いえ、お仕事で忙しいのは分かってます』
明日、今日の夕方に電話があったという事は会おうとしてくれてたんだな。もっと早く、俺から連絡していればよかった。
「あのさ」
『日本に帰国したら、また連絡します』
「あ、ああ。分かった」
電話口で秀也が『お仕事お疲れさまでした。おやすみなさい』と言った事に対して、拓海は平生の時のように話す秀也とは反対にいきなり多くの情報がありすぎて「ああ」としか返せず、その後電話が切れた。
ああ、ってなんだよ。もっと他に言う事あっただろ。
久しぶり過ぎて、今までどんなふうに話してたんだっけ。
次の日、いつも通り朝早く起きた拓海は、流石に電話の終わり方はまずいと思い、【アメリカでも頑張れ。応援している】と秀也のチャットに送った。
だが、そのメッセージに既読がつくことはなかった。
一年間は研修中の身であったので、早く一人前になるために仕事に集中していた。
秀也から連絡が途絶え始めたのは、拓海が勤めはじめてから二年が経った頃だった。
最後に拓海が彼に送ったメッセージは【仕事が忙しくて連絡が難しい、ごめん】だ。
仕事が落ち着いたら連絡をしようと思ってたけど、今更なんて送るのが正解なんだろうか。
急に、仕事が落ち着いたと送っても、半年以上の間音沙汰無しだった男から連絡がきても、気持ちの好いもんじゃないよな。……なんて送るのが正解なんだろう。
会う事もなく、連絡を取ることもなく、お互いの距離も共有する時間も長い間空いてしまった。どうしようも出来ない拓海は、仕事が早上がり出来たとしても連絡を取るのを躊躇い、帰宅するのがその後も続いた。拓海は結局それから秀也に一度も連絡を入れなかった。
雪が降り曇り空が続く季節から暖かな日差しをうけ草花が芽吹く春。
ある日の夕方、秀也から一本の電話があった。
拓海はたまたま診療時間外に急患の診察があった。近所で交通事故があり、大型病院の救急車が来るまでの間、様子を見ることになった。自転車と歩行者の交通事故であり、幸いなことに重症の患者が運ばれることはなかった。それでも、患者の精神的なショックや、個人病院であるため、精密な検査が出来ず患者の様態がいつどう変わるか予測できないため、おもに拓海と南が交代で患者の様子を確認することになった。
電話に気付いたのも、大型病院に移す救急車に患者を送り終わった後だったため、遅い時間になってしまった。
「もしもし」
『拓海さん! 無事ですか!?』
久しぶりの秀也の声だ。焦っているが、気分が落ち着く声だ。
「ごめん、急患があってさっきまで仕事中だった。その、久しぶりだな」
『はい。すごくお久しぶりです』
ああ、会いたいな
『その昼間電話した理由なんですが、明日から一年間アメリカに行くので伝えようと』
「アメリカ!? どうして!」
『アメリカの研究機関で働くことになりました。一年経ったら日本に帰ってきます』
「そうか。……明日からって、卒業式は出席しないのか?」
その問いかけに、秀也は小さな間を空けた。
『今日、卒業式だったんです』
「あ、あー本当にごめん。連絡できなくて」
『いえ、お仕事で忙しいのは分かってます』
明日、今日の夕方に電話があったという事は会おうとしてくれてたんだな。もっと早く、俺から連絡していればよかった。
「あのさ」
『日本に帰国したら、また連絡します』
「あ、ああ。分かった」
電話口で秀也が『お仕事お疲れさまでした。おやすみなさい』と言った事に対して、拓海は平生の時のように話す秀也とは反対にいきなり多くの情報がありすぎて「ああ」としか返せず、その後電話が切れた。
ああ、ってなんだよ。もっと他に言う事あっただろ。
久しぶり過ぎて、今までどんなふうに話してたんだっけ。
次の日、いつも通り朝早く起きた拓海は、流石に電話の終わり方はまずいと思い、【アメリカでも頑張れ。応援している】と秀也のチャットに送った。
だが、そのメッセージに既読がつくことはなかった。
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